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『エコノミック・ヒットマン』 ジョン・パーキンス
私のエコノミック・ヒットマン時代、目的の大半は、開発途上国でアメリカ企業にうまい汁を吸わせることだった。あらゆる手を尽くして ———指導者たちを失脚させたり暗殺したりして——— 自国の企業に現地の資源を搾取させていたのである。
CIAと手を組み(?)お金を儲けていく米国企業のEHM戦略。説明が分かりやすく、その国の民衆から敵視されている雰囲気も伝わってくる。
後半は中国のエピソードと、同じ手口が先進国でも展開されている様子。
パナマ
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アメリカ軍、1989年12月にパナマに侵攻(→ノリエガ政権)
パナマが攻撃された理由
・特定の政治家/企業からの要求を断った
・新パナマ運河条約が尊重されるべきだと主張した
・日本の資金と施工による、運河拡張事業を模索していた
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トリホスもアメリカに暗殺された疑いあり。
エクアドル
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p37-40 鉱山
2012年 エクアドル政府、中国企業エクアコリエンテと契約
2010-2017年にかけて、採掘事業により森林面積が1307ヘクタール減少
鉱物の精製工程で生じる不純物、鉱滓(スラグ)によって周辺地域に悪影響が出ている。
1970年代後半 石油/テキサコ/ロルドス大統領
アメリカが作った水力発電や電力システムには問題がなかったが、中国企業が制作したものは動かない or 壊れる。
それでも「内政干渉しない」という文言が魅力的だったようだ(p47)
「そもそも、この国の軍を動かしているのが私たちなのさ。兵士の給与を支払い、装備を提供しているのが私たちっていうわけさ。かわりに軍は、石油の採掘に反対する先住民から私たちを守ってくれる。ここラテンアメリカでは、軍を操る者が、大統領を操り、司法を操るんだ。ひいては、法律さえ作ることになる。石油流出時の罰金額や、労働者の賃金といった、関連法規いっさいをね」
アメリカのキリスト教組織 ”国際SIL” は、石油会社と結託しているとの噂が絶えなかった。
当時はワオラニ族と連携しながら調査を行なっていたらしい。
少数言語の研究や記録、翻訳といった専門的な目的のために、同組織はエクアドルで活動していた
アマゾン川流域の多くの先住民居住地において、次のような噂が広がった。
石油を埋蔵する確率が高いとされる兆候が、特定の地域において確認されたと地震学者が企業に報告したところ、国際SILのメンバー何人かが、その地に押しかけ、先住民に対して宣教地区への移住を促したというのだ。
衣食住に加え、医療やキリスト教に基づく教育も無償提供すると約束したとのこと。何でも、当該地域への石油会社の関与を認めることが条件だったという。
ロルドス大統領
ロルドスは、民意を重んじる人物として評判を得ていた。なるほど貧困層の人権を声高に叫び、天然資源の計画的な利用を政府に強く訴えていた。
そのロルドスが1978年、大統領選に立候補すると、国民はもちろん、外国資本によって石油の採掘が進められていた国、つまり他国の強力な支配から独立を望む地域からあまねく耳目を集めた。彼は、ひるむことなく体制に立ち向かう、数少ない政治家の一人だった。
1981年、炭化水素法案を議会に提出
施行されればエクアドルにおける石油事業の在り方が大きく変わるはずだったが、石油産業+宗教組織の関与について演説をした翌日、ロルドスが乗っていた飛行機は墜落した。
議会に一括法案を提出してからわずか数週間後、ロルドスは前々日に国際SILの追放を発表したのに続き、すべての外国人関係者に向けて警告を発した。国民の利益に反する事業を行うならば、石油会社に限らず、すべての事業者をエクアドルから追放すると断言したのである。
1981年5月24日、ハイメ・ロルドスは飛行機の墜落事故によって、死亡した。
2007年、ラファエル・コレア大統領の方針により、米軍基地がエクアドルから撤退した。
「アメリカがエクアドルにある自国の軍事基地を存続させたいのであれば、反対に、フロリダの土地をエクアドル軍のために貸与しなければならない」。はたして米国防総省は、エクアドルから自国の軍事基地を撤去した。
2020年ごろから麻薬組織が拡大したことと、アメリカ軍の撤退を関連づけている記事もいくつかあったが、この辺りのことはよく分からん。
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サウジアラビア
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1974年、私はサウジアラビアの外交官から首都リヤドの写真を見せてもらったことがあった。そのうちの1枚は、国家機関の建物の外で、ごみの山をあさるヤギの群れを写したものだった。その状況について尋ねた私は、返ってきた答えに唖然とした。
