地方移住019 阪神淡路大震災から30年 主な都市の「震度6弱以上」の発生確率
災害で親しい人を亡くされた皆さんにとって、その悲しみは何年経っても消えることはありません。あの地震から30年と1週間がすぎた今も、皆さんそれまでと変わらいない思いを抱き日々をすごされている---私のこれまでの被災地での取材、そして今回の神戸市の「人と防災未来センター」や「ふたば学舎」の取材を経て改めてそう思いました。しかしその6400を超す地震で失われた皆さんの尊い命を無にしないために大地震の怖さは伝えなくてはならないと思い行動しています。
KBCラジオは福岡市に本社を置く九州朝日放送(KBC)が福岡県・佐賀県に放送している民放ラジオです。電池ひとつで情報が得られるラジオは災害時に強い媒体ですが、九州朝日放送はテレビでもSNSでも災害と防災の報道に力を入れています。「アサデス。ラジオ」は月~金曜の毎朝6時30分から正午までの生放送。
このうち「ニュースここ大事 ニュースふかぼり」は、毎日午前7時35分ごろから約10分間、曜日がわりのレギュラーコメンテーターが取材・構成する特集的なコーナーで、この週の16日(木)・17日(金)は、筆者が震災から30年後の神戸市を歩いて感じたこと。ラジオをお聴きの皆さんに地震防災の意識を高めていただきたいと主な都市で大地震が発生する確率を伝えました。
以下のブログではオンエアの一部をカットしています。フルバージョンは、「KBCラジオ ポッドキャストステーション」にアップされていますのでそちらをお聴きいただければと思います。
ききてはいずれもKBCの沖繁義アナウンサーと柴田優子アナウンサー。柴田アナは新人ですが阪神淡路大震災の被災地・兵庫県南部の出身。地震が起きた日が「チームの始動日」だったJリーグ・ヴィッセル神戸の「応援ガール」を務めていました。
沖アナ)けさは阪神淡路大震災から30年。野島断層という活断層がずれて、淡路島のほか神戸市や阪神間を襲いました。柴田さん改めて被害を紹介してください。
柴田優子アナ)内閣府のまとめです。阪神淡路大震災を引き起こした兵庫県南部地震は、平成7(1995)年1月17日の早朝・午前5時46分に発生しました。地震の規模を示すマグニチュードは7.3。震源地は淡路島の北部で、神戸市の繁華街・三宮や長田区・芦屋市・西宮市などで最大震度7を記録。建物の倒壊や火災などにより6434人が亡くなり、約64万戸の住宅が全半壊・一部損壊などの被害を受けました。
◆出演者3人それぞれの「1.17」
沖 )柴田さんは兵庫県南部の出身。でも震災は生まれる前でした。この震災にどう接してきたのですか?
柴田)私の父と母はあの地震の前日に知り合っていて、被害が大きかった神戸市灘区にいた父と大阪にいた母は、当時は携帯電話もそうなかったので、もう「どうなっているかわからない」・・・それが出会いの翌日だったと聞いています。
沖 ) 大変だったんですねぇ。
柴田) 私自身は西宮市の学校に通っていたので、遠足で「防災センター」に行ったり、阪神淡路大震災で変化したこと、などを学びました。
早川)沖さんは東京で大学生でしたか?
沖 )はい。東京で下宿していて、翌日の大学のドイツ語の試験の勉強をしていました。5時46分に揺れを感じて「地震?どこ?えっ関西?」と驚いたことを覚えています。早川さんは、この地震発生時は?
早川)KBCテレビ編成部の現場で福岡市内の自宅にいました。当時の上司から「大阪の方で大地震」と電話で起こされ、「会社に行ってくれ」と出社要請がありました。とにかく「大阪で地震」というのピンときませんでした。高槻市に叔父叔母がいるので心配でした。すぐに自宅のテレビをつけたら、既に倒れた阪神高速道路の空撮が映しだされていて「これは大変!」とKBCに急ぎました。
着くと直ちに震災のようすを福岡・佐賀の視聴者の皆さんに伝えるための特別番組編成の作業が続き、その日のうちに帰宅しなかったような記憶があります。
◆神戸の街を歩いて感じたこと
沖 )早川さん、今回神戸の街を歩かれて何か感じたことは?
早川)繁華街の三ノ宮は、人通りも多く、福岡市の天神と何も変わらない。
家族連れや柴田さんと同世代の皆さんが、友だちどうしで幸せそうにショッピングを楽しんでいて、幸せそうでいい街だなあと感じました。
一方で、震災時に大火が起きた長田区の新長田駅南側の商店街は、福岡市でいえば香椎や千早の駅近くに新天町や川端通のようなアーケードつきの商店街がある感じだが、休日にしては人通りが少なく賑わいに欠けていました。
沖 )なぜですか?
早川)写真の大正筋商店街の多くは地階・1