withコロナ時代に必須の「採用ピッチ資料」。作成手順から活用法までの一番わかりやすい教科書
コロナウイルスの影響で採用のスタイルが変化しつつあります。中でも注目が集まっているのが「採用ピッチ資料」。会社の情報を可能な限りオープンに公開し、候補者と会社のミスマッチを減らすための新しい会社紹介のスライド資料です。
withコロナ時代の必須――というのも、採用ピッチ資料はオンライン上での採用活動と相性抜群です。
リモートで全ての業務を行い、場合によっては初回の面談から内定、入社後のサポートまでもオンラインでやらなくてはいけない時代。「いかに会社の情報をしっかりと伝えられるか」が、候補者の満足度を大きく左右します。
今回は、50社以上の採用を支援してきたHeaR株式会社で培った作成手順や活用方法のノウハウを全面的に公開。”一番わかりやすい教科書”と評して作り方をお伝えします。
※長文なので、目次を作ってあります!必要なところにジャンプを!
【採用ピッチ資料について】
0.そもそも採用ピッチ資料って何?
冒頭でもお伝えしましたが、そもそも採用ピッチ資料とは「可能な限りの会社情報を公開したオンラインスライド資料」のことをさします。
従来、会社説明資料とは会社の沿革、創業者の思い、会社の事業紹介などを掲載したパンフレットのようなものでした。原則としては「会社のいい部分」を伝えるだけ。
一方採用ピッチ資料では、会社の課題を含めた多くの情報をオープンに掲載し、採用候補者の読後感(読み終わった後に得られる感想)まで設計して作成することが特徴です。
SmartHRさんが採用ピッチ資料を公開したときには、会社への応募数が3倍なったと大きな話題になりました。
0-1.作成すると何がいいの?
採用ピッチ資料作成のメリットとして弊社がよく紹介するのはこちら。
・面談で人事が話す時間を縮小できる
・候補者に事前送付し、面談時の質疑応答で会社への関心度がわかる
・重要な事項の伝え忘れ、抜け漏れが減る
・カルチャーマッチしない候補者からの応募が減る
・採用への応募数が増える
・既存社員のリファラル採用への動きを活性化
・社内の魅力と課題を整理することで社員エンゲージメントの向上につながる
もともと良いことづくめの資料作成でしたが、さらにコロナウイルスの影響があってからは作成する企業が急増。その理由としては以下のものが挙げられます。
・リモートでの採用時、事前の情報開示でWEB面談を円滑に進められる
・コロナウイルスへの対応などを一元化して公開できる
・転職者もネットで情報を探すことが増え、情報開示している企業に興味が集まる
・採用ピッチ資料を用いた採用広報ができる。採用ピッチ資料作成時に決める「魅力」や「採用コンセプト」が採用広報の軸になる。
採用面接に関する記事はこちらがおすすめ。この記事でも後ほど、オンライン面談×採用ピッチ資料の活用方法もご紹介します。
【作成実践編!】
それでは早速作成の実践編にうつります。
筆者は月に2回〜3回のペースで採用ピッチ資料作成のワークショップのファシリテーターとしてHeaR株式会社のクライアント様の元にお邪魔しています。
その時感じた「作成時の壁」、さらにHeaRで公開している作成をお手伝いする資料もダウンロードできるように解説してあります。
▼採用ピッチ資料作成用ワークシートのまとめてのDLはこちらから!
※項目ごとにダウンロードも可能になっていますが、めんどくさい!という方向けのZipで一括になった資料です。
1. 採用ピッチ資料作成チームを決めよう
採用ピッチ資料で一番やってはいけないこと、それは「どこかのポジションだけで作る」ことです。
採用に関することなので人事でチームを組めばいいんじゃないの……?とか、技術職採用だから現場のメンバーでやればいいんじゃないの……?という誤解は未だ多いのですが、これが大きな間違い。
採用ピッチ資料は全社の様々なメンバーから聞く会社の魅力と課題を整理した資料です。一部署の偏った意見だけで作っては、会社を代表する資料にはなりません。
弊社でオススメしている編成はこんな感じです。
・社長(もしくは役員、ボードメンバー):1名
・社歴の長い人(3年〜):1名
・社歴の浅い人(〜1年):1名
・人事:1〜2名(いなくても良い)
・各チームのマネージャー、リーダー(3〜4名)
このようなバラツキのあるメンバー、6〜7名での採用ピッチ資料作成チームを作りましょう。(もちろん有志を募るのもGood)
全社的な意見を取り入れたい場合は、採用ピッチ資料の作成ワークショップを社内で行う前に、全社員を対象にしたアンケートを行うのもおすすめです。
おすすめの事前アンケート内容
✔️会社の魅力はなんだと思いますか?
✔️会社の課題はなんだと思いますか?
✔️あなたが入社を決めた理由はなんですか?
✔️どんな人を採用したいですか?
