【有償ストック・オプション】上場企業の実務について② KeyHolder社は一括費用計上?
こんにちは、大門(だいもん)です。
今回は、今年3月に「強制行使」で話題になったKeyHolder社の有償ストック・オプションの費用計上タイミングについてまとめます。同様の条件が付いている有償ストック・オプションが実際に行使されること自体が珍しいので取り上げたいと思います。
「強制行使」条件とは?
KeyHolder社が発行した有償ストック・オプションの条件は、俗に「下限強制行使条件」と呼ばれるものになりまして、株価が一定金額を下回った場合に強制的に行使しなくてはならない、という格好になります。
本件はWebを中心にかなり報道されたので、要点だけ整理しますと、KeyHolder社のケースでは、株価(権利行使価格)が130円の時に有償ストック・オプションを出していましたが、発行後に株価が下がり、結果として発行時点の50%を下回る62円まで下落しました。
この結果として、割当対象者(秋元康氏ら)は単価62円の株を130円支払って買わなくてはならないことになり、結果としてかなりの損を被ることになりました。
費用計上のタイミングはいつ?
このような「下限強制行使条件」が付いている場合、「株価が一定金額を下回るとキャピタル・ロスが発生」することで、発行価額(オプション・バリュー)を引き下げることが可能になります。
従って、前回の記事にも記載しましたが、(この他に条件が付いていない場合)公正価値と実際の払込金額の差額を費用計上する必要があります。
そして、「下限強制行使条件」が付いている場合、「発行時点で既に権利行使が確定」しているため、会計上は「発行した段階で一括費用計上が必要」になります。
ただし、「下限強制行使条件」に加えて「行使制限期間」が付いている場合は、発行から行使制限期間終了時に渡って按分して費用計上(実際に計上する場合は、監査法人に要確認)する格好が一般的になります。
発行会社の役員・従業員は、自社の株価をコントロール可能?
発行会社の役員・従業員は、自社の株価をコントロールできない、という前提に立って、株価の下限強制行使条件を付けた場合は、費用計上を求められないことが多いですが、一部の監査法人では、費用計上を求めるケースがあります。そのため、監査法人への確認をしてから発行されることを推奨致します。
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