メダルが欲しかった...

陸上をやったことがある人には共感してもらえると思うが、陸上で賞状をもらうことができるのは、ほんの一握りの選手だけだ。

短距離でいえば、まず決勝(上位8人)に残らないといけないし、リレーであれば4人がベストな走りをしなければいけないのでさらに難易度が高い。

今回は、それに少し関連する話を書いていく。

榴ヶ岡高校では年に一度「強歩大会」という行事がある。長距離を全員で歩行するというものだ。もちろん走るのもよしで、上位20名に入ると表彰され、メダルがもらえる。今もこの行事は行われているのか分からないが、意外と楽しかった。

俺たち陸上部は、走るのが専門ということもあり注目される。長距離のメンバーは入賞していたんじゃないかな。
ただ短距離メンバーは、この次の日に記録会があったため、顧問から「明日に支障がないように」と言われていた。そのため俺たちは、基本的には走らず、歩くことにした。

強歩大会のスタートの際、俺はふざけて思いっきりダッシュをして場を盛り上げようと思った。これに聖多も乗っかってくれて、2人で200メートルくらいを全力疾走した。
(東北学院榴ヶ岡陸上部のジャージを着て)

後ろにいた何人かが、「あいつらバカだ!」と笑ってくれた。

ゴールまでは、どのくらいの距離だったかは忘れてしまったが40キロ近い長い道のりだったと思う。そのため、俺らのペースは持つわけもなくすぐに失速していった。

すると、智也や久貝がなかなかのペースで俺と聖多を抜き去って行った。

「頑張れ〜」と思いながらゆっくり歩き始めると、さらに見覚えのある奴がハイスピードで俺の横を通って行った。それは、渉だった。

(え?)と思い二度見したが、渉だった。智也や久貝に続いてあっという間に見えなくなっていった。渉は全て完走して入賞を狙っているようだった。

もう一度言うが、明日は短距離の大会がある。この距離を全て走ったら、間違いなく明日の大会に影響が出る。自分だけが出られないならまだしも、俺と渉はリレーのメンバーである。

渉は結局、この強歩大会を完走し上位20名に入った。上位者ということで表彰され、メダルが配られた。だが、そのせいで足はボロボロになり、渉は記録会に出場できなくなった。

もう終わってしまったことはしょうがないので、渉を怒ったりはしなかったが、何でそんなに頑張ってしまったのかを聞いてみた。
すると、渉は一言。

「メダルが欲しかった...」

もう俺は笑ってしまった。
後先考えずに真っ直ぐ突き進んでいて、なんか渉も人間味があっていいなと思った。

多分渉は言葉にはしていないけど、俺に対して「ごめん」と言っているのだと解釈した。

何はともあれ、渉の分も頑張ろうと思い、翌日に備えた。

次回はこの次の日に行われた記録会について書きます!


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?