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ならないで


壁がボロボロになるって聞いてた。

よく吐くって聞いてた。

トイレ大変だって聞いてた。

コードとかカーテンとか気をつけてって聞いてた。

犬と違って言うこと聞かないし、叱っても意味ないって聞いてた。


それに、何より猫なんて飼ったことがない。

「一つの命を受け入れるための覚悟」の大きさ如何が分からず、

たじろいでいた。


実際、爪とぎを指差せばそっちでといでくれる。

まだ子猫だからか、全然吐かない。

トイレも失敗しない。

コードもカーテンも今のところ大きな被害は出ていない。

ゲージに入って欲しいと思う時には、

先回りして中に入ってお座りして見上げてる。


実際、聞いてたのと全然違う。

「覚悟」なんて大袈裟なくらい、ただやさしさだけを享受する毎日。


よくある「バカな子ほどかわいい」とか、

「不良、手がかかる子ほど構いたくなる」とか、

そんなんじゃなくて。

物足りないとか、そんなんでもなくて。


『況や悪人をや』


手がかからなくても十二分にかわいい。

それでもその姿は、どこか他人に思えなくて。

だから。


一つだけお願い。

「いい子」にだけはならないで。


ちゃんと受け入れるための覚悟をしたんだよ。

思いっきり、君の思うがまま、自由に生きて。

君ののびやかな姿を見て、幸福の意味を知るよ。


ねぇ、おかゆ。






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