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【柔整国試】下腿骨遠位端部骨折解説~今は亡きラウゲハンセン分類は「踏み台」にしろ~

みなさんこんにちは。
柔整国試模試をnoteで公開しています
花田隼人(@hokkaido_wakate)です。

この記事では
多くの柔整国試受験生が苦手とする
「下腿骨遠位端部骨折および足関節脱臼骨折」
について解説したいと思います。

おそらく学校の先生より分かりやすい、
「定着性が高い解説」ができます。

本作では、最近出題がないラウゲハンセン分類についても触れますが、現行のカリキュラムにおいても活用可能な考え方として紹介します。ラウゲハンセン分類を理解することで、現行の分類をより深く理解できると考えています。

学生時代に作った資料を基に進めていくので絵の下手さには多少目をつむってください(汗)。その代わり無料で公開いたします!

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1.ココがつまづきポイント


まず、足関節の機能を思い出しましょう。
運動方向は何でしたか?

底屈
背屈

回内
回外

内転
外転

内反
外反

このようなシリーズでしたよね?


ですが、
この下腿骨遠位端部骨折では
この中にない動作が教科書上で登場しますよね?


そうです。
「外旋」です。


通常の足関節の動きにはない
「外旋」という運動の話をされるわけです。

これが我々のつまずきポイントです。


では「足関節の外旋」とは
どういう動きでしょうか。


以下に足関節を水平に切った図を載せます。

↑こんな感じです。

ヤバいですよね。

内果と外果の間の距離が決まっているのに
前後に長い距骨が水平に回転するということは、

内果と外果の距離を
中から押し広げるということです。

つまり、
「脛腓関節の離開」という力が加わります。


したがって「外旋力が加わった」という設問であれば、脛腓関節部に何かトラブルが起きていることが(国試対策としては)決定します。

反対に、脛腓関節部にトラブルがあれば、受傷外力は「外旋」または「内旋」を含んだものであるという考え方をすればOKです。

今は亡きラウゲハンセン分類でいえば、
回内外旋損傷
 (ポット骨折デュプイトラン骨折含む)
回外外旋損傷

外力別の分類では
外転型損傷の一部

そして
・チロー骨折

以上は脛腓関節部で損傷が生じるため
「外旋」の働きが加わったものと考えます。
(あくまで国家試験対策上では…)





2.外旋が加わったときの腓骨損傷


外旋が加わるということは
「外転」が加わることとはわけが違います。

足関節が外転して
距骨が腓骨にストレスを与えるときは
「衝突と圧迫」が加わります。

しかしこれが外旋となると違います。

外旋の場合は
腓骨にも「旋」の力が加わるため
腓骨は捻転する外力を受けることになります。

この捻転外力は腓骨上部へ伝わることで
「腓骨骨幹部のらせん骨折」などの
腓骨の比較的上部での骨折を引き起こします。

「外旋力」が加わると

・脛腓関節部の損傷
・腓骨上部(外果より上)の螺旋骨折

以上2点が発生すると考えます。





3.いわゆる内反を理解する


ここで内反と外反を整理しましょう。

内反とは(あくまで旧基準で)、

・底屈
・内転
・回外

という3つの動作が
組み合わさったものです。

これら3つの動きは
基本的にセットで連動します。

仮に「回外」という動作が
一定可動域以上に強制されれば、
「内転」と「底屈」も
連動的に起こります。

内転という動作が
一定可動域以上に強制されれば、
「回外」と「底屈」も発生します。

これと同じことが、
外反でもいえます。





4.いわゆる外反を理解する


次に外反です。

外反とは(あくまで旧基準で)、

・背屈
・外転
・回内

という3つの動作が
組み合わさったものです。

これら3つの動きは
同じく基本的にセットで連動します。

仮に「回内」という動作が
一定可動域以上に強制されれば、
「外転」と「背屈」も
連動的に起こります。

外転という動作が
一定可動域以上に強制されれば、
「回内」と「背屈」も発生します。

…という解釈をあくまで
”国家試験対策”としてはしておいてください。





5.底背屈時の距腿関節スペース


さてここまでは、

回外が発生すると、「底屈が発生しやすい」
回内が発生すると、「背屈が発生しやすい」

ということについて述べました。


では、
底屈と背屈によって
距腿関節はどのように変化するでしょうか?