✔️「こんな人とは働きたくない」の像を教えてください
全社員からのアンケートが出揃っていれば、作成チームで事前にそれを共有した上でワークショップを進めることができます。考え方の偏りなども少なくなり、多くの人の意見をした採用ピッチ資料作成のためには非常に重要です。
2. 採用ピッチ資料作成で絶対に外せないこと
ここからは、採用ピッチ資料に必ず組み込みたいコンテンツについてです。これらの情報はこれからの採用活動において必須。掲載コンテンツの選別は後ほど行うので、まずは以下の4つを定めることが非常に重要です。
2-1. 会社の魅力を「4P」で整理
まず最初に行いたいのが、会社の魅力の整理です。一口で会社の魅力といっても、多くの会社で魅力は4つに分けることができます。
Philosophy :理念・哲学
会社の理念や経営哲学の魅力。
Profession :事業・仕事
仕事内容や事業内容の魅力。
People :人・風土
会社の人、雰囲気、風土の魅力
Privilege :特権・待遇
会社特有の特権や福利厚生、待遇面の魅力
なぜ会社の魅力を4分割する必要があるのか。それは、「候補者によってどの魅力を最も重視するのかはことなるから」です。
事業内容に共感してくれるAさんと、人や風土に魅力を感じてくれているBさん。二人へのアプローチ内容は全く異なります。Aさんに人の魅力を熱く説いてもあまり意味がなく、事業内容をしっかり伝えられることの方がAさんにとっては魅力的です。Bさんもまた然り。
様々な候補者のニーズに合わせた魅力づけとアピールができるようにこれらの整理を行います。
▼4P整理シートの個別ダウンロードはこちら
これらの魅力を後ほど綺麗にまとめてワーディングしていくところまでワンセットです。
2-2. 採用の中央コンセプトを決めよう
4種の魅力を出し終えたら、次に決めるべきは採用コンセプトです。採用コンセプトとは、「採用するときに候補者に伝えたいメッセージを詰め込んだキャッチコピー」。詳しい解説はこちらの記事がおすすめです。
4Pの魅力と採用コンセプトの関係性は上の図の通り。書いてある通りですが、対採用の中心メッセージとして、今後の採用の軸になる部分です。
とにかくキャッチーに、覚えやすいものを作ることも大切ですが、この辺りはコピーライティングのセンスも問われるので、難航する企業さんが多いのが特徴。思いつかない場合は後回しでもOKです。
採用コンセプトを作る際のヒントになるのは、「社内でよく使われている特徴的な単語」。もしくは、「採用ピッチ資料で何回も使いたいワード」。
例えばHeaRの採用コンセプトは「働くって、青春だ」です。社内でよく使われる「それって青春だね!」というワードから作られたものです。
この「青春」という中央コンセプトにプラスして、候補者さんの関心が高い4Pの魅力を伝えることで採用活動がわかりやすくなります。
2-3. 会社の課題を洗い出す
魅力が整理できたら次は課題の洗い出しです。会社の課題を候補者さんに伝えることに不安を感じる……という企業もまだまだ多いですが、課題をオープンにすることでむしろカルチャーマッチした人材をとりやすくなります。
ある程度の課題は織り込み済みで入社することで、入社後のギャップも防止。現状、多くのポジションが感じている課題などをしっかりと洗い出してピッチ資料に反映させましょう。
課題の洗い出しが完了したら行って欲しいのが、その課題の整理です。出てきた課題をこの3つに振り分けましょう。
・短期的な課題
・中長期的な課題
・(業界特性など、事情により)受け入れて欲しいこと
後ほど採用ピッチ資料を作成するときに、これらの課題と会社としてどんな風に解決・取り組んでいこうと考えているかも一緒に記載します。
参考までに、弊社の採用ピッチ資料です。
2-4. 欲しい人材の定義を決める
いわゆる「採用ペルソナ」の確定です。「どんな人と一緒に働きたいか?」を可能な限り具体的に、行動ベースで意見出ししていきます。
採用ピッチ資料を作成するときに必ず行って欲しいのが、「欲しい人材」と共に「欲しくない人材=ネガティブペルソナ」も確定させて掲載することです。
細かいペルソナ設定なども非常に重要ですが、上の図のようにわかりやすいワードで書き出すことも採用ピッチ資料作成には有効。
あらかじめ採用ペルソナが定まっている企業の場合は、それをベースに行うのもOKです。一方、現場や各チームから「こういう人と働きたい/働きたくない」の意見が出揃うことで、かなり具体的になります。
さらに意識したいのが、抽象的なワードではなく具体的なワードで欲しい人材/欲しくない人材を定義することです。
<良い例>
・自分で課題を見つけ、解決の方法を模索できる
・挨拶ができてコミュニケーションにストレスを感じにくい
・目上の人、目下の人で態度を変えることがない
<悪い例>
・優しい
・コミュ力が高い
・平等
3. 社内ワークショップのやり方
採用ピッチ資料を作る上で必須の要素がわかったところで、実際のワークショップの進め方についてご説明します。
HeaRでよくやる方法は、ポストイットを用いたブレインストーミング形式です。ホワイトボードや模造紙を用意して、みんなでアイディアをどんどん張り出していきます。
基本的にはどの項目も、個人でブレインストーミング→ボードに張り出して似たような魅力をグルーピング→ディスカッションしながらそれぞれのグループに小タイトルをつけていく→みんなでどれが優先度が高いものか話し合って順位づけ、で1クールです。
グルーピングと優先順位づけが完了したら、あとは担当の人がコピーライティングを行い、採用ピッチ資料に使えるワードとして落とし込んでいきます。
3-1. ちなみにワークショップはオンライン開催も可!
