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お子さんがベッカー型筋ジストロフィーと診断された親御さんへ


はじめに

 ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)は、出生男児1/12,000という希少疾患であり、根治療法のない難病です。遺伝子検査の浸透によって、まだ症状のない幼いお子さんでも、BMDと診断されるケースが増えてきたと聞きます。デュシャンヌ型の軽症と言われることが多いですが、症状は個人差が大きいようです。

 この記事を読まれている親御さんも、Web検索している中でいろんな情報に触れ、これからお子さんにどのような症状が出てくるのか、不安を募らせているのではないでしょうか。つい先週、私も幼い息子がBMD診断され、これまで色々と勉強してきました。Webには参考になる情報も多いですが、一方で、間違った情報が載っているケースも見かけました(デュシャンヌ型と混同して書かれている等)。そこで本記事では、私が参考になった情報ソースをまとめておきたいと思います。今後、お子さんがBMD診断された親御さんたちにとって、少しでも参考になれば幸いです。

 なお、個人的な医療情報との向き合い方としては、エビデンス情報(医学研究論文等)、ナラティブ情報(当事者・家族等の声)の2つをバランスよく当たることを意識しています。「片方の情報ばかり見ていて、不安のループに陥っていないか?」などと自問自答しながら情報と向き合っています。また、コミュニティへの参加も重要だと思っています。特に希少疾患・難病ですので、周りに相談できる人がいないことが多いです。そういう時は、当事者・家族などのコミュニティに頼ってみると良いと思います。

コミュニティ

ベッカー型筋ジストロフィー分科会

「ベッカー型筋ジストロフィー分科会(BMD分科会)」という当事者・家族・支援者のコミュニティがあります。申し込みすると、LINEコミュニティに参加でき、情報交換やお悩み相談することができます。また、オンラインでの勉強会や交流会も開催されています。私も2024年6月1日の交流会に参加しましたが、当事者の先輩方の経験談を聞いたり、親としての悩み事についてアドバイスをいただくことができました。親同士でも相談し合っている様子も印象的でした。主催者も「この分科会を通じて、当事者たちの経験や知識を、BMDと診断された子どもたちやその親御さんに役立ててもらいたい」と仰っていて感銘しました。

日本筋ジストロフィー協会

BMD分科会の大元は、「一般社団法人 日本筋ジストロフィー協会」です。こちらは年会費6000円で入会できます。会員向けに最新の情報が配信されたり、相談窓口などもあるようです。

医学情報 / エビデンス情報

中村昭則先生の講義・研究

日本でBMDを精力的に研究されているのが、中村昭則先生(国立病院機構まつもと医療センター, 脳神経内科, 神経内科部長)です。中村先生のオンライン講義動画は、BMDの基本から研究・治療の最新情報まで詳しく解説されており、大変勉強になりました。まず第一に観ておくと良いと思います。

中村先生は、BMD自然暦研究(治療薬を処方されない患者が、どのような経過をたどるかを観察・記録しておくこと)に注力されています。上記の動画でも良く分かるのですが、文章で読みたい方は下記の論文が参考になります。

PubMed:医学研究論文データベース

アメリカの国立医学図書館が運営する医学論文データベースです。

"Becker muscular dystrophy"[Title/Abstract]や、気になるエクソン("exon 48"[Title/Abstract]等)で検索すると良いです。また、自然歴研究であれば、(becker[Title/Abstract]) AND ("natural history"[Title/Abstract])と検索すると、中村先生の論文や海外の研究もヒットします。

個別の論文は、下図のように読むことができます。まず①Abstractを読んで要点を掴むと良いです。より詳細を知りたければ、②FULL TEXT LINKSから全文を読むことができます。気になるエクソン欠失・変異の患者の症状といった具体的なデータは、全文に書いてあることがあるので参考になります。

PubMed検索例

eDystrophin

筋ジストロフィーについて、遺伝子の欠失箇所と関連情報(出現頻度、タンパク質構造の変化、症状等)がまとまっているwebサイトで、フランスの研究機関で運営されています。最終更新は2014年なので古いですが、タンパク質構造など勉強になりました。

エクソン45-47欠失した場合のタンパク質構造

MD Frontier

メディカルレビュー社が出版している筋ジストロフィーに特化した医学雑誌です。最新号である2023年11月号を読んだのですが、中村先生の記事がありました。勉強になりましたが、上述した講演動画や論文の内容と被っているところは多かったです。2022年7月号からBMDの特集シリーズが始まっているので、一応、バックナンバーとこれから発行されるものは購読してみようと考えています。

https://publish.m-review.co.jp/magazine/id/111

当事者の情報発信 / ナラティブ情報

BMD当事者である鳥越勝さんのYouTubeはとても参考になりますし、元気をいただきました。下記の動画は、鳥越さん自身へのインタビューと、BMD当事者の方々へのインタビューになります。

さいごに

何か気になることがあれば、X(Twitter)のDM等でお気軽にご連絡ください。一緒にBMDについて向き合っていきましょう!