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『東京藝大ものがたり』(著:あららぎ菜名)〜挫折と葛藤を乗り越えた先に見えた景色とは?芸術に縁がない私の心も打たれました。〜
漫画家であり、イラストレーターでもある、あららぎ菜名さんの作品。
もともとは、ネット記事で特集されていたのが出会いです。
作者が3浪を経て東京藝大に合格するまでの軌跡を描いています。
芸大進学のための浪人の世界というのは、はやみの周りには芸大に行きたいという人はいなかったので、なかなかに未知のものです。
でもめちゃくちゃおもしろかったです!
試験内容自体が独特で、「デッサン」とか「色彩構成」とか「立体構成」とか、およそ私が経験した受験時代には聞きなれない言葉が飛び交います。
というか、「デッサン」以外の言葉は本書が初耳。
1浪目、2浪目と、芸大試験の予備校に通う学費を稼ぐために1年の前半は主にバイトで過ごし、後半から予備校に通うという厳しい浪人生活を過ごします。
印象的だったのは3浪目。
受かるかどうかわからない先の見えなさとか、バイトしなきゃいけないこととか、友達が先に受かっちゃったこととか、いろんな精神的なプレッシャーの果てに、多くを手放そうと決意します。
「決意」というほど確かなものじゃなく、やむをえずそうなってしまった、そうせざるをえなかった、と言ったほうが正しいかもです。
でも…
3浪目で作者が見た景色がきれいなんですよ。
門外漢の私から見てもすごく伝わってくるものがあるうつくしい景色なんです。
努力の果てにたどり着いた景色というか。
最後まであきらめなかった人にしか見えない景色なのかもしれません。
それでも努力は必ず報われるなんて軽々しくは言えないですけどね。
ただ少なくとも、本書を読めば、努力の先にあるものを感じることはできるんじゃないかな。
ふだん芸術に縁遠い人も全然おもしろい。
むしろこの世界の見方にはいろんな角度があるんだな、と感覚が広がっていくと思います。
まぁ、とにかくおもしろいのでぜひ。
noteで読めますし、Amazonでも読めます。
(Kindle Unlimitedの対象)