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小説の書き方はいろいろ。自分はトップダウン。君は?

かれこれ20年以上小説を書いている。
完結させるだけの力がなく、物語の断片しか書けなかった子どもの頃のものを小説にカウントするならば。

この間、小説の書き方というものをきちんと勉強したことはない。いろんなものを利用してはいるが、独学に違いない。

それでも長いこと書いていると、手法は確立されていく。

散々こすったネタだけど、小説書きはやっぱり気になるところだと思うので書いてみようと思う。

いいとか悪いとか、優劣の話じゃない、という前提はつけておきましょうか。みんな楽しく好きに書けばいいと思うんだ。

長いから、興味あるところだけ端折って読んでね!


ボトムアップかトップダウンか


私の場合、トップダウンで考えている。

考え方がトップダウンというだけで、実際の結論は最後にもってくることが多い。掌短編だと冒頭や中盤に書くこともある。そこは構成しだい。

流れはこう。


①結論を書く

具体的な場面やセリフだったり、そうでなく、抽象的なこともある。

具体的な場面や台詞で書いてある場合の例はこれ。

「何も持っていないって、お金? 地位?」
「全部」
 その食い気味の即答に玲那は失笑する。
「エミはいつもそうだね。持っているものには注目しないんだ」

今書いている小説のラストの一節

ある私設諜報組織に属する女性エージェントと一般女性の親密な関係を、2年前から書いている。途中体調崩しちゃったせいで、最近になってようやく出来上がりそうなんだけど、ラストは着手した一番最初に書き終えていた。
たぶんこのまま採用する感じで進行している。

今のろのろとnoteで再掲している、86万字恋愛ファンタジー小説も20年前にラストシーンを書いていて、書きはじめてから13年後の完結時に本当にそのまま使った。自分でもちょっと引く。

逆に結論が抽象的っていうのは、例えば…
「家族の形はそれぞれで、いろんな形があってもいいよね」っていう結論になるような話書きたいなぁ、みたいな感じ。掌短編書く時はこっちが多い。

ちなみに、結論を先に書くからトップダウンというわけではない。
結論のためのエピソードやストーリーを作り、その一連に必然性や整合性があるか(もっと言うと論理が成立しているか)どうかが分かれ道である。ボトムアップで考えても結論は導かれるし、その結果、ケツから書いている人は多いのではないかと思う。


②相応しいエピソードや場面を考える

結論から逆算して、必然性のある重要なエピソードや場面を考える。ここがトップダウン構想の要かと思う。
これは具体的なセリフ、場面で考えて、実際に4~5個くらいエピソードや場面の試し書きをする。題材が弱いと、この時点で満足してしまって小説にならずにお蔵入りになる。



③必然性が出るような世界観や設定の要点を考える

結論とそこにつながるエピソードが引き立つ設定を考える。
現代でも、都市なのか田舎なのかとか、どこを舞台にするのかみたいのは考えるけど、ファンタジーはここにかなりの時間を割く。
テーマが壮大だと歴史や文明を考えなくてはいけない。

なぜわざわざファンタジーにするかっていうと、現実では起こり得ないような切迫詰まった状況を作りやすく、登場人物の感情に大きな起伏をつけやすくなるという理由。ドーピングです。


④それらを踏まえて、駒として相応しい登場人物を検討する

性格、容姿、成育歴、背景など、結論に向かうにあたってもっとも相応しい要素を持つキャラクターを熟慮する。要素や属性はちょっと盛りめで考えておいて、実際に作中でどのくらい使うかは書きながら考える。


⑤どのくらいの字数で書き上がりそうか考える

短長編何作か書いて、ある程度文体が固まってきた時に初めてこの字数でこのぐらいの話がかける、みたいな体感覚が出来上がったと思う。
書いたことがない字数は未だに分かんないし、なんとなく、18万~22万字くらいの中途半端なところは個人的には感覚がもやっとしている。

最近は14万字越えそうなら、本当に書くかどうか吟味している。


⑥書きはじめる

①~④まで滞りなく進んでいて、字数的にも現実的に可能そうならはじめて着手する。パズルのピースを作るように、書きやすいところからエピソードを書きはじめる。設定や世界観が難解な場合はここでがっちり資料を作ってから書きはじめる。


⑦エピソードの順序を入れ替えたり、差し替えたりして流れを整える

このときに一緒に構成も考える。
だいたい起承転結にすることが多いけど、長編だと「承」や「転」のなかにさらに起承転結がいくつか入っていたりする。

この時点では未だラフ書みたいで大分文章は粗い


⑧細部を書き込む

あった方がいい場景描写とか、リズムとか単語の選択とか、つながりとか細かいところ見ながら書き込む。ひたすら書く。速度上がってきて、ゴールが見えてくるのでこのときが一番楽しい。ただ、過集中のあまり健康を害しやすくなるので危ない。


⑨推敲

基本誤字脱字は多め。
この行程を踏むと、エピソードの順序やそのものを何度も入れ替え、文章も書き足したり引いたりしまくっているせいかと思う。誤字脱字については脳内補完できるぐらいなら別にまあいいか、って思っている。仕事のときは注意深く見るけど、自分の場合誤字脱字ゼロは相当難しい。
今までそんな怒られたことはない……というのはただの甘えでしょうか。
すみません。

私の基本の書き方はこんな感じ。
掌短編でも長編でも変わらない。

人間を愛していて、人間そのものやその関係性を描くために小説を書いているから、かなり作り込んでいるわりに、世界観は二の次で話を進めるのがファンタジー書きとしては珍しいのかもしれない。そしてそれが致命傷になっているのかもしれない。

掌編ぐらいならボトムアップでも書けないことはない。
でも、書きながら「結論、結論……結論なんだ?」ってそわそわしているから、結局頭の中ではトップダウンしているのかもしれない。短いからメモもプロットもなしに書けるというだけで。

ちなみに、仕事で書くときや賞金狙いに行くとき、お題のときは①の前にさらにクリアすべき条件を挙げて確認しておく。

自分の場合は、実は少し制限がある方が書きやすい。
全く自由にしていいとなると壮大なこと考えすぎて、たいてい③の世界観をつくるあたりで頓挫する。頓挫しなくても、途方もない労力を費やして書ききって、自分で引いたりする。字数もかさみがちで、書き上げたものの、何の公募やコンテストにも出せなかったりする。
まあ、それはそれで面白いんだけどね。


トップダウンの利点と弱点

専門的なことは知らない。
だけどなんとなく、こういうことなのでは? という持論。
持論という、ただの感想。
実際のところはエライ人に聞いて欲しい。


利点

全体を通した流れが美しい
結論に向かうストーリーやエピソードに必然性があるため説得力や整合性があって美しいとは思う

読了後の満足度が高くなりやすい
伏線ばら撒きながら進んで、着実に回収して終えられるので読了時に爽快感を感じてもらいやすいと思う


弱点

遅筆
いろんな要素が互いに影響しているうえ、整合性をとりながら進むのでどうにも筆は遅くなりがち。たまにとんでもなく頭がキレるトップダウンテクニシャンはボトムアップ勢と同じくらいの速度で書いたりするけど、普通は無理だと思う。

お題小説とかで練習のためにボトムアップ、トップダウン両方試したりするけど、同じ人間がやっても体感速度でも3倍は速度が違う。

恋愛や現代ドラマジャンルには実際あんまり向いていない(と思う)
「機微」が大事な恋愛や現代ドラマをトップダウンで書くと、隙なくきれいすぎに仕上がりがち。ミステリーや歴史ジャンルに一番向いている書き方だと思う。ホラーは書いたことないから知らない。

ファンタジーは懐が広すぎて、題材によるとしか。
例えば作中で革命起こしたいならトップダウンしないと無理だろうし、ほのぼの日常ならボトムアップでいいと思う。

演繹が苦手だと詰みやすい
演繹的考え方が苦手だと、書きたいこと(結論)から具体的なエピソードを逆算するのが難しいと思う。


ボトムアップする方がすいすい書き進められるし、書きたいことをすぐに書けるから小説を書く楽しみは余すことなく享受できるように思う。

この辺の下手くそエッセイは、ボトムアップアップして、最後に構成考えて体裁を整えている。トップダウンしている小説よりは粗いぶん、筆は速い。

トップダウンは行程の多くがはっきり言って苦行に近い。
本当になんでこんなことを長年やっているのか不合理すぎて、自分でも不可解だ。でもやめられない。
ただし、(了)を打ったときは変な脳汁がドバドバ出ているのを感じるし、ピースを最後まできっちりはめて、きれいに書き上げられたときは、さらなる多幸感を覚える。


長い。もうおしまいにしよう

インターネッツ老人からすると、昔はネットで小説出していた人もトップダウンの人が多かった気がする。

今は明らかにボトムアップ主流ですよね。
この変化の理由は興味深い。なんでだろうね?
連載しながら反応見て、柔軟に対応するため??

ちなみに、恋愛(同性愛・異性愛問わず)メインジャンルでトップダウン勢の人いたら、ぜひコメントで教えて欲しいです。

自分が恋愛メインで書けなくて、ファンタジーとくっつけてしまうのはトップダウンでしか書けないのも理由だと思っていて、中途半端者になった原因のひとつだと思っている。

トップダウン恋愛ガチ勢(ミステリー、ファンタジーなどの他要素なし)の方がいたら、ぜひ作品を読ませてもらいたいのです。

その他の小説書いている人も、自分はどっち寄りの考え方か教えてね!

しかし、そもそもこんな4,000文字近い駄文、誰も読んでいないかもしれないけどな。ふふ。


一応最後に書いておくけれど、この記事を書いた人はただただ小説を書くのが面白くて、それだけでずっと書いている人ですよ。商業作家になりたいとか、売れたいとか、たくさんの人に読んで欲しいとかが目的の場合、何の役にも立ちません。







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