底屈位の話をしましょう。
距骨の形状(上関節面)は
前方が幅広く、
後方が横に細く作られています。

内果と外果の間である
距骨が入り込むスペースにおいて、
底屈の時は距骨の細長い後面側が
下腿骨と接していることになります。

そのため距腿関節内での
隙間が大きいため動きの余裕があります。

だから、
底屈では大きな内反可動域が
実現できるというわけです。


ところが、
背屈ではどうでしょうか。

背屈位では
横幅の広い距骨前方の関節面が
下腿骨と接することになります。

内果と外果の間にあるスペースは
もちろん変わらないため、
この背屈の状態では
距腿関節内に隙間がありません。

したがって
背屈位で回内や外転をしようにも
内反ほどの大きな可動域にはなりません。

底屈が発生しているときは
距腿関節に空間的余裕がある。

背屈が発生している時は、
距腿関節に空間的余裕がない。

そういう理解をしておきましょう。





5.回内外旋損傷と回外外旋損傷


さて、

底背屈の状況によって
距腿関節内の空間的余裕が異なる
という話をしました。

では、
空間的余裕がある「底屈」状態で
「外旋」が加わった場合と、

空間的余裕がない「背屈」状態で
「外旋」が加わった場合、

どちらの方が高エネルギーのストレスを
腓骨に対して与えるでしょうか?


当然、
空間的余裕がない「背屈」状態で
「外旋」が加わった場合
ですよね。

骨同士が関節運動の初めから衝突して
互いに圧迫力を与え続けるわけですから、
腓骨全体にとってストレスとなります。

するとどうなるか?

背屈位となりやすい「回内」に
「外旋」が加わった場合、

腓骨は骨幹部より上方で
骨折してしまう
ということです。

反面、
空間的余裕がある「底屈」状態で
「外旋」が加わった場合、

関節に遊びがあるということは、
生理的な可動域を超えるまで
空間的な余裕があるということです。

骨への衝突外力が強まるのは
可動域を超えた最後の一瞬ですから、
腓骨全体にエネルギーが波及するのではなく、
あくまで衝突した骨の周囲にとどまります。

するとどうなるか?

底屈位になりやすい「回外」で
「外旋」が加わった場合、

腓骨の上方では骨折せず
骨幹部遠位端(頚部)の骨折が発生します。

背屈位になりやすい「回内」に
(=距腿関節に余裕がない)
「外旋」が加わると、

「腓骨骨幹部らせん骨折」が発生。


底屈位になりやすい「回外」に
(=距腿関節に余裕がある)
「外旋」が加わると、

「腓骨頚部らせん骨折」が発生します。





6.内果外果損傷の基本ルール


さて、
ここまでお伝えしたものを一度まとめましょう。

【外旋】
本来足関節にはない動き。
「ありえない動き」である外旋が加わると、
脛腓関節部の損傷
 (脛腓関節離開・チロー骨折)
腓骨部が外果より上でらせん状に骨折する
 (腓骨頚部骨折・腓骨骨幹部らせん骨折)
が起こる。

【回内】
足関節内に空間的余裕がある
「底屈」を同時に生む。
→腓骨への外力波及は最小限。
・回内外旋⇒腓骨頚部骨折

【回外】
足関節内に空間的余裕がない
「背屈」を同時に生む。
→腓骨への外力波及は大きい。
・回外外旋⇒腓骨骨幹部らせん骨折

これを踏まえたうえで、

内果外果損傷の
基本ルールを頭に入れてしまえば、
下腿骨遠位端部骨折はクリアです。


では、内果外果損傷の
基本ルールをお伝えしましょう。

足関節の図があるとして、
内果の最も山が高いところと
外果の最も山が高いところを線で結びます。


この線よりも
上方で骨折があれば
「距骨による圧迫があった」と考えます。

この線よりも
下方で骨折があれば
「内転や外転で牽引された」と考えます。

内転・外転の時には
内側と外側それぞれに
「距骨による圧迫力」
「関節運動による牽引力」という
相反する2つの力がセットで加わります。

「圧迫力」は
横骨折や斜骨折を起こし、

「牽引力」は
靭帯損傷や靭帯付着部の裂離骨折を起こします。

内転のとき(いわゆる内反捻挫)は
外側に牽引力、内側に圧迫力が加わります。

外転のとき(いわゆる外反捻挫)はその逆で
外側に圧迫力、内側に牽引力が加わります。

内転で損傷した場合、
外果周囲には牽引力が加わります。

したがって
外果下部先端の「裂離骨折」や
「外側靭帯損傷」が発生
します。

内側では
関節内を動こうとする距骨から
内果が圧迫を受けます。

したがって、
内果のやや上方で
「横骨折」「斜骨折」が発生
します。



では反対の話をしましょう。

外転で損傷した場合、
内果周囲には牽引力が加わります。

したがって
内果下部の「裂離骨折」や
「三角靭帯損傷」が発生
します。

外側では
関節内を動こうとする距骨から
外果が圧迫を受けます。

したがって、
外果のやや上方で
「横骨折」「斜骨折」が発生
します。

これら全て、
内果と外果の山の頂点を線で結んで、

この線より上か下かを判断することで、
足関節に加わった外力を
推測することができる
というわけです。

※あくまで柔整国試対策上はこれで十分です。





■例題1


上の画像には
どのような外力が加わったと
考えられるでしょうか?


