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芥川龍之介の命日
【その22】
「あの演説は勿論悉く嘘です。が、嘘ということは誰でも知っていますから、畢竟正直と変わらないでしょう」
芥川龍之介 『河童』
今日7月24日は芥川龍之介の命日で、河童忌と呼ばれているそうだ。
彼が晩年に書いたのは、読んでいてその闇に引きずり込まれそうになるほど日の当たらない世界で、それを書いた彼自身は、もしかすると、片隅の光さえも失ってしまっていたのではないかと感じさせる。
もっとも、何が今日を彼の命日にしたのか、
彼自身にしか分かりようもないし、彼自身もはっきりと分かっていたのかどうかすら、分からないのだけど。
ただ、この一節が頭の中を行き来する。
美しい魂を持っていると、この世間に長くとどまっていることができないんだ。
実際、どうして偉大な感情が、みみっちくて、しみったれていて、浅薄な社会などと折りあってゆけるだろうか?
1972年 新潮社 464頁
芥川を神格化する気はないし、彼の死を美化する気持ちも毛頭ない。
だけど、彼の分身であるに違いない彼の書いたものから伝わってくるその眼差しを思うと、彼が若くして死を選んだことが、腑に落ちないわけではない。