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39.思い出図書④ 更科日記

高校時代、古典の授業は退屈でしたが、【更級日記】はとても好きでした。

更級日記は、平安時代中頃に書かれた、源氏物語に憧れる女性の回想録になります。当時実家には古典漫画全集があり、【更級日記】と弥次喜多の東海道中膝栗毛、そして怪綺談の雨月物語は、良く目に通してました。

【更科日記】では、物語の途中で、主人公の少女と大変仲の良かった姉が急逝します。姉の死を悼み、生前の故人を偲んで、家族は詩(短歌)を詠みますが、誰よりも姉の死を悼み、詩を吟う筈の姉の夫(義兄)の詩がありません。
そこで、人は本当に悲しい時、辛い時には、物語の様に詩など吟う余裕はないと主人公は感じます。

そして、悲恋、悲哀を吟う物語、自分が信じ、憧れていた物語(源氏物語等)は何だったのか。悲恋、悲哀も単なる虚構だったのではないかと思い、苦悩する描写があります。

ただこれは、原文には無いみたいなので、実家にあった書籍の創作であった様に思います。


人は、本当に悲しい時、辛い時、その瞬間は、言葉に出せないものだというのは、良く理解出来ます。言葉に置き換えるには、少し離れた位置で自分を、その状況を客観的に見る必要があるからだと思います。だからこそ、大きな哀しみを語る迄には、時間が必要なのかも知れません。

諦めでなく、長い苦悩の果てに、哀しみを受容出来た時、今をあるがままに生きる事が出来るのだろうと、最近は思います。

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