暮らしのものづくり~木工、コンポストトイレ、糸と布のもの
香川に移住してから、いろんなものをつくり始めました。田畑での作物のほか、前からつくってみたいものがいろいろありました。当時はとにかく手を動かして何かをつりたいという熱意が高まっていて、何でも買うよりつくりたい、と思っていました。
木工
まず、引っ越した古民家で必要な家具をつくり始めました。近所のホームセンターでSPF材や杉板などを買ってきて、机や椅子、棚などをつくりました。
電動工具を使いたくなかったので、ノコギリと釘で椅子をつくってみたけれど、使っているうちにガタガタして斜めになってきて、危険な椅子になりました。初心者がいきなり椅子をつくるというのが無謀だったのかもしれません。でも、必要なものを必要なときにつくっていると、最初は上手くいかなくても、いつの間にか上達していくものだとわかってきました。本当に必要なものをつくっていると、技術を高めるための努力という感じにもならず、楽しんでいるうちに上達します。
さすがに電動工具を使わないと大変すぎるということもわかり、インパクトドライバーを買い、これで木工がかなり楽になりました。最初に電動工具なしで始めたからこそ、そのありがたさをなおさら痛感できました。
引っ越した家に本棚や収納棚が必要でしたが、ぴったりのサイズでつくっても、今後引っ越したときに使いやすいとは限りません。そこで、応用の効きそうなサイズの木箱をたくさんつくり、それを並べ、積み上げて棚にすることにしました。化学物質はなるべく避けたく、集成材やMDFなどを使わず、幅の狭い杉板を並べてつくったのでずいぶん手間がかかったけれど、野球の千本ノックのようなものです。千個もつくっていませんが、同じものをたくさんつくることで、ノコギリでカットしたりビス留めしたり、基本的な技術の精度が上がってきました。
今まで木工でつくった一番大きなものといえば、食器棚。これは箱を積み重ねるスタイルでは使いにくいので、台所の空間に合わせたサイズでつくりました。夏の昼間、屋外が暑すぎて畑仕事が危険な時間帯に、家の中でコツコツと作業し、最後は柿渋を塗って仕上げました。
どちらかといえば、数十分、数時間でぱっとつくれるものをつくるのが好きなのだけど、時間がかかるものをコツコツつくり、ようやく完成したときの喜びは大きいものです。買ってくれば早いわけですが、自分でつくったものはやっぱり特別な愛着がわきます。他人から見ればなんてことのない食器棚かもしれないが、見るたびにうれしくなります。あまりに出来がわるいと、見るたびになさけなくなるかもしれませんが、それなりに自分で満足できる仕上がりになれば、市販品ほどの精度がなくても充分で、手づくり感があるのがかえってよかったりします。
コンポストトイレ
コンポストトイレに前から憧れがあり、自分でつくってみることにしました。
インターネットで検索すると、作り方がいろいろ紹介されています。第一号は、「自然にカエル」という生ゴミ処理機を使い、大小分離式のものをつくりました。便座は木だと冬も冷たくなりにくくてよさそうだと思い、木で便座も手づくりしました。
これはしかし、日常的に使うには手入れがちょっと大変で、第二号はもっとシンプルにしました。
EMエコペールというバケツのようなものを使いました。液肥を抜くことのできる蛇口が下の方についています。容器の底に落ち葉や枯れ枝などを15センチくらいの高さまで敷いておくことで、大小を分離することができ、容器の底を汚れにくくする効果もあります。
トイレの使用後には落ち葉を被せておきます。連続でトイレに行くとちょっと臭うことがありますが、数十分間を置けば全く臭いが気になりません。
今は水洗トイレを使っていますが、このトイレをつくって、これで1年以上過ごしたことで、水洗トイレが使えないような状況になったとしても何とでもなる、という自信がつきました。
糸と布のものづくり
暮らしの基本を衣食住に分類してみると、「衣」に関しては買うだけで済ませているなぁと思う時期もあったけれど、その後、自分が着る服もつくり始めました。
まずは手縫いで始め、相方に教わりながら自分のズボンをつくりました。いざ始めてみるとこれが予想以上に楽しくて、毎朝、縫い物が楽しみでまだ真っ暗な早朝に目が覚めてちくちくしていました。ミニバッグ、巾着袋、あずま袋、ポーチなどの小物もいろいろつくってみました。
手縫いを毎日やりすぎて指を痛めてしまったのだけど、祖母がかつて使っていた足踏みミシンを譲り受け、さらに縫い物熱が高まり、簡単なシャツもつくり始めました。自分の好きな布を選び、自分の体と好みにあったサイズやデザインでつくれるのが楽しいです。
布の色合わせも好きで、端切れを山のように買い集めました。一色のシンプルなのもいいけれど、ズボンだとポケットだけパッチワークでカラフルなものを付けたり、買ってきたシンプルなシャツに柄物のポケットをつけてみたりして楽しんでいます。
ご縁で機織り機も譲り受け、織り物も始めました。これも糸の組み合わせだけでも無限の可能性が楽しめます。織るだけで完成するマフラーをつくるのが好きで、自分には似合わなさそうでも、好きな色の毛糸を見つけると、つくってみたくなります。自分のマフラーは何十本も必要ないので、販売も始めました。色とりどりのマフラーは見るだけでも楽しいかもしれないと思ってオンラインでの展示を始めたり(「ひとつだけの手織りマフラー100本展ONLINE」)、友人たちのお店で展示販売会の機会もいただきました。
いろんなものを自分ひとりでつくっているだけでも面白いのだけど、つくったものを誰かが見て喜んでくれると、喜びが何倍にも広がっていきます。
それはマフラーだけに限らず、あらゆるものに言えることで、暮らしや生き方そのものに関してもそうだと思います。
まずは、自分から始まる。自分を満足させ、喜びで満たせば、それが誰かの喜びにもつながっていく。お互いにそんな連鎖がどんどん広がっていけばいいなぁと思います。