2025年、人は「買い物」をしなくなる [抜書き]
この数年、消費者の消費行動が劇的に変化。消費者にとって買い物は、「面倒くさいもの」という扱いになっている。実店舗に行くこと、レジに並ぶこと、商品を選ぶことなど。店舗離れの動きとして、「ウェブルーミング」がある。これは、商品探しをまずネットで行い、実際の購入は実店舗でするという消費行動を指す。
百貨店の苦戦は周知だが、さらに郊外型のショッピングモールも、消費者からすれば時代遅れ。なぜなら、チェーン店ばかりで似たモールが多く、わざわざ「行く」価値がないから。そして、消費者にとって「行く」ことだけでなく、たくさんの商品の中からひとつの商品を選ぶことも面倒。つまり、従来の百貨店やモールの「品揃えが豊富」という長所は失われている。こうした状況で価値を発揮し続けられるのは、実際に行かないと体験できない店舗。出来立てが食べられる飲食店や美容室、アミューズメント施設はネットで代替することが難しいから。
サブスクは、顧客と継続して接点を持つというメリットだけでなく、一つに選ぶというプロセスを省略している点に良さがある。
確かに、前はレンタルショップで観たい映画を探すのも多くの棚の中からどう選べば良いのか分からず、事前に観たい映画を選んで借りに行っていた。今は、とりあえずサブスクに加入してサブスクの中でオススメを参考に観たい映画を探す、見つけることが多くなった。サブスクは商品の選び方も変えている。
今の消費者が求めるものは「便利さ」ではなく、「時間」。便利さはコモディティ化した。少しでもストレスのかかる時間を減らして快適な時間を増やしたい。魚を丸ごと一匹で売るよりも、カット済み、調理済みの食品が売れる。無人コンビニも、データ取得、人件費削減という視点だけではなく、レジに行かずに商品を持って店舗を出るだけという時短の側面もある。スーパーでは、「カーサイド・ピックアップ」というインターネットで注文した商品を店舗で受け取るという購買行動が増えた。ドライブスルーのように車から出らずに商品を受け取ることが出来るので、時間を短縮できる。ラッキンコーヒーは、スタンド型店舗だけを持ち、挽きたてのコーヒーを提供する中国企業。注文はアプリでして、その場で決済する。購入者はコーヒーの出来上がり時間に店舗に行き、QRコードを見せてコーヒーを受け取るだけ。行列に並んだり、レジで決済する必要がない。サードプレイスを掲げるスタバとは真逆のスタイル。ラッキンコーヒーの長所も時短にあると言える。
最終的には、個人データを収集した企業が、AIを使ってマーケティングすることで無意識のうちに欲しいと思っていたもの、本人が気づかない体調の変化に効果的なサプリ、さらにIoTのマシンとマシンとの購入により、瞬時に買い物するようになり、買い物を意識しなくなるという。
店舗に「行く」、店舗で商品を「探す」、店舗で「レジに並ぶ」、オンライン、オフライン問わず「選ぶ」といった消費行動を総合して「買い物」を定義。企業は、こうした今まで「買い物」として受け入れざるを得なかったことを、分割できることを明敏に察知し、それにより消費者が「買い物」にかける時間を激減させている。それが競争力となっている。この事実を気づかせてくれただけでも著書には価値がある。さらに、今後はデータ分析によるレコメンド、自分でグーグル検索したり、ポップアップしてくる広告ではなく、信頼できる人の意見で選ぶ(twitterでフォローしていた人)ことが増えてくる。したがって、より正確に言えば、「自分で考えて」買い物しなくなる世界になるという予測は説得力がある。良書。
参考文献
望月智之「2025年、人は「買い物」をしなくなる」 クロスメディア.2019
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