1.3 「チーム」ではたらく”五蔵六腑”
今日は、「五蔵六腑」は個々の臓器というよりは、相互作用と調和維持という「概念」ですよ。というお話し。
1. なぜ唐突に五蔵六腑?
「五蔵六腑にしみわたる」という言葉があります。
気分良くおいしいお酒を飲んだときなど、最初の一口目で、五蔵六腑という言葉の意味を知らなくても、自然に出てきたりする言葉ですね。(^^)
食べものでも、心から「おいしい!」と感謝して食べたときの「幸福感」とか、体に悪いと知りつつ、誘惑に負けたあとの「罪悪感」。
これはすべて、体内の五蔵六腑と私たちの心が連携して反応しあっている証です。
飲んだり食べたりしたときの心理と、食べたものへの体の反応はいつも、ほぼ同時に体全体で起こっていますよ。
この「ほぼ同時、体全体で」というのミソで、これこそがまさに五臓六腑ということなのです。
この考え方は、固定記事の「生命の養いかた」の根底にある考え方の中でも特に重要な部分なので、ちょっと唐突ですが、記事にしました。
2. 五蔵六腑の誤解
まず「五臓六腑」という言葉で誤解されがちなのは、おおざっぱに、
五蔵は「心臓」、「肺臓」、「肝臓」、「腎臓」、「脾臓」。
六腑は、「胃」、「小腸」、「大腸」、「膀胱」、「胆嚢」、「三焦」。
というように、解剖学的な実際の臓器に当てはめようとする考え方。
この認識は間違ってはいないとは思いますが、病院の内科、泌尿器科、呼吸器科みたいに専門的で局所的になっていきがちですね。
五蔵六腑とは、個々の臓器のことだけを示す言葉ではなく、命が終わるまで間断なく続く、「循環と調和の営み」を「総称」している言葉と理解した方がわかりやすいかもしれません。
五蔵の臓が、「臓」という漢字ではなく「蔵」なのは、そういうことなのかなとも思います。
3. 「チーム」ではたらく”五蔵六腑”
「五蔵六腑」という言葉は、今から2200年くらい前の中国、前漢の時代に編纂された、中国最古の医学書「黄帝内経」に初めて出てくるそうです。
この黄帝内経は、黄帝内経が編纂されるよりもさらに2000年以上前の、古代中国に端を発する自然哲学の思想で、「陰陽五行思想」という思想で貫かれています。
陰陽五行説では、五つの要素と二つの作用を重要視しています。
五つの要素
万物は「木・火・土・金・水」」の5種類の元素からなり、
二つの作用は、
作用1:相生
個々の要素は、自分の次の要素を補い、強める作用をする。
作用2:相剋
個々の要素は、自分の次の次の要素を抑え、弱める作用をする。
それらが「互いに強めたり弱めたり、増やしたり減らしたり、陰(マイナス)と陽(プラス)にバランスを取り合いながら、その生滅盛衰によって天地万物が変化し、循環する」と唱えられています。
五蔵
「蔵」とは、現代医学の解剖学な具体的臓器そのものではなく、「精・気・血を「備蓄」する蔵(くら)」の働きをする各機能の総称。
陰陽で言えば「陰」にあたり、肝・心・脾・肺・腎の五つの蔵から成っています。
※「精・気・血」と五蔵のそれぞれの蔵については、また別の投稿で詳しくお話ししますね。
六腑
「腑(ふ)」とは、蔵(ぞう)とは異なり、「精・気・血を『動かす』」働きをする各機能の総称。
陰陽で言えば「陽」にあたり、胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦の六つの腑から成っています。
五蔵六腑を上の図にあてはめると、
でも、実際の体は、上の図のように、五蔵と六腑は別々に関係しているのでなく、下の図のようにすべてが連結され、それぞれが相生・相剋の作用を及ぼし合いながら命の調和を保っていると考えるのが妥当でしょう。
そして、この五蔵六腑の営みは、地球の営み、季節の移り変わり、一日の時間帯、人間関係、毎日食べるもの。ありとあらゆる私たちを取り囲む環境の影響を受けて、私たちの命が尽きるまで、片時も休むことなく続いているのです。
日に一度は、自分の体に心を向けて、労りと感謝の言葉かけてあげましょう。きっと五蔵六腑が喜んでくれますよ。(^^)
おわり
おまけ
中国最古の医学書『黄帝内経』
『|黄帝内経《こうていだいきょう》』
今から2200年くらい前の中国、前漢の時代に編纂された、中国最古の医学書。
黄帝内経は、それが編纂されるさらに2000年前、つまり今から4000年前の中国古代の君主、|黄帝《こうてい》と、黄帝を囲む幾人かの学者たちとの日常の質疑がまとめられたものです。
4000年という気の遠くなるような「時間」のフィルターを通して、真実・本質といったものが残された事実に、驚きと感謝の気持ちでいっぱいになります。対症療法とか投薬とか、そういうことにあまりに慣れすぎ、依存している現代に生きる私たちのほんの数十年とはスケールが違いますね。