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『ある男』(著:平野啓一郎)〜あなたが愛した相手は誰なのか?相手の何を愛したのか?そんな問いが投げかけられる〜

Audibleでおもしろそうな本を検索していたところ本書に出会いました。

平野さんの作品は初めて読んだのですが、さすが芥川賞受賞者だけあって、完成度が高いです。

レビューも高評価ですし、2022年11月に映画が公開されています。


あらすじは、結婚した相手が別人の名前と過去を騙り、完全にその別人になりすまして生きていたことが相手の死後に判明したことで、なりすまされた別人が誰なのか、その結婚した相手が誰なのか、その真相に迫っていく、というものです。


普通に考えれば、たとえば自分の恋人が過去を騙って付き合っていることがわかったとしたら、まぁ、嘘の程度にもよりますが、基本は判明した時点でアウトですよね。

すぐに別れると思います。

でも、本書のように、もう好きになってしまっていたら?愛してしまっていたら?

簡単には別れられないだろうな。


嘘をついた理由を聞きますし、よほどのことがあって嘘をついたんだろうなって相手のことを信じたいですよね。

で、事情によっては過去を騙ったことを許して、その後も付き合うんじゃないかな。


本書はその相手がすでに死んでしまっているので問い詰めることもできない、という状況です。

そうなると、自分はいったい誰のことを愛してたんだろう?と訳がわからなくなります。

信じたいけど信じられない、信じられないけど信じたい…

そんなジレンマから抜け出せません。


でも、最後は、一緒に過ごした日々が証明してくれるんじゃなかろうか。

どこかの誰かを愛したわけじゃなく、目の前のあなたを愛してるんだと。

今触れることができるあなた、声を聞くことができるあなた、匂いを感じるあなたを。


行き着くところはそんなところじゃないかと感じた読後です。


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