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よせぎれ表装_早春の海

今からかれこれ半世紀前に書いた書き初めがあります。文字は早春の海、学年は小三、そして私の旧姓の氏名が書いてあります。私は小学校3年生の秋に東京から松本に転校したため、書き初めは松本で書いたものと思われますが、書いた時の記憶は全くありません。自分の氏名の文字は見慣れたものであるため、多分私の書き初めなのでしょう。母は子どもたちの絵でも書でも作文でもなんでもかんでも捨てずに保存しておいてくれました。私は結婚後、それらを取捨選択し、いくつかを保存しており、その中の一つがこの書き初めです。

それは、簡単な紙の表装がされていて裏には昭和46年度「第六回渓水書道学童部出品表」という小さな貼り紙がついていました。それにしても、さすがに半世紀を経過していますので、表装の紙はボロボロ、書の和紙にはシミがいっぱいでした。

そこでこの度、「早春の海」のイメージにあう着物の裂を使い表装をしなおすことにしました。考えて選んだ裂が、二十歳の頃に母に作ってもらった珊瑚色の鮫小紋の着物の残り裂やその他いろいろです。早速、店構えのよい経師店に持ち込みました。裂の使い方や寸法は職人さんにお任せしました。

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「できましたよ」の連絡を受けてお店へ伺いましたところ、その裂の使い方に、なるほど〜、そうきたか!という驚きと感動でいっぱいでした。珊瑚色の鮫小紋が、書の周りをパイピング状に細く細く回っているのです。早春の海が珊瑚で取り囲まれているわけです。金襴の一文字とコーナーの裂の取り合いなど丁寧な仕事ぶりが一目でわかります。「第六回渓水書道学童部出品表」はちゃんと新しい表装の裏に貼られていました。寸法はお任せにしたところ、経師店では気づかなかったのですが、自宅で測ってみたら長さは2mを超えているロングサイズです。

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自宅のマンションには和室も床の間もありませんが、マンションの白い大壁にロング掛け軸をかけて早春の海を楽しみたいと思います。半世紀の時空を超えて「早春の海」が我が家にやってきた室内装飾織物がたりです。

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