リヤドのゴミ処理システムは、主にヤギが担っているというのだ。
「自尊心が高いサウジアラビア人は、ごみを集めたりしません」。彼は言った。「だから動物にまかせているのです」
サウジアラビア人は現場仕事をしないため、インフラ整備のため周辺国から労働者を呼び寄せた。エジプト、パレスチナ自治区、パキスタン、イエメンなど、賃金が安い、同じイスラム教国の人々である。
王族の一人、プリンスWは西側諸国の謀略に気が付きつつも、著者から「プロではない」女性を斡旋してもらっている。金髪の美女がとくに好みだったようだ(p170)
彼いわく、アメリカの目的は数千年前の十字軍のそれと、さして変わらないとのこと。つまり彼にとっては、キリスト教徒によるイスラム世界への侵攻も同然だった。
MAINが関わった契約について
その協定のおかげで、アメリカの石油輸入量が確保され、国際通貨としてのドルの優位性が保たれ、サウード家の王家としての地位が補償され、アメリカ企業が利益をあげ、オサマ・ビンラディンが活動資金を手にしたのである。
イラン
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CIA諜報員のカーミット・ルーズベルトの工作により、モサッデク首相が失脚、親米派のバーレビ国王が独裁者として首長の座に就任した。
彼は賄賂や脅迫、反共産主義プロパガンダなどを駆使して、大衆の心をつかむことに成功した。人びとはやがて、カーミットに扇動される形で、次々と市街地で暴動を起こしたり、過激なデモを敢行したりするようになる。
すると、モサッデクの求心力が低下しているとの見方が広がり、その手腕を疑問視する声が高まった。
これらの手法は後年、朝鮮半島、ベトナム、アフガニスタンでも用いられるが、同じようには成功しなかった。
1963年ビッグス湾事件の記事
イランの砂漠緑化計画には反対する国民もいた。
「住環境の変化は、アラブ系ベドウィン文化の破壊につながる」(P187)
その他の国々
第3部 1971年−1975年
「ベトナムは通過点にすぎないんです」。一人の男性が言葉を挟む。「ナチス・ドイツにとってのオランダのようなものです。踏み台ですよ」
「西側の歴史家が書いた本を読んでみてください。トインビーというイギリスの歴史家です。彼は1950年代、来たる世紀において、真の戦いが、資本主義対共産主義ではなく、キリスト教対イスラム教という構図になると予想しています」
「アーノルド・トインビー」でamazon検索すると、真っ先に池田大作との対談本が出てくる・・・?🤔
本書で言及されているのは以下の2冊
『試練に立つ文明』『世界と西欧』
・チリのコンドル計画
・キッシンジャーが、ピノチェトを支援していた話(p344)
2001年以降
中国
中国のエコノミック・ヒットマンは、アメリカとロシアのEHM戦略をさらにブラッシュアップさせている。民主主義(共産主義)の押し付けではなく、当事国のアイデンティティを尊重した形で協力関係になることを提案する。
例えば、カザフスタンのサギンタエフ首相に対して
元来のシルクロードでカザフスタンが果たした重要な役割について話すことがほとんどさ。その上で、今度は新しいシルクロードで、かつてと同じく存在感を示してほしい、とも言うがね
・BRICS銀行、AIIBなど、ドル以外の経済圏が広がっている?
・スリランカの港が、債務のため中国にリースされている話(コロンボ港、ハンバントタ港)
西側諸国
著者が途上国でやってきた工作が、今度は西側をターゲットに行われている(大富豪=グローバル企業を経営する人々のこと)
私がかつてエクアドルやインドネシア、パナマ、エジプト、イラン、コロンビア、サウジアラビアなどで使った手が、目下、ヨーロッパ諸国やアメリカ国内において、繰りひろげられていた。
大富豪たちは政治家に圧力をかけ、都合のよい法案を通すことで、税優遇を得て、メディアを支配し、政界への影響力をさらに強めていた。
大企業はロビー活動を行い、補助金を得る。
補助金や特別税額控除という形で連邦政府が企業に支援した金額は、この15年間で680億ドルとのこと。そのうち3分の2は、大企業への支援である。
アグリビジネス(農産物、食品加工、流通)
2015年7月の連邦議会下院における「DARK法」の可決
遺伝子組み換えを表示しないでOK、という法案?
おわりに
全体的に、スパイ仕事はヤクザと似てると思いました😇
▶️ 賄賂。受け取ったことをネタに脅迫することも可
▶️ 悪評、暴動、ストライキを扇動する
条件に従えばやめてくれる
▶️ スキャンダルをつかむ、捏造する
▶️ 暴力/嫌がらせ or 援助により、住民を追い出して土地を占有する
▶️ 「事故」見せしめの意味もある
中東、ラテンアメリカの話は、youtubeとか探しても玉石混合すごくて判別がむつかしい。
この本が、そもそもプロパガンダではないのか? みたいなことも考えつつ、私はSNSの釣り動画も見破れないほうなので、とりあえず何かを信じ過ぎないようにだけ気をつけたいと思いました。
🐰💬
南米からドラッグが入り、アメリカからは銃器が流れる
こちらのドキュメンタリーも面白そう。
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