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記憶を紡ぐ糸

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大学3年生の時に書いた小説。記憶喪失の女性、高宮若葉が自分の失った記憶に迫るミステリー。
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2016年7月の記事一覧

記憶を紡ぐ糸 第4話「困惑」

記憶を紡ぐ糸 第4話「困惑」

 友一さんが平嶋さんを家まで送り届けて帰ってきた。私はあれからずっと、頭が混乱している。階段で倒れていたあの時に、私は携帯電話を持っていなかった。自分は携帯電話を持っていないものだと考えていたから、あの光景のように慣れた手つきで操作しているのは到底考えられなかった。

 私はそのことを友一さんに話した。彼も、困惑した表情を見せた。

「それって、若葉ちゃんは携帯を持っていたってこと?」

「分から

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記憶を紡ぐ糸 第3話「光景」

記憶を紡ぐ糸 第3話「光景」

 すっかり暗くなった頃、友一さんは同僚の平嶋(ひらじま)久(ひさし)さんを連れて家に帰ってきた。友一さんは、よく平嶋さんを家に連れてきて、一緒に酒を飲み明かすのだ。

 食卓には私が炊いた白米と友一さんが買ってきたスーパーのお惣菜、そして二人が買ってきた缶ビールとチューハイが並んだ。私たちは乾杯をして、夕食を食べ始めた。

「そういえば若葉ちゃんって、立花女子大に通ってたんだよね」

 食事と酒が

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記憶を紡ぐ糸 第2話「ある日常」

記憶を紡ぐ糸 第2話「ある日常」

 友一さんの家は、六階建てのマンションにある三階の一室だ。築十四年らしいのだが、まるで新築のように綺麗だ。

「若葉ちゃん、調子はどうだい?」

 友一さんの家に住むことになって一ヶ月が経ったある日の朝、友一さんはいつものように私に状態を聞いた。

「いつも通り……かな。まだ記憶は思い出せそうにない」

 友一さんが作った卵焼きに箸を伸ばしながら答える。彼の卵焼きは砂糖を多く入れているせいか、とて

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記憶を紡ぐ糸 第1話「喪失と出会い」

記憶を紡ぐ糸 第1話「喪失と出会い」

 人間の記憶は、糸を紡ぐように断片的な記憶を繋ぎ合わせることで成り立っている。人間の脳はそれぞれの断片的な記憶を保存して、これまでの記憶に繋ぎ合わせていく。なかなか優れた機能を持っているようだ。

 しかし、保存したはずの記憶がすべて失われたらどうなるのだろうか。思い出すものが無ければ、何も引き出すことは出来ない。

 私には記憶が無い。自分がどんな人間で、どんな人生を送ってきたのかも思い出すこと

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