礼拝【前編】
俺たちが通っていた東北学院榴ヶ岡高校は、キリスト教主義を建学の精神として設立された学校である。そのため、一日の始まりは礼拝から始まる。全校生徒と教職員が礼拝堂に集うのだ。
朝の礼拝だけではなく、「キリスト教」という授業もあった。その授業の課題として、学校が休みの日に近くの教会で礼拝に参加してくるという課題があった。ここでもらえる「週報」のようなものが出席した証となり、担当の先生に提出することで課題がクリアとなる。
休日に参加する礼拝には、毎回陸上部の数人で参加していた。数々のエピソードがあるが、強烈に覚えているものがある。
あれは、高1の夏。
礼拝には1時間程度で終わる回と、2時間以上かけて行う回があったと記憶している。
俺たちはこのとき、後者の回に参加した。
だが、この日俺は用事が入ってしまい、最後まで礼拝には参加できなくなってしまった。
それもあり、俺たちは何を思ったか全員でタイミングを見て途中退出をすることにした。
礼拝が始まり、讃美歌を歌い終えた。そして募金箱のような物が回されてきた。募金に協力していただける方はお願いします、といったものだった。
週報は既にもらっていたので、このタイミングで俺たちは退出を試みた。
中には時計を見て、急ぐような演技をするとのもいた。
途中退出に成功し、この日は解散した。
数日経ったある日。
いつものように、全校生徒が礼拝堂に集まり、朝の礼拝が始まった。毎朝、先生からの「お話」を聞くのだが、この日の「お話」を俺は今でも覚えている。
その日の担当の人が、話の最後に怒り口調でこんなことを話した。
「先日ある教会から、礼拝に参加していたうちの学校の生徒が、途中でぞろぞろと退出をしていったと連絡が入りました。また募金箱にアメリカのお金を入れるというふざけたことをしたと苦情が入りました。いい加減にしなさい!」
アメリカのコインについては知らないが、途中退出は間違いなく俺たちのことだ。
多分あの日の礼拝に参加していた陸上部のメンバーはドキッとしたと思う。
授業が終わり部室に集まると、もちろんその話題に。
「あれ俺たちっのことっす...」と先輩達に話したら笑ってくれたが、今思えばとんでもないことをしてしまったなと思う。
礼拝の途中で急遽1人が席を外すのは、そこまで目立たないと思うが、5.6人が一気にぞろぞろと抜けたのだから、その場に居合わせた方々は不快に思ったに違いない。
もう10年以上も経ってしまいましたが、不快に思った方々に謝罪いたします。本当に申し訳ございませんでした。ただ、一つ弁明させていただくとアメリカのコインについては私たちは本当に何も知らないので、そこだけはご理解いただければと...
俺たちは、この一件により気持ちを入れ替え、礼拝に参加したのだが...
礼拝【後編】に続きます。