【脛腓関節】問題なし
【腓骨頚部〜骨幹部】問題なし

以上から「外旋」は無かったと考えられます。


【内果】線より下で裂離骨折(牽引力)
【外果】線より上で横骨折(圧迫力)

以上から距骨と足関節の動きとしては
外転が加わったものと考えられます。

したがってこれは
「外転型損傷」と判断できるわけです。

ラウゲハンセン分類でいえば
回内外転型と分類することもできます。






■例題2


ではこの問題。
外転型損傷で発生しないのはどれでしょう?

外転型では
内側に牽引力、外側に圧迫力がはたらきます。

内側に牽引力が働けば
・三角靭帯損傷
・内果裂離骨折

のいずれかが起こりやすいです。

外側に圧迫力が働けば
・外果上方横(斜)骨折
が起こりやすいです。

この外転の際に
外旋が加わってしまうと
・脛腓靭帯損傷
・チロー骨折
・腓骨らせん骨折(外果より上)

が併発してしまいます。

以上の条件に合わないものは、
3.内果上部横骨折です。

内果上部で横骨折が起こるには
内果に圧迫力が加わる
「内転型損傷」である必要があります。





おまけ)外側の損傷で判別する

あくまで
ラウゲハンセン分類に限った話ですが、

このような考え方を
「いっさい抜き」にして、

外側の損傷状態図だけで、
加わった外力を判別することはできます。

コチラの図をご覧ください。

下から見ていきます。


▶外果裂離骨折または外側靭帯損傷がある

「内転」が加わったことによる
牽引力の損傷であると考えられます。

よってこの部位に損傷があれば、
「回外内転」損傷だということです。




▶外果上部横骨折がある

「外転」が加わったことによる
距骨からの圧迫力で損傷したと考えられます。

よってこの部位に損傷があれば、
「回内外転」損傷だということです。




▶腓骨頚部骨折がある

腓骨において外果部ではなく
より上方に損傷を起こしてしまう
ハイエネルギーな損傷であったことを示唆します。

したがって足関節に
「外旋」が加わったものと推測します。

足関節内に空間的余裕がある
「回外」に「外旋」が加わったと考えれば、

腓骨への捻転外力が
最小限で済んだと考えられ、

腓骨頚部の骨折があれば
「回外外旋」損傷であると考えることができます。




▶腓骨骨幹部らせん骨折がある

腓骨において外果部ではなく
より上方に損傷を起こしてしまう
ハイエネルギーな損傷であったことを示唆します。

したがって足関節に
「外旋」が加わったものと推測します。

足関節内に空間的余裕がない
「回内」に「外旋」が加わった場合、
腓骨骨幹部まで強い捻転力が波及します。

腓骨骨幹部にらせん骨折があるということは、
「回内外旋」損傷であったことが推測できます。


またこのとき、
内果の損傷状態によって骨折名が分かれます。

腓骨骨幹部らせん骨折に併発して、
内果下部で横骨折を起こしていれば
「デュプイトラン骨折」

腓骨骨幹部らせん骨折に併発して、
三角靭帯損傷を起こしていれば
「ポット骨折」とよびます。





まとめ

ここまで解説してきましたことを
十分に踏まえたうえで、

現在標準的に柔整国試対策で指導されている
「内転型損傷」「外転型損傷」を見ていくと、
何が発生するのかを理解しやすくなります。

内転型損傷では、
・足関節が回外、内転、底屈強制される。
・内果横骨折、斜骨折(圧迫力による)が起こる。
・前距腓靭帯損傷
 または踵腓靭帯損傷が起こる。
・もしくは外果靭帯付着部の裂離骨折が起こる。

外転型損傷では、
・足関節が回内、外転強制される。
・外果横骨折、斜骨折(圧迫力による)が起こる。
・三角靭帯損傷
 または内果部裂離骨折が起こる。
・脛腓靭帯の損傷もしくはチロー骨折が起こる。
・腓骨頚部や骨幹部での
 骨折が発生することがある。


このような整理が
簡単にできてしまいます。


では、
いま一度「柔整理論」の教科書を
引っ張り出して読んでみてください。

このnoteを頭に入れてからであれば、
非常に読みやすくなっていると思います。


それでは!
他の国試対策コンテンツでまたお会いしましょう!



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花田隼人|治療哲学人類学派|柔整国試対策
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