職人が生み出すノートは、星空から紡がれる(Endpaperさん)
こんにちは。
今回は名古屋市中区大須にてセミオーダーでハードカバーノートを作っている「Endpaper」の石黒浩さんにお話をお伺いしました。
ハードカバーノートとは、硬い表紙で覆われたノートのこと。
わかりやすいのは、本屋で売っているハードカバーの本。
その本のようにしっかりした装丁のノートです。
お話を聞いて、セミオーダーのハードカバーノートは、言葉を記すことが楽しくなる作品だと感じました。
「Endpepar」さんならではの味わいについてもご紹介します。
>目次
1.「Endpaper」というお店
2.ハードカバーノートは直筆の「本」
3.職人が生み出すノートは、星空から紡がれる
4.使い倒すにはシンプルな方がいい
5.きっかけは、飛び出る筆箱
6.将来の夢は、ひっそりと
◆まとめ
ありがとうのご挨拶
1.「Endpaper」というお店
「Endpaper」は名古屋上前津駅から徒歩4分、大須アパートの2階にありました。
※令和1年12月に大須アパートからともしびアパートに移転しました。
移転後レポはこちら。
"Endpaper"とは本やハードカバーノートの中の紙と表紙をつなぐ見返しのこと。
見返しのように、大切な存在になりたい。
そんな気持ちを籠めて店の名前を決めました。
「Endpaper」では自分で選んだ素材を使って、その場でハードカバーのノートを作ってもらえます。
制作時間は15分〜30分ほど。
日を置けばお気に入りの文庫本もハードカバーにすることも可能です。
詳しい過程は一連のツイートをご覧ください。
お気に入りの生地の持ち込みも可能です。その場合、
①失敗が全くないとは言い切れないので、それを理解した上で
②加工のために仕上がりに日数がかかるので余裕を持って、
③生地の質感にもよるので一度相談をして
から製作をします。
<価格>
※移転後レポートをご覧ください。
2.ハードカバーノートは直筆の「本」
「ハードカバーノートは、ノートというより、本なんじゃないかなと思います。
表紙も丈夫なので、自分で書いたものを残していくにはハードカバーノートはぴったりです」
そう語る石黒さん。
近くでは、作りたてのハードカバーノートが入った紙袋をのぞき込んで、2人のお客さんがはしゃいでいました。
「やばい、やばい!」
「めっちゃかわいい!」
「いつ使い始めよう!」
いつ使い始めようか迷ってしまうほど大切に思えるのは、手で作ってもらった本だから。
書き終わった後も大切な読み物になる。
ハードカバーノートは、書いたことを特別に変える力があります。
セミオーダー形式にした想いについては、こう話します。
「こちらからこれがいいと押し付けるのではなく、本当にお客様が自分の好きなものを選んで組み合わせてくれたら。
決められないと迷いながらも選んでくれるのがいいと思っています」
大切にしたいけどたくさん使いたい。
何かを新たに書き記そう、そして丁寧に扱おうと自然と思えます。
3.職人が生み出すノートは、星空から紡がれる
素材についても厳選を重ねたという石黒さん。
そこには他では真似できない思い入れがありました。
「まず、中の紙が4種類ありますが、これは2つの基準で選びました」
①パイロット万年筆のブルーブラックのインクで書きやすく、裏抜けしないもの
②四六判の連量(1000枚あたりの重量)が70kg以下のもの
「パイロット万年筆のブルーブラックは、僕が愛用しているものです。
僕は万年筆と同じメーカーのインクを使います。
なぜなら、それが一番万年筆の性能を引き出せると思っているからです。
だから、万年筆もインクもパイロット製で、色はブルーブラックが良かった。
この条件で、インクが裏に写らないものを探しました」
「さらに、ページをめくったりするのに、あまり厚い紙は向いていないと思いました。
その境目が、四六判の連量が70kg以下というものです」
石黒さんは来る日も来る日もお店に置く紙を探し、現在4種類にまで厳選しました。
キャサリン
エアメールボンド(ホワイト)
エアメールボンド(ナチュラル)
バンクペーパー
書き味も良く、裏写りもせず、ページもめくりやすい。
ノートの紙としては最適です。
「次に、見返しですが、これは“新・星物語”という種類を使っています。
星屑のように銀を散りばめたこの紙に一目ぼれしました」
そして、そこから連想して表紙を選びます。
「表紙は2種類の紙を扱っているのですが、星から夜空を連想して、そこから"かぐや"というシリーズの紙を表紙にすることに決めました。
かぐや姫からさらに着物を連想して、"みやぎぬ"との二種類で展開することにしました」
「また、あひろ屋さんの手ぬぐいは、デザインだけでなく、目の細かい生地で手触りも柔らかいところが気に入っています。僕がいちばん好きな手ぬぐいです。」
さらに、レザーライク(革のような)の合成語「レザック16」16色も、表紙のレパートリーに。
「平和紙業さんから、紙のサンプルをもらって試作を繰り返していた時に、これだと思ったのがレザックでした。
表紙としては薄手なので、今までは避けていた部分もありました。
