榛名山のはるなさん 7話

第7話 伝説と週末は、終わりを告げ始まりへ

スタート地点にいるケンスケに連絡が入る。
「勝ったのは、、、ギャランです、、」

ケンスケは悔しさいっぱいの気持ちを抑えながら、サンライズのメンバー、ギャラリーに聞こえるように言った。

「今連絡が入った!!今回のバトル、、、勝ったのはギャランだ!!!」

ギャラリーが一気に湧いた。

「うえええええ!!!嘘だろ!?あの涼音さんが!?ギャランの野郎が何か汚ねぇ手使ったんじゃ!?いやいやバカヤロウ、あんなに可愛い子がそんな事やるわけねーだろ!?」

ギャラリーは思い思いの気持ちを吐き出す。涼音が負けてにわかには信じられない者、スタート地点ではるなを見てファンになってしまった者。

下をうつむき、悔しさをこらえるケンスケにサンライズのメンバーが近づく。
「何も言わないでくれ、、今は、、。次は、、次こそは絶対に勝つ。この悔しさ、、絶対忘れねぇぞ、、、はるな。次のバトルで必ず俺が勝つ!!」
ケンスケは拳を握りしめ暗闇の向こう側を見つめた。

「ぺぺぐうううぅぅぅぅーーん!!!はるなたーん!!!はるなたんが勝ったでござるよおおぉぉぉぉ!!」

ナイトウが周囲の目もはばからずビクビクと痙攣しながら絶叫する。
なぜかタムラは号泣していた。

「くううぅぅぅ!!!もう辛抱たまらん!!!同じ女子として憧れてしまうでござるよおおおお!!!」

ナイトウとタムラは泣きすぎてぐしゃぐしゃになった顔を見合わせる。
「タムラ氏ぃぃぃ!!」
「ナイトウ氏ぃぃぃぃ!!」

そして、定番のセリフ。

「高まるでござるよおおおおおおおぉぉぉーーっっっ!!!!」

2人と他ギャラリーの心の溝は、もはや修復不可能なようだった。

ゴール地点。ギャラリーは2人が車から降りてくるのを今か今かと待ちわびていた。
テクニックは最上級、ルックスも2人共に上級、もうこの2人は榛名山のアイドルである。

涼音はテレビだけでなく、女性雑誌にもいつも出ているみんなに好かれやすいスーパーアイドルである事は勿論だが、はるなは涼音とは正反対。落ち着いてはいるが、内に熱い者を秘める。
そしてクールな見た目とは裏腹にとてつもなく攻めた走り。そしてスタート地点でキツい表情をしていたと思ったら一瞬にして雰囲気を変えてしまうほどの屈託の無い笑顔。

車いじりか、走りに行くぐらいで女性となかなか縁のない男子達は、大体心を奪われていた。

今日のバトルも勿論ギャラリーの誰かがリアルタイムでSNSに状況をアップしているだろう。
今後、週末の榛名山は2人を見たさに、にわかの走り屋やギャラリーが増えることは間違いない。

涼音、はるながほとんど同時に車から降りる。

向かい合う二人。先に口を開いたのは涼音だった。
「良い勝負だったね。負けちゃって本当にすんごく悔しい、、でも、ありがとう。はるなちゃんのおかげで忘れてた気持ち、、思い出した。」

清々しい表情で涼音は話す。
そう、終盤だったが何もかも関係なく本当に純粋に涼音は走ることが出来ていた。
涼音は地位に怯えて安定きた走りを捨て、最初に走り出したキラメキを心に取り戻し、挑戦していく楽しさを思い出したのだ。

清々しい表情の涼音と違って、はるなの表情は疲労が見られた。それでも笑顔で涼音を見つめる。
「恥ずいこと平気で言うんだなー芸能人って。でも、、めっちゃ絵になるね。、、涼音さん本当速かった。私も本当に全開だった。今の私が出来る精一杯だったよ。」

笑顔で見つめ合う2人。
「車、、、ボロボロになっちゃったね。少ししか見えなかったけど、はるなちゃんにはあのライン見えてたの?」

「うん、、、でも賭けでもあったかな、、一応安全マージンはギリギリでとってたけど、走行不能になるのはちょっと覚悟してたかも、、」

「すごいね、、あのラインで行こうとしてるヒト見たことなかったよ!それにお友達にもなれたし、これからもよろしくね!また一緒に走ろ!あ、昼間とかも暇な時は遊ぼうね。」
涼音はとびきりの笑顔ではるなの手を握る。
女子同士だがはるなは顔が赤くなってしまう。
「うぅ、面と向かってお友達とか言われると恥ずい、、でも芸能人と友達になれるなんてちょっと夢みたい。」
はるなは気恥ずかしそうに話す。

「いやいや、確かにそういう仕事してるけどはるなちゃんと同じ普通の女の子だし。気軽に誘ってよ!」
涼音ははるなの手を握るとクルッとギャラリーの方を向く。

「みんな〜!見てたと思うけど、今回の勝負!ギャランの勝ち!!ごめん、負けちゃった!」

サンライズのメンバーがはるなと涼音に歩み寄る。メンバーの1人が涼音に話しかける。
「涼音さん、、負けた事は悔しいけど、、素晴らしい走りでした。はるなさんも本当にすごかったです。お2人共お疲れ様でした!」

「「お2人共お疲れ様でしたっ!!!」」

サンライズのメンバー全員で頭を下げながら挨拶する。その声にビクッと体を震わせるはるな。
「えぇ〜、何この体育会系のノリ、、走り屋ってみんなこんな感じなの?」
はるなは口元が引きつっている。

「んーウチはちょっと特別かなぁ、、みんな〜はるなちゃんは今日から私のお友達だから榛名山走りに来ても優しくしてあげてね」

「しゃぁーっす!!」

涼音は思い出したかのようにはるなの方を向く。
「そうだ、ずっと気になってたんだけど!はるなちゃんはそのハンパじゃないドライブテクニックをどうやってその若さで覚えたの??
榛名山の走り方もすごく分かってるみたいだったし!
その割には私達全然見かけたことなかったし!てゆーか、私がこんな可愛い走り屋をまず見逃さないし!!それに車!!どんな感じにチューニングしてるの!?チューナーさんがいるの!?なんでエボじゃなくてギャランなの!?」

はるなは質問の連続でアワアワしてしまっていた。

「えと、、、えっと、、わわっ」

はるなの疲労は限界だった。フラフラっと体勢を崩し、地面に倒れそうになる。誰も間に合わない!そう思ったその時、倒れこみそうになったはるなを素速く横から飛び出し、支える人物がいた。そしてギャラリーに向かって話す。

「悪いね。みんな、このくらいにしてやっといてくれないかな?」

そっと優しい笑顔で話しに入ってきたのははやまるだった。

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