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物々交換 小麦料理と花粉症(後篇)

小麦が食べられなくなった経緯について前篇で書いたので、今日は小麦と引き換えに得たのかもしれないことついて書こうと思う。

小麦やグルテンを含む食品を食べなくなってから初めて迎える3月。ふと気づいた。花粉症が全く出ていない。飛散量のピークに達しても、ヒノキ花粉の時期になっても、鼻が詰まることも、目がかゆくなることも全くなかった。例年よりも飛散量が多いと言われている今年も無傷である。

それまでは2月下旬から鼻詰まりと目のかゆみに苛まれてきた。昼間は鼻水が垂れるし、寝ようと仰向けになれば鼻が詰まり呼吸が苦しくなる。気候が緩んできても、寒さ以上に過ごしにくい。
野花が咲き、虫がもぞもぞと動き出し、桜に染まる生命の息吹に満ちた世界は、目に見えない敵で溢れているように感じられた。春霞はただ花粉が舞って、霞んでいるだけだろ、と悪態をつく始末である。

このような悲惨で非道な理不尽極まりない世界から脱したと気づいたときは、驚きと感動が渦巻いた。このときの感情は、モーゼが海を割って、エジプト軍の襲撃から逃れたイスラエルの民の昂奮と同じようなものである(たぶん)。

花粉症に悩まされない春はとても晴れやかだ。なぜ症状がでなくなったのかは、よく分からない。考えられることとして、腸内環境の悪化が花粉症を誘発すると仮定した場合、うまく消化吸収されなかったグルテンによって乱された腸内環境が改善されたからではないだろうかと踏んでいる。
100人の花粉症持ちが小麦を断って3月を迎える実験をしたわけではないので、あくまで仮定の話ではある。
しかし、仮にそうだとしたなら、素晴らしい物々交換だなと思った。パンもラーメンも、ピザもうどんもお好み焼きもショートケーキも食べられないが、花粉症に苛まれないのであれば、喜んでそれらの小麦を含む食品を差し出すところである。

もし、便通異常が続いていたり、花粉症に悩んでいるのなら、試しに小麦を断ってみたらどうだろう。きちんと実証されているわけではないから過度な期待は持たないほうがいいが、もしかしたら変わるかもしれない。

もちろん、本当に小麦が身体の不調を誘発しているのだとしても、完全悪だとレッテルを張ってしまうのはかわいそうである。なにしろ、小麦のおかげで料理が多様化し、それらに舌鼓を打つことができるのだから。精神的に非常に満たさせることを僕も知っている。
けど、仮に小麦を摂取しないことで、便通や花粉症が改善されるのであれば、悪くない取り引きであるということも知っている。

僕にとっては非常に満足のいく物々交換であったと思っている。

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