【孫子の兵法・その47】 虚を攻めるというのは、決して卑怯なやり方ではない<試読版>
原理原則に基づいた正法で基盤を整え、現場では奇法を存分に使って臨機即応に動くという在り方は、経営や仕事にも置き換えられます。
まず定石通りの基本(正法)を身に付け、それから現場の対応力(奇法)を養うという順序は、「物作り、設計、料理、治療、カウンセリング」など、殆どの分野で踏んでいることです。武道も、基本をしっかり稽古し、定石通りの攻撃法が身に付いてから応用技に進みます。
虚を攻めるのは、決して卑怯なやり方ではない
奇法は敵の虚である搦め手や側面への攻撃法ですが、虚を攻めるというのは決して卑怯なやり方ではありません。
虚には手薄なところという意味があります。社会に不足しているところ、世の中が困っているところ、世間が見向きもしないところ、人の嫌がるところなどに対応するのも奇法となるのです。私益膨張資本主義から公益永続資本主義への転換が起こっている今、公益となるところに虚を見出すことは、とても重要な経営姿勢となるでしょう。
「正法で合戦し、奇法で勝つ」とは?
孫子のこの言葉は、正法を疎かにした戦いも、奇法を使えぬ戦いも、どちらもダメだということを言おうとしていたのです。奇法のみでは相手の所々に攻め込んだだけの散発戦で終わりますし、正法のみでは敵を崩す突破口を作れません。
実際に勝利するためには、奇法が必要である
孫子は「巧く奇法を使う者は、窮まり無きこと天地のようであり、尽きぬこと揚子江や黄河のようである。それは終わってはまた始まる日月や、去ってはまた生ずる四季と同じだ」と教えました。
奇法を練るときに湧き出る知恵は、
天地のように終わることが無く
大河の流れのように無尽蔵であり
繰り返し昇る太陽や月のように熱量に満ちており
繰り返し循環する春夏秋冬の巡りと同様に途切れることが無い
というのです。
こうして、正法と共に知恵に満ちた奇法を駆使するから「敵軍の攻撃を受けても決して負けない」のであり、「兵力を投入するのに、石を卵に投げ込むかのよう」になって勝利していけるのです。
この奇法を練る心得として、音楽なら5つの音階、絵画なら5つの基本色、料理なら5つの味しかないのに、それらを組み合わせれば、いくらでも作曲し作画し調理出来るということを例に出しています。聞き尽くせず、観尽くせず、味わい尽くせないと。
5つの音階は「五音」と言い、宮(きゅう)・商(しょう)・角(かく)・徴(ち)・羽(う)
5つの色は「五色」と言い、青・赤・黄・白・黒
5つの味は「五味」と言い、辛(しん)・酸(さん)・鹹(かん)・甘(かん)・苦(く)となります
では、戦いではどうかというと、基本は「正攻法と奇攻法に過ぎないが、その変化(の多さ)は窮め尽く」せず、「正攻法と奇攻法が相互に生かされ合うことは、円環の端が無いのと同じ」であるとのこと。
攻め方には正法と奇法の二つしかないが、組み合わせは無限にあり、その生かされ方は円環のように循環して尽きることが無いのです。但し、無尽蔵であれば窮め尽くせる者はいないことになるだろうから、「一体誰が、これをよく窮められようか」と孫子は嘆息しています。
以上をまとめると…
堂々とした正法を基本にしつつも、
局地戦では奇法で虚を突き、
その奇法も、大局が観えていて、核心を掴んでおり、
流れを読んでいてこそ効果を生むということになるでしょう。
繰り返しますが、定石通りの攻撃と奇襲攻撃、これらを巧みに組み合わせよというわけです。(続く)
🔥すべては、勝利のために🔥
●あらゆる物事には、「盛衰の循環」がある。
東洋思想の根本原理である陰陽論は、あらゆる物事に「盛衰の循環」があることを教えています。陰極まれば陽に転じ、陽極まれば陰に転じるというもので、活動は必ず波を描きます。
陰陽循環を元に「流れを読む」ことは、指導者に必須のものの見方です。
それを教えている大事な東洋思想が「孫子の兵法」です。
そこには、流れを読み、流れに逆らわないで成功と勝利を収めるための秘訣が説かれています。
東西文明が交代期にある今、国際政治も会社経営の現場も、鎬(しのぎ)を削る戦いの場となっています。食うか食われるかの陣取り合戦が起こっているのが、世界の現実なのです。
●戦いの現場や現実から、絶対に目を背けてはいけない。
必要なことは、その厳しい現実から逃げることなく、巻き込まれて翻弄されることもなく、「戦いの現場から、如何にして進化と成長のエネルギーを吸収するか」です。そのための考え方と行い方を、きちんと示している兵法書が『孫子』なのです。
●孫子は、人生の指標となる哲学書でもある。
人生も、天分や天性を生かして、勝利し成功しなければ意味がありません。
これから皆さんと一緒に、激動の時代を生き抜くための「東洋の智恵」を、共に学び、共に体得し、実践して行きましょう!
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世話人の入江元太さんが先日の講義を下記のようにまとめてくださいました!(ここから)
◆令和7年度 経世志塾~日本の針路と国家百年の計~
1.文明交代の時代背景
文明は東洋と西洋が約800年ごとに交代し、現在(1975年~2075年)は転換期にある。
特に2025年~2050年が交代のピーク(世界史的激変期)であり、これに伴い民族移動や政治的・社会的混乱が予想される。
2.東西文明の交代サイクル
西洋文明:ギリシャ・ローマから始まり、中世、ルネサンス、産業革命を経て近代化。
東洋文明:中国、インド、西アジアを中心に波を形成。日本は独自の縄文時代から1万年以上の歴史を持つ。
文明は「生命体」のように誕生、成長、衰退、再生を繰り返す。
3.日本の使命
日本は世界最古級の「基底文化」を持ち、物質と精神を分けずに統合的に考える「物心一如」の価値観を伝える役割がある。
世界が行き詰まった際、新たな文明モデルを提示し、精神的・社会的な再構築をリードする可能性を持つ。
4.新しい社会秩序の提案
「人間進化型都市」や「お金のいらない社会」を目指す構想。
これは従来の経済成長モデルを超えた、持続可能な生活圏の構築を意図。
具体例として、水道管の老朽化問題に対応するため、地域の雨水を蓄えるシステムや、台風エネルギーの活用といった新しいインフラのアイデアが挙げられる。
5.世界の現状と日本の対応
アメリカやヨーロッパの力が衰退し、アジアが生産力・金融力を中心に台頭。世界の不安定さが増す中、特に民族移動や移民問題が課題として浮上。日本もその影響を受ける可能性が高い。
防衛力や政策を強化しつつ、国内外での役割を再定義する必要がある。
6.個人の役割
文明転換期の中で個々人が果たすべき役割を明確にし、行動を起こす。
単なる学びの場ではなく、日本再生と世界貢献を目指す行動の場としての意識を持つ。
次回案内はこちらです。令和7年度 経世志塾~日本の針路と国家百年の計~
(ここまで)入江さん、ありがとお~ございます!
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東西文明が交代期にある今、国際政治も会社経営の現場も、鎬(しのぎ)を削る戦いの場となっています。食うか食われるかの陣取り合戦が起こっている…
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