ワークショップの開催はオンラインでも可能です! ブレインストーミングの際、linoというツールを用いるのがおすすめ。
オンライン上の仮想ボードにそれぞれポストイットを張り出していく形での進行が可能です。
4. 採用ピッチ資料に掲載する情報の洗い出し
採用ピッチ資料に掲載する項目は、必ずしもワークショップをしなくても良いものもあります。
A. 会社紹介・事業紹介のページ
B. 組織図、企業文化の紹介
C. 求人情報
D. その他、給与テーブルや福利厚生、イベントの紹介など
作成時には概ねこのような項目を準備すればOK。以下の資料から採用ピッチ資料の掲載項目として一般的なもののリストを掲載しているので、ぜひ参考にしてください。
5. デザインを決めて、いざ作成!
ここまでの過程をクリアすれば、「何を掲載したらいいのか」に関してはすでに用意済みのはず。お疲れ様でした!
ここからは、実際の作成に入るフェーズ。まずはたくさんの採用ピッチ資料を見てみましょう。
なんとなく採用ピッチ資料の雰囲気が掴めたら、概ねのカラーを決めて作成を行います。
弊社で資料作成を行う場合はだいたい、「テーマカラー」を一色決め、それと同系色の色を3種類、アクセントカラーになる色を1種類決めています。統一感、みやすさも採用ピッチ資料の非常に重要なポイントです。
フォントも基本的には統一すべきなので、会社の雰囲気やピッチ資料の雰囲気に合わせて何か一つ決めましょう。
6. withコロナ時代の採用ピッチ資料の活用方法
実際に作った採用ピッチ資料を積極的に活用していくためのアイディアや一般的な使い方をご紹介します。
・自社採用サイトで公開
採用サイトを作ったはいいものの、情報が分散してしまって見辛い……とお悩みの方は、ぜひサイトのわかりやすい位置に採用ピッチ資料を掲載してみてください。
・面談前に候補者に送付
面談実施前に採用ピッチ資料を送付します。「これを読んで”思っていたのと違うな……”と思ったら辞退していただいて大丈夫です!」とお伝えするのも有効。
弊社では実際に3割ほどの方からピッチ資料を見てお断りの連絡をいただいています。これは決して悪いことではなく、”ミスマッチを減らした”という結果です。
・面談時の質疑応答に使用
多くの企業がWEB面談を行なっていると思います。WEB面談の時には、「人事のしゃべりっぱなし」状態は避けたいもの。採用ピッチ資料を事前に送付し、候補者さんに「面談の時は資料の質疑応答を行うので、ぜひ読んできてください!」とあらかじめお伝えしておきます。
面談の時にはコミュニケーションが原則相互で行われるので満足度が高く、さらに質問の内容や資料をどれくらい見てきたかによって候補者さんの本気度もわかります。
・採用ピッチ資料の解説動画を公開
会社説明会の代わりになるコンテンツとして、採用ピッチ資料に音声を吹き込んだ動画の公開も非常に効果的です。短い動画を複数作ればTwitterなどでの拡散も可能ですし、「オフラインで採用説明会がひらけない……」と悩む方にはオススメの手法です。
採用ピッチは時代に合わせてアップデート。withコロナ時代を乗り切ろう。
ここまでおおよそ5700文字。お付き合いありがとうございました!
メリットの多い採用ピッチ資料ですが、最後に一つ。採用ピッチ資料は作って作りっぱなしはNG。会社のフェーズや時代に合わせて変化させていくことが重要です。見直し目安は四半期に一回。
「え!!多い!!」と思われるかもしれませんが、中央の採用コンセプトや魅力は大きく変化することはないので、見直しすべき点はそこまで増えません。最初の作成コストさえかけてしまえば長く付き合っていけるものです。
withコロナ時代には、それに即した採用の方法や提案の仕方が必須。これを機に見直しと作成を行う方、一緒に頑張っていきましょう!
HeaR株式会社では、採用ピッチ資料作成、その他採用戦略立案を承っています。まずは無料相談会から!ぜひお気軽にお越しください。
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