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サンマルクの犬

仕事をしていたとき、一番お世話になったのはサンマルクだった。私の会社は昼食の時間が決まっておらず、どこで食べても自由だった。節約のために弁当を持って行ったりもしていたけど、たまには別のものも食べたい。8時間という拘束時間のなかで、少しでもいいから外の空気を吸いたい。会社の人と、離れて1人の時間が欲しい。そういうときに、よく行っていた。
ランチのときは食事系のパンとコーヒーを頼んでいたが、たまに昼食以外でも会社を抜けて休憩するときは、チョコクロを頼むときもあった。頭を使っているからか、仕事をサボって食べてるチョコクロの程よい甘さが、何度も私を癒してくれた。唯一、心を開けた会社の同期とも何度も通って愚痴を言い合ったりした。

休職が決まったその日もサンマルクへ寄った。明日から行かなくていいのか、とぼんやりしていた。頼んだアイスコーヒーを啜って氷をかき混ぜようとグラスを手に持つと、犬の絵が描かれていることに気がついた。明日から、もうここには通わないのかと思うとさみしかった。会社は嫌いだったけど、このサンマルクは好きだった。こんなにかわいい犬の絵が描かれてるなんて全然気がつかなくて、なぜだかもっと早くに知りたかったよ、と思った。

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