凡人と天才の違い
世の中の、ほとんどが凡人です。
秀でた才能のない、普通の人々。僕もその内の一人です。
凡人の反対、天才とはなんでしょうか。「天才たちの頭の中~世界を面白くする107のヒント」という映画があります。
その中で、スラヴォイ・ジジェクという哲学者がこう言っていました。
〈人は誰でも創造性を持ち、突拍子もないアイデアなら出せる。だが、そのアイデアを形に整えられないんだ。真の創造性は、発想を秩序ある形で示すこと。愚かな連中は奇抜なアイデアを撒き散らすだけ。それに構うな、大切なのは秩序だ〉
天才は、アイデアに見事な秩序を与えます。まるで手品かなにかのように、この無秩序な世界の中から部分を選び出し、秩序を与えてしまいます。村上春樹の小説にしてもそうです。批判も多い作家ですが、彼が天才であることは間違いありません。彼の文体は、全体のために緊張しています。全体は、文体に支えられて、読者に大きなイメージを与えます。読者は、緊張感のある文体を楽しみ、読後には、建築されたイメージの中をさまようのです。
数学の天才、料理の天才、美術の天才、スポーツの天才。みんなそうです。彼らは私達に、見事な秩序を披露してくれます。
料理の天才は、その料理の過程全体を通して、一つの秩序、おいしい料理を創造します。素材選び、茹でる時間、調味料の選択、などなどその全てが、おいしい料理を建築するのです。
スポーツの天才は、ある奇跡のような一瞬を創造します。ボールの速さ、回転、それに合わせた身体の動き、バットコントロール、大谷翔平のホームランは、秩序が結晶する一瞬が創るのです。
秩序は美しいです。
天才の料理も、大谷翔平のホームランも、難解な数学の証明も、ピカソの絵も美しい。
秩序は私達に美を与えます。ということは天才は、秀でた美の創造者です。
では凡人とはなんでしょうか。
天才の反対ということは、秩序の創造性が欠如した人々ということでしょうか。
いや、凡人だって、秩序を創造しています。
部屋の掃除。
遅刻せず、出勤したり通学したり。
友達をつくったり。恋人をつくったり。つまり人間関係の形成。
スポーツだってするし、献立を考えたりだってします。
当たり前にしています。
時には、絵を描いたり、楽器を弾いたり。
勉強をしたり、仕事をしたり。
全く秩序を創造することなく、この社会で生きていくことは不可能です。
天才と凡人の違いは、創造性の差にあります。天才は秀でた秩序を創造する能力を持っていますが、凡人はそれなりの秩序を創造する能力しか持っていません。
それなりの人達が集まって、足りない部分を補い合っている世界、それが私達の住む世界です。