ですが、いざ表紙にしてみたら、予想以上の風合いの良さに使用を決めました。
レザックシリーズは歴史のある紙で、名前の後ろについている数字が年数を表しています。例えば、レザック16は2016年。レザック66は1966年から作られています」
ざらざらとして、手触りもよい。
まるで紙とは思えない、革製品のような味わいのある風合いです。
ぜひ店頭に行って実際にご覧ください。
好きだからこそおすすめしたい。
「Endpaper」さんの、ハードカバーノートには、特別な想いが詰まっています。
4.使い倒すにはシンプルな方がいい
自他ともに認める凝り性な石黒さんは、仕事道具にも気を配っています。
カッターは木製の持ち手が手にぴったりとなじむ「工房 楔」さんのもの。
はさみは、銅でつくられ、フォルムも美しい「TAjiKA」さんを使っています。
「長く使うならシンプルで、昔から使われているものがいい。
「TAjiKA」さんのはさみは、刃を研ぎ直してもらえるし、長く使うには最適です」
ハードカバーノートも、昔から使われているシンプルなものだからこそ、長く使っていけるもの。
飽きが来ず、使えば使うほどに風合いを増します。
5.きっかけは、飛び出る筆箱
石黒さんは昔から、ものを作ることと、文房具が大好きでした。
「僕は昭和43年生まれなんですが、この年代は小学生から中学生にかけて、多機能筆箱がブームでした。
ボタンを押すと鉛筆が飛び出てきたり、ゾウが踏んでも壊れないという筆箱があったり。
それが今思うと、文房具を好きになるきっかけなんでしょうね」
と、はにかみ笑い。
色々なノートを使ううちに、既製品のノートの、好きなところと変えたいところが見えてきます。
それがきっかけで、自分の理想のノートを作りたいと思うようになりました。
そして、製本の「美篶堂(みすずどう)」さんと出会います。
美篶堂さんが開校している「本づくり学校」に入学し、2015年から3年間、製本の技術を学びました。
大須アパートとのご縁もあり、2018年11月に「Endpaper」を立ち上げます。
6.将来の夢は、ひっそりと
好きな食べ物は牛肉。
美術館に行って茶器などを見るのが好き。
休日は喫茶店に行ってコーヒーを飲んでリフレッシュ。
そんな石黒さんに将来の夢は「自分のやりたいことで、生活していく。そんな生活が続けていけたらいいなと思います」となんともひかえめ。
凝り性だけど、押し付けず。
お話する時は笑顔でも、作業中は難しそうなお顔。
カメラを向けるとカメラ目線が照れてしまって、すぐ口をへの字になってしまう。
手先は器用だけど、どこか不器用で、くしゃっとした笑顔があたたかい。
そんな感想を、石黒さんとお話して持ちました。
お店としての目標は、おいしいコーヒーが飲めて、ワークショップもできる、こだわりいっぱいのお店を持つこと。
夢を叶えるために、こつこつと、今日もハードカバーノートを作ります。
◆まとめ
石黒さんらしい、あたたかみと気配りが詰まった「Endpaper」のハードカバーノート。
丁寧に選ばれた素材と、創るまでの工程を見ていると、思わず笑顔があふれてきます。出来上がりを見た瞬間、喜びと大切に使いたいという想いでいっぱいになりました。作ってもらったハードカバーノートに、ものを書く時、その行為が素敵なことに思えてわくわくします。
「Endpaper」さんのハードカバーノートは、紙に書くことがもっと楽しくなる本です。
「Endpaper」さんはtwitterもやっています。通販や、ワークショップにも対応してくれるそうなので、ぜひお気軽に相談してみて下さい。
◆Twitterでのご依頼:通販、ワークショップなど
◆mailでのご依頼:通販、ワークショップなど
endpaper1496@yahoo.ne.jp
◆店舗情報
「Endpaper」
移転前
〒460-0011 名古屋市中区大須3-41-15 大須アパート2階
営業時間 11:00~19:00 水曜日定休
※令和1年12月に大須のともしびアパートに移転しております。
移転に伴い、営業時間などの変更もあるということです。
場所、営業時間などの詳細はEndpaperさんのtwitterをご覧ください。
移転後レポートはこちら。
尚、ノートの表紙として使われている「あひろ屋」さんの手ぬぐいは、手製本に関する商用利用の許可を頂いて利用しています。
「あひろ屋」さんのホームページはこちら。
ありがとうのご挨拶
ここまで読んで下さり、ありがとうございました。
このように、「自分の想いがこもったモノを作っている人」のストーリーを不定期に紹介します。
また、自分の話も記事にまとめてほしい!この人のお話が聞きたい!というご依頼があれば、コメントやtwitterのDMからお声がけください。
お仕事のご依頼の詳細はこちら。
さて、最後に参考文献と、石黒さんのおすすめの一冊をご紹介します。
「Ednpaper」石黒さんのおすすめの1冊
ものに対する接し方、生きていくにあたって気に留めておかないといけない大事なことが書いてある本です。
参考文献
製本の仕方だけでなく、印刷博物館やアートブックフェアなど本に関するコラムもあり、読み物としても十分楽しめます。
ありがとうございます。