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『大変だ病』予防法

『大変だ病』にかかると肩が凝る。視野が狭くなる。自分に厳しくしているようで、実は甘くなっている。
『大変だ病』にかかるとイライラする。ため息をつくことが増える。人を恨めしく思うことが増える。愚痴ることが多くなる。

『大変だ病』にかかると、始終「大変だ大変だ」と言って、周りの人を落ち着かない気持ちにさせる。自分も落ち着かないから、疲れを感じることが増える。ずっと言い続けていると、そのうちそんなに大変でないことまで大変だと思うようになる。大変だという思いが、大変でないことを大変にし、大変なことを更に大変にする。

『大変だ病』にかかるのは『本当の感謝』を忘れた時だ。
今朝目が開いたこと。空気が吸えること。家族におはようと言えること。卵が割れること。お湯が沸かせること。行ってらっしゃいと家族を笑顔で送り出せること。
どれも当たり前にあることではないが、これらに感謝しなければと思って感謝するのは『本当の感謝』とは違う。『本当の感謝』は、勝手に心の中に湧いてくる。「自らを律する」という耳に心地よい、自分を『感謝することが出来る立派な人間だ』と思いたい欲望を満たすだけの、自己陶酔感などは必要ない。自ずと、勝手に、自然に、自動的に湧いてくる感謝の念である。『本当の感謝』は清々しく、さっぱりしていて、顔を上げておてんとうさまにありがとうを言いたくなる気持ちである。自分がこの世に在ることが嬉しい、自分を取り巻く空気が暖かいと感じる気持ちである。

時間に余裕がないと、ついつい『大変だ病』にかかりやすくなる。
失敗を繰り返したり、体調をくずしたり、心と身体に余裕がない時もなりやすい。
生きていれば時間に追われる時もある。失敗もする。体調も崩す。人間なら当然だ。誰でも平等だ。
しかしこのことを忘れると、「どうして自分だけこんな目に」と『大変だ病』の萌芽が見えてくる。

『大変だ病』にかからないようにするにはどうしたら良いか。

まず疲れを溜めない。その為に無理なことをしない。自分の限界を超えるまで頑張らない。やむを得ず無理なことをしなければならない時は、少しでいいから自分を喜ばせるようにする。身体を休ませるのも、花を愛でるのも、美味しいおやつを食べるのも、好きな音楽を聴くのも良い。

忙しくてそんな暇はないというときは、小さな小さなことでいいから、自分が喜びそうなことを探してみる。重く垂れこめていた雲が一瞬切れて、一筋差し込んだ太陽の光。お散歩中のかわいい犬。集団で帰る小学生の群れの元気なざわめき。その気になれば、いくらでもあるものだ。

次に心の交通整理をする。

この不安はどこから来るのか。どうしてそう感じたか。心の片隅でぶるぶる震えながら暴れだす機会を伺っているかわいそうな不安君の話を聞いて、よくわかってあげる作業が必要だ。事実と感情を分ける。事実には解決策がある。感情に良い悪いはない。それを理解する。

そして自分を労わる。よく頑張っているじゃないの、えらいえらい、という。他人に言ってもらうのでは意味がない。自分がその他人の『下に入る』事になるからだ。場合によってはそれは自分を蔑む行為になりうる。だから自分で自分に言うことがどうしても必要だ。

特に何かを頑張らないと言えないと思ってはならない。今日、いつもと同じ時間に起きた。すごいじゃないか。朝食を準備できた。素晴らしい!当たり前だと思わず、一つ一つできたことを喜び、褒める。

そうすると、心はゆっくりほぐれていく。湯船に肩まで浸かった時のように、ほーっと息を吐く。その息と一緒に、不安君が外に出ていく。

予定が山積みの時ほど、更に予定が重なる。体力が落ちている時ほど、ひと踏ん張りしなければならないことが出てくる。そんな時もある。そんな時こそ、気を付けて心の交通整理をしたい。