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大好きな婆ちゃんなのに

 私は祖母が大好きだ。いつだって私のことを大事に思ってくれる、優しくて穏やかなうちの婆ちゃん。

 今回の帰省でも、私が以前から「今年も美味しい柿食べたいな〜」と口にしていたのを受けてか祖母は大量の柿を用意してくれていた。作るのが大変な干し柿まで丁寧に吊るしてあった。祖母はいつだって変わらない大きな愛情をくれる。私のことを大好きでいてくれる。一昨年亡くなった、大好きな爺ちゃんの分まで私を愛してくれる。

 そんな祖母は今年で88。身長は年々小さくなり今は140cmあるかないか。腰も曲がっていて歩くのも一苦労、家の中でよろめくことも多くなった。

 加えてかなり耳が遠いので、一般的な大きい声で話しても全然聞こえない。当然、部屋に響くインターホンの音も首元で鳴る体温計のピピッっていう音も祖母には聞こえない。テレビの音声も一般人では耳が壊れそうになるほどボリュームが上げられている。会話だって運動会の観客席で発する声援くらいの音量でやっと届くレベルだ。

 だからちょっと疲れてしまう。結構大きな声を発しても最初は必ず「えぇ!? 」と聞き返されるので、言葉を発してコミュニケーションを取るのが面倒になってしまう。ちょっとしたこと、例えば「今テレビに出てるこの俳優さん格好いいよね〜」みたいな何気ないことを共有したくなっても、めちゃくちゃ大きな声出さなきゃならないし、絶対聞き返されるし…なんて思って結局言わないことがある。

 もちろん祖母の聞き返しには悪気があるわけじゃない。本人は本当に聞こえなくて困ってる。足腰だって痛そうだし、何気ない動作をしようにも身体がついていかなくて大変そうだ。お風呂で転倒すると危ないからと、仕事帰りに毎日様子を見に来て介助している母にも「いつもごめんね、ありがとうね」って申し訳なさそうにしている。私にもよく同じことを言う。

 だから、聞き返されてちょっとイライラしてしまう度に自分が嫌になる。もちろん祖母にあたることなんてないけど、顔になんて絶対出さないけど、こんな気持ちを抱いてしまう自分が嫌になって申し訳なくなる。こんなに大好きなのに何でイライラしちゃうんだろうって悲しくなる。

 もしかしたら、親族の介護をしてる人はみんなこの問題に直面してるのかな。本人と長い時間一緒にいて介護し続けてる人は、何で大好きなはずなのにイライラしちゃうんだろうって嫌になってるのかな。子育ても同じだったりするのかな。

 ただ祖母を大好きなことには変わりはないから、明日はできるだけ同じ目線に立って、寄り添いながら接したいと思う。ごめんね。


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