おもしろさと劇場で目撃すること。
(今回のブログでは舞台の内容に関するねたばれがあります!)
昨日のブログでは、一昨日、穂の国とよはし芸術劇場PLATにて
舞台『オーランド』を観劇したことを申しました。
この舞台のチラシの片隅には、文化庁の支援事業として
【愛知公演 18歳以下無料ご招待 合計220名先着順】
と記されていて、この招待でね、
ぼくが勤める学習塾の中学一年生女子の生徒さんが
ぼくとは別日で観劇していた、というのをね、
昨日、塾でこの生徒さんとお話ししていて存じまして。
生徒さんおっしゃるには、生徒さんの通う学校で
複数の希望者の中からあみだくじで当たった、
とのことなのですが。
「演劇、どうだったー?」と訊ねてみると、
「よくわからなくて、おもしろくなかった。」
というふうに辛辣に答えていて、そのことばを聴きながら
そうか、でも、そういう感想も
ありうるやもしれないと存じました。
つまり、『オーランド』は、
物語及び各場面が難解でもあるし、
台詞のことばも抽象的で、ぼくだっても
内容のすべてを全く把握できていないし、
つまり、ぼくもよくわからなかったと言えば
よくわからなかったとも思われる。
ましてや、中学一年生が観るのならば
もっともっとよくわからないやもしらない。
と、ここで考え込んでしまうのは、
「おもしろい」って何なのだろう?
ということなのでして。たとえば、
「おもしろい」の反対語とは
「つまらない」かなあ、とも思うですが。
作品を鑑賞することにおいては、
どうなったらおもしろい、逆に、
どうなったらつまらない、と、
人は思ってしまうんだろうなあ???
『オーランド』の舞台では、
毎回のシーンの中で鑑賞者がげらげら笑う、のような
おもしろさは無いと思えるから、
(ところどころくすっと笑える、
というシーンは幾度かあったですが。)
けれども、「おもしろい」とは、そういう
爆笑するようなことだけじゃあないとも思える。
興味ぶかいとか、不思議とか、すごいとか、
これはどういうことなんだろう? って考えるとか、
そういうものもあわせて、
「おもしろい」だと思うの。
はたまた、ここでむつかしいのは、
「よくわからない」イコール
「つまらない」だと思わないようでありたい、
って、ぼくは思っているのですが。
たとえば、美術館で現代アートを鑑賞するようなときには、
ぜんぜんわかんない! と思うこともあれども、
わからないからこそ、興味も持てなくて
つまらないと感じてしまう、というのは
ぼくだってもじつは経験があると言えばあるけど。
なぜ、わからないと思ってしまうかを考えると、
説明が少ない、もしくは
説明が無いから、及び、
そのことを理解できるだけの
知識が無いから、だと思う。
前者の「説明が少ない(無い)」については、
制作者の方があえて説明を省いている、
という場合もあるだろうし、だからこそ
行間を読むかのようにして、鑑賞者自身で
考えながら説明を補完する作業が肝要になる。
後者の「知識」についてもまた、
勉強したり、学んだり、経験を積んだりすることによって
わかってくることもあるやもしらない。
そうしながら、いわゆる
「鑑賞能力」を上げてゆけたい!
って、ぼくは日々思っているですが。
舞台『オーランド』で申しあげますと、
宮沢りえさん演じる「オーランド」が、
男性から女性へと変貌するシーンでは、
男性だったときのオーランドが男性より受けていた扱いと
女性になったオーランドが男性より受ける扱いとが、
ぜんぜんちがうと気づくシーンがあって、
この場面の感じ、すごい! と感じまして。
ぼくは男性だからこそ、男性の立場として
じぶん自身も行ってしまっているかのようで、
こわい、とも思ったりもして。つまり、
ジェンダーの問題のむつかしさ、と申しますか。
そういうことにおいても、たとえば、
学習塾の生徒さんの中学一年生の女子、つまり、
10代の女性が悩むことでもあるやもしらないけれども。
実際のところは、どうなのでしょうか?????
『オーランド』の宮沢りえさんのコメントでは、
【是非、劇場に遊びに来てください。
そして、目撃してください。】
とおっしゃっていたのですが。
つまり、りえさんのおっしゃるように、
重要なのは、舞台を
「目撃」することなのやもしらない。
この生徒さんが言われていたのは、
『オーランド』の最後の場面における
ステージが大転換するときには、
「あのとき、まじで意味がわからんかった!」
とのことなのですが。でも、
最後の最後のところまで、よくわからないながら
寝ちゃわずにじっくりと観劇していて、つまりは
彼女なりに「目撃」をしていたんだと思う。
ここで想うのは、劇場で
『オーランド』を目撃したことによって、
この生徒さんのこれからにおいて、彼女の
意識の奥の無意識に対して、なにかが
左右するようになるやもしらない。
それはまた、ぼく自身も同様であるやもしらない。。。
昨日のブログで記してなかったぼくの感想として、
このごろちょっとつかれがあって、
気持ちの晴れない感じもあったけれども、
舞台を観終わってからしばらくして思ったのは、
なんだか気分がすっきりしているなあ、って。
その理由もよくわからないんですが、
やはり、このこともまた『オーランド』の舞台を
目撃したことによって感じられたことやもしらない。
なんか、うまくは言えないけれど、
昨日はそんなことを思い考えていたのでした。
令和6年8月6日