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NEWWORLDでのD2Cブランドの生き方

NEWWORLD2020というイベントのお誘いを頂いたこともあり、その場で考えながら話すことが苦手なので、現時点の自分の考えを書きながら整理しておこうと思う。(イベントは明日の夜から)

スタートアップがこの環境下でやっておいたほうが良いこと、今後消費者の行動はこう変わる、といった内容の有益情報は既に多くの方が書かれているので、あくまで自分が今考えているミクロな事の整理という感じで。

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不可逆反応

緊急事態宣言を境にというわけではないが、それをきっかけに大きく世界が変わった感がある。何もなければ数年、数十年掛けてゆっくり変わっていたものが、すごいスピードで変わった。
一方で、時代を押し戻されてしまった分野もある。一部の領域ではここ数年でじわじわと変わってきたことが一気に逆戻りした。

チョコレートは一度熱をかけて溶かしてもまた型に入れて冷やせば再び固まる。一方で、卵は一度熱をかけると固まり二度と元には戻らない。化学の言葉では、チョコレートは可逆反応、卵は不可逆反応だ。化学畑出身なので、このワードを思い出した。

今回の変化も卵のような感じで、一度変化してしまったらもとに戻らない不可逆的なもののような気がしている。当初は、一時的な影響で、いつかは"元に戻る"ものだと考えていたが、それは幻想で、既に不可逆的に変わってしまった。その変わってしまったことを受け入れるしか無いというのが現実だろう。

いつかは戻る、という幻想を抱くのではなく、変化を受け入れる、ところがスタート地点。
D2Cブランドの場合、想定していたターゲットや使用方法がNEWWORLDでは変わっているかもしれない。消費者が戻ってくるのを待つのではなく、ブランドの立ち位置自体も見直す必要がある。

確実な不確実性

ではどのように変わらないといけないのか。
まだ見えていない、というのが正直なところだ。

ただひとつ、確信を持っていることとしては、確実に不確実性が高くなっているということだ。想定しなかったことが連続して起こり、もはや何が起きても不思議ではない。

変化の例として、消費者のマインドは"コスパ"重視から”時間あたり価値”重視への変化があると考えている。自宅で過ごす時間が増え、外出先で使っていたお金の使い道が減ってしまったため、多少お金がかかってもできるだけ自宅で価値の高いことをしたいという欲求が増している消費者も存在する。もちろん、こういった状況下で出費をできるだけ控えようという方も同時に存在している。

安い既製品のお菓子を買うのではなく、自分で手づくりお菓子やケーキをつくる、普段は買えない店舗のテイクアウトをあまり値段を気にせず購入するなど。安くて簡単便利なものではなく、多少手間やお金がかかっても自分にとっての絶対的価値が高いもののニーズが高まっているということだ。

日本におけるD2Cブランドの多くは、コスパを追求したものではなく、プレミアム価格で高い価値を基本としているものが多いので、そういったD2Cにとってはこうしたマインド変化はポジティブな一面もある。ただし、今後消費が落ち込むと使用自体を一気にカットされる可能性もある。特需的に売上が伸びたとしても一時的なものかもしれない。EC自体の市場は拡大しそうだが、生活必需品が中心なのか、贅沢品まで拡大するのか、は今の時点ではわからない。

後付での説明は簡単だが、不確実性が高く、明日何が起こるかわからない状況下で、消費者マインドの変化を精度高く先読みすることは難しい。

不確実な変化を狙い撃ちで先読みして待つのではなく、変化を見逃さず、素早く動くことが大事と考えている。

反脆弱で靭やかな計画

そういったマインド変化はミクロな動きから観察できる。

仕方なく買い出しにいったスーパーで、お酒コーナーからビールやチューハイが消えているのに気がつく、マンションのゴミ捨て場でかつて見たことがない量のビールの空き缶やワインの瓶が捨ててある。

夜に飲みに行くことが減った結果、自宅での飲酒の需要が増えているし、Zoom飲みやオンライン飲み会といったキーワードを聞く機会も増えている。お客様から「家飲みの機会が増えたのでおつまみセットを出してほしいとい」という声も届く。

実際に、スナックミーでは5月に販売を予定していたオツマミBOX「オツマミー」を4月中旬に急遽販売開始した。変化が激しいため、求められているものを、今、提供する必要があるからだ。ここで計画に縛られてしまうと、求められているものを求められているタイミングで提供できなくなってしまう。

ブランドローンチのタイミングなども、クリエイティブにこだわるほど計画変更しにくくなるが、そもそも柔軟に変更できるようなマイルストン設定が必要になるだろう。また、必要に応じて伝えるべきメッセージやクリエイティブ自体も変わってくるかもしれない。NEWWORLD以前から背景や前提が変わってしまっているので変更は必然だ。

戦略や事業計画も数年分の計画を立ててそれに従うというより、数ヶ月、早ければ数週間単位で引き直すべきかもしれない。できるだけ靭やかに、剛直でもなく、脆弱でもない計画や戦略、その実行が必要だ。


結局、何をすればよいというわかりやすい正解は無く、

・不可逆変化であることを認め、
・不確実性を前提としながら
・反脆弱で靭やかな計画と戦略を持つ

という、至極当たり前の結論になってしまった。

結果として今は何をしないという事になっても、それが、不確実の中であらゆるシナリオを考えた上で、反応するタイミングをじっと待っているならば良いんじゃないかと思う。周囲のうまく立ち振る舞っている成功事例に焦るのではなく、自身も含めた身近な消費者の観察によって変化の兆しを見つけ、求められているものを求められているタイミングで提供する。
よく考えるとこれはスタートアップなら変化前からやっていることだ。

世界が変わっても、本当に必要なことは変わらないかもしれない。


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