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大人と子どもの関係性をメタ認知する——『EUREKA/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』所感
はじめに
2021年12月1日にTOHOシネマズ新宿で『EUREKA/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』を観てきました。
『EUREKA』観てきました。 pic.twitter.com/9KGe7iS420
— 荒川幸也SakiyaArakawa (@hegelschen) December 1, 2021
もともと予告シーンをみて『EUREKA』を見に行きたいと思っていたのですが、もう公開されているとは知りませんでした。新宿で仕事の作業をしてひと段落した後に、外部とのネットワークを遮断したくて映画でも見ようかと思い立って調べてみると『EUREKA』があと20分後に上映開始であることを知りました。時間がなかったのですぐにスマホでチケットを購入したところ、12月1日は「映画の日」だったのでなんと1,000円で見ることができました(ラッキー!)。
ホランドの声とデューイ・ノヴァクの声が変わってる!?
『交響詩篇エウレカセブン』はつまみ食い程度に見てはいるんですが、ホランド役とデューイ・ノヴァク役の声優さんが変わっていたので、『あれ、パラレルワールドに入っちゃったのかな?』と考えながら見ていました。
ホランド役の声優さん(藤原啓治さん)がお亡くなりになっていたのか。
— 荒川幸也SakiyaArakawa (@hegelschen) December 1, 2021
今回はデューイ・ノヴァク役も山寺宏一さんになっていて、完全にパラレルワールドに入ってしまったのかと考えながらずっと見てた。
— 荒川幸也SakiyaArakawa (@hegelschen) December 1, 2021
後で調べてみると、TVシリーズでホランド役を担当されていた藤原啓治さん(1964-2020年)は昨年お亡くなりになり、またデューイ役を担当されていた辻谷耕史さん(1962-2018年)もお亡くなりになっていたことを知りました。
舞台はドイツ、古典的なスパイ映画のテイスト
作中でエウレカがアイリスを連れてデューイ・ノヴァクから逃げ回る舞台がドイツでした。このシークエンスは古典的なスパイ映画さながらの作りになっており、追跡を撹乱するために目的地とは逆方向に向かったり、車を乗り捨てたり、特にクレジットカードとSIMカードを使い捨てにして破棄するシーンが印象的でした。
まさかのドイツが舞台で、途中までは現代スパイ映画さながらにエウレカがアイリスを連れて逃げ回る。追跡されないようにクレカとSIMカードを使い捨てのように破棄する描写が印象的。
— 荒川幸也SakiyaArakawa (@hegelschen) December 1, 2021
技術が進歩した未来の世界が舞台なのだが、クレカ使用かスマホの通信で位置情報が即時に割り出されるという展開はあまりに現代的なので、子どもの視聴者を啓蒙しようとする意図がなければあの演出はなかったのではないかと思う。未来はもはや物理SIMカードを使う時代じゃないはずなので。
— 荒川幸也SakiyaArakawa (@hegelschen) December 1, 2021
スマホの通信を禁止されるアイリスの描写も、現代っ子のそれそのものなので、舞台は未来に設定してあるけど、現代人が感情移入できるように脚本に盛り込んでいるとしか思えない。
— 荒川幸也SakiyaArakawa (@hegelschen) December 1, 2021
というか物理SIMカードも物理クレジットカードも持たない時代になったら、逆にエウレカみたいな手口使ったら特定されやすいのでは?と思ってしまった。
— 荒川幸也SakiyaArakawa (@hegelschen) December 1, 2021
ドイツで逃走劇を繰り広げるところの描写は、大人と子供も一緒に映画館に行って楽しめるようにプロットされた設定なんじゃないかと自分は思いました。むしろそう考えないと腑に落ちないのです。というのは、登場する技術があまりにも現代的過ぎるからです。未来の2038年の世界では、おそらくSIMカードは今主流の物理的なカードではなくeSIMになっているでしょうし、クレジットカードも同じく物理的なカードではなくアプリを用いた電子決済に移行している可能性が高いと思います。
大人のエウレカがスマホに熱中するアイリスに手を焼く描写も、現代的な描写です。まさか映画館に見に行って『あーこういうのあるよね』って思わせられるとは予想だにしていませんでした(笑)。あの描写を見せられた子どもがどう思うのかということを作り手は考えていると思うんですね。つまり、アイリスがスマホの通信接続を禁止されて、駄々をこねるシーンは、視聴者としての子どもが普段の自分の姿をアニメの描写を通じて客観視させられているわけです。エウレカがなぜ怒って言うのかをアイリスは認識できないけれども、そういう事象を映画を通じてメタ認知させている。エウレカは不器用さをアイリスに見せながらも、強く戦う姿を見せることで関係性が変わっていくところだとか、スマホを通信接続するとGPSで位置情報が割れてしまう怖さだとか、視聴者としての子どもに対して、作り手が非常に啓発的な内容に仕上げようとしていることがわかります。
デューイはなぜLINEで指示を出したのか
現代的な描写といえば、デューイ・ノヴァクが仲間とやりとりするのにLINEでのチャット機能を用いていたことが印象的です。もちろんLINEとはどこにも書いていないわけですけど、あのポップなUIはLINEのそれ以外に考えられないのです。
デューイ・ノヴァクが最後にLINEで自爆指示出ししてたけど、宇宙であんなに激しい戦闘してて電波障害にならんのか?
— 荒川幸也SakiyaArakawa (@hegelschen) December 1, 2021
ところで作中でLINEのUIを採用したのは、一体どういう意図なのでしょうか。もしあそこでSlackだとかGoogleチャットがそのまま出てくると、せっかく映画を見に来ているのに、大人は急きょ仕事のことを思い出して『ウッ…』となってしまうかもしれない(笑)。一方、LINEは(基本的に)プライベートで用いられるものなので、あれは仕事を思い出さないようにするための大人への配慮だったのかもしれません。
あとはデューイ・ノヴァク側は情報がLINEのチャット機能を通じて筒抜けになることを防ぐには、デューイの組織が自ら通信インフラを構築したりチャットアプリを作る必要があるわけで、その辺は大丈夫だったのかなあ…などと思ったり、思わなかったりします。