心も洗濯
夫が旅行で不在の10日間、"さあ何をしよう?"という気持ちと一緒に、"さあ何をしないでおこう?"という気持ちも同じくらい持っていた。
3度の食事の用意、洗濯、掃除、皿洗い…ああ何をサボろうか?嬉しいなあ!と心からワクワクしていたものだ。
ところがフタを開けてみると、夫を送り出してすぐに私が始めたのは掃除であった。その時初めて"なんだ、私掃除はサボりたかった訳ではなかったんだ"と気付いた。
そういえば掃除は好きである。キレイになるのは気持ちいい。夫が不在だと、
「そんな隅っこ毎日せんでもええ」
「オレが連ドラ観る間は邪魔せんといてくれ」
等の対掃除人クレームが出ないので、スムーズに掃除が出来る。結局、いつもよりスムーズに掃除出来て喜んでいる自分を発見して苦笑した。
食事の用意は徹底的にサボった…つもりだった。
朝食はちゃんと食べるから、これはサボらない。いつも通りに作る。昼食はいつも軽い。あまり昼食を食べないので、コンビニおにぎり一つで十分なのである。だから自分の分は元々作っていない。
問題は夕飯だ。
デパ地下の惣菜、寿司屋のちらし寿司…等、目新しい物を買って帰ってくるのも3日で飽きた。4日目にはついにご飯を炊き、レタスチャーハンを作成。自分だけの為に夕飯を作るなんて、産まれて初めてではなかろうか。意外にも美味しかった。
翌日はペペロンチーノを作成。美味しい。おや、作るの苦じゃないぞ、と不思議な気分だった。
こんな調子で結局炊事もしていた。
皿洗いはそもそも皿の数が少なくて済むから、簡単に終わる。皿を汚れたまま翌朝まで持ち越すのは性に合わないので、1枚でも絶対洗う。だから結局いつもと同じである。
夫のカッターシャツがないから、アイロンは休止状態になった。しかしここ数日は涼しく、アイロンもさほど苦ではない。それで自分の仕事着のアイロンを久しぶりに丁寧にした。いつもはどうせすぐまたシワになるし、と適当にして終わりにしているのだが、キチンとあてた。ハンガーにパリッとした白い仕事着を掛けると、スッキリして気持ちいい。おやおや。
仕事着やパジャマは毎日洗濯する。しかし夫の洗濯物がないので、洗濯機はスカスカである。何だか物足りない気分になる。
久しぶりに自分のシーツを洗ったり、居間のラグを洗ったりした。天気も割合良く、全て乾いてスッキリした。
こうやって見ると、何もサボっていない。あんなに"サボれるぅ!"と楽しみにしていたのに、あのワクワク感は何だったのだろう?
我ながらおかしくなってしまう。
『主婦として、しなきゃいけない』
から解放されて自発的にする家事は、義務感も責任感も感じず、ただ楽しかった。私がしたいからそうしている。全て自分だけの為の行動であった。
だからこんなに充実して、楽しくて、ウキウキするんだ、と思った。
普段から、別に強い義務感や強迫観念はなく家事をしているつもりだが、自発的ではなかった。
“ねばならない"から発生する自発的でない行動は、例えしんどさは感じていなくても、自分の心になにかしらの負荷をかけているのだな、とわかった。
と言う訳でこの期間で心の洗濯も出来て、とてもスッキリした。今、はればれした気持ちでこれを書いている。
たまにはこういうのもありだなあ。