演技でキスをするか、本気でキスをするか #小説『ジミー』
初夏の香りがする小説が届いた。青海エイミー著、『ジミー』。
数ページ括って、お気に入りの場所で読むことを決めた。車で一時間のところにある海が見えるカフェ。
僕は小説をほとんど読まない。しかし、最初の数ページで分かった。
「この本は読む」
天然水のような透明な青春小説。
『夏を生きる』という曲がある。なんともなしに、その詞を思い出していた。
主人公の女子高生、中井マイと友人たち。初夏の海辺で飲むサイダーのような彼女らも、ベタついた影を生きている。
新学期、何も知らなそうな純朴すぎる男子が転校してきた。ジミーという名。マイは彼の振る舞いにイラつきながらも、その純粋さをいつも意識してしまう。
なにも知らないジミーと、なにもかも経験しているマイ。キスすら演技で行い、無感覚になっていた。自らの肉体に値札を貼ってしまったたことに、激しく自己嫌悪をする。だからこそ彼の純朴さが、たまらなく気になる。
自分になるとはどういうことなのだろうか。僕はこの小説を読みながら、そんなことを思っていた。
実績のある人間に実績があるからと言って、悲しみを癒せるわけではないし、地位のある人間に地位があるからといって、他者の痛みが分かるわけではない。それなのに、人はどうしても地位や実績を欲しがってしまう。
「本気でキスをする恋人が、あなたのそばにいるだろうか」
僕はこの小説から、そう問われている気がした。
マイがジミーにすべてを告白した時、彼は言った。
「坂下さんに恋人がいたら、傷ついている人はいると言えるね」
運命の女性がいたとして、彼女が喜ぶことがあるとしたら私が人に思いやりをかけたことだけだろう。富や名誉、力を得たとしても、本気のキスをしてあげられるわけではない。
どんなものも手に入る社会で、私たちが忘れてきてしまったキスがある。
恋をしたあの夏を思い出したいあなたに、おすすめの一冊。
お読みいただきまして誠にありがとうございますm(_ _)m
めっちゃ嬉しいです❣️
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