吹替版が好きなわけ【#映画にまつわる思い出】
この記事は、WOWOWさん後援のお題企画「#映画にまつわる思い出」に投稿しています。
家族で観た映画
親が映画好きだったこともあり、物心ついた頃から映画を観ることが日常の一部だった。
親の好みとは異なるが、私を含めた3人の子どもが喜ぶようにと80,90年代のブロックバスター映画の吹替版をチョイスしてくれて、よく家族で鑑賞したものだ。
台詞をおぼえるくらい何度も繰り返し観た作品はいくつもある。
が、今回は特に子どもの頃何度も観たと記憶していて、かつ、今でも大好きな作品『グーニーズ』について取り上げたい。
子どもも大人も楽しめる『グーニーズ』
『グーニーズ』は子どもが主人公の冒険映画である。
ある日、子どもたちが屋根裏部屋で宝の地図を見つけ、宝探しに出かける。
宝探しといっても、地図に示された財宝の在処は彼らの住む家のすぐそばだ。しかし財宝への道の途中には、ギャング「フラッテリー一家」の隠れ家があって……と、追ってくるギャングや海賊の仕掛けた罠を回避しながら、落ちこぼれ集団「グーニーズ」が協力して冒険するというお話である。
子どもの頃は、グーニーズと一緒に冒険したつもりになって楽しんだものだが、大人になって見返してみても、起承転結の流れがテンポ良くコミカルで、純粋に物語として面白く、友情の尊さに目頭が熱くなった。
青春映画って大人になってからのほうが沁みるんだなあというのは、新たな発見だった。
出演キャストがまた素晴らしい。
先日の第95回アカデミー賞で助演男優賞を受賞したキー・ホイ・クァンも「グーニーズ」の一員だし、彼の出演交渉の弁護士だったというジェフ・コーエンもそうだ。
主人公のマイキーを演じていたショーン・アスティンもロード・オブ・ザ・リングシリーズ等のヒット作でメインキャラを勤めていたし、マイキーの兄役だったジョシュ・ブローリンもアメコミヒーロー映画で名悪役を演じていた。
子どもの頃に親しんできた人たちが、今もスクリーンの中で活躍してくれていることが本当に嬉しい。子どもの頃と変わっていてもそうでなくても、スクリーン越しに昔の友達と再会したような感慨が生まれる。
子どもの頃から親しんできたといったが、私が子どもの頃から海外作品を鑑賞できたのは、吹替版のおかげである。
映画好きは字幕でないといけない?
映画が好きな人のコミュニティにいると、字幕派が圧倒的に主流である。たしかに物語を本当に理解するためには究極、その国の言葉を原音で聞いて理解する必要があると思う。
けれど世界中の名作を理解するために、世界の言語をすべて理解するというのは不可能。そこで「字幕」という選択肢が浮かぶ。
字幕であれば、原音を耳で聞きながら文字情報として内容を追うことが可能だ。言葉は理解できずとも、演じているキャストの声から演技を補完することができる。
では吹替版の場合はどうかというと、演じているキャストとは別に、日本語の吹替声優の声があてられることになる。
映像に合わせて声が当てられるので口の動きは合っているが、ニュアンスや演技プランは日本向けに変わっていることが往々にしてある。
だから純粋にキャストの芝居を楽しみたいという人にとって、「吹替で観るのは邪道」と言われても仕方がないのかもしれない。
だがこの記事の冒頭でも述べたように、私は子どもの頃から吹替版で映画を楽しんできた。
いや、吹替版だから映画を楽しむことができたのである。
まだ字が読めなかった子どもの頃の私が抵抗感なく海外の映画を楽しむことができたのは、吹替版のおかげだ。
長らく「海外の人はみんな日本語が話せるんだなあ」と勘違いしていた程、馴染んでいた。
ちなみに先程取り上げた『グーニーズ』は、TBSで放映されたものをビデオに録画して繰り返し観ていたのだが、主なキャストが野沢雅子さんや古谷徹さん、坂本千夏さんらである。少しでも声優に詳しい人には、この豪華さが伝わるだろう。
たしかに吹替版は、音響監督によって雰囲気がガラッと変わる。元のキャストに合う合わないではなく、広報のため「声優初挑戦」の犠牲になることもしばしばある。
けれど私のように吹替版に救われる人もいるはずだ。
だからこそ作品を最大限リスペクトしたキャスティングをしてほしいし、劇場ではもっと吹替版の上演もしてほしい。
「映画にまつわる思い出」というテーマから、改めて強くそう願っている。
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