図書館の彼女 2.
進藤さんと一緒に本を探した日から、二週間が過ぎようとしている。僕は彼女と探した本を使って、何とかレポートを提出することが出来た。
進藤さんとは、あれから一度も会っていない。文学部で開講される講義を受けているので、教室を見回してみるけどいない。学食や移動中の外を見回してもいない。そのことで春樹に不審がられる時もしばしばある。
「どうしたの航。また図書館の彼女を探してるの?」
金曜日最後の講義を終え、僕と春樹は講義室を出て、歩きながら話した。
「ま、まあな」
僕は言い当てられた恥ずかしさを隠しながら答える。
「この大学は人が多いから、簡単には見つからないと思うよ」
春樹は僕を見ながら落ち着いた口調で言う。勿論その事は百も承知だ。だけど、僕はなぜか彼女が気になっていた。一緒に本を探しただけなのに、理由もなく気になった。
「春樹は、これからどうすんの?」
「僕は部室に行くつもりだけど。航も来る?」
「行く訳ねえだろ」
春樹はUFO研究会とかいう、部員が十人もいない訳の分からないサークルに入っている。活動内容は、ざっくり言えばUFOを探すことらしい。そんな非科学的な事を信じない僕にとっては、馬鹿馬鹿しい事この上なく感じる。
「大体、一生見つからないだろ、UFOなんて」
「見つかるって信じる方が面白いじゃないか。未来に希望を持つんだよ」
春樹の力説に、僕は思わず大きな溜息を洩らした。こんな先の見えない未来のどこに希望を持てばいいのだ。大学生の就職率は相変わらず低いし、国会議員は国民そっちのけで陣取り合戦を繰り広げている。こんな一筋の光が見えない未来に、希望なんて持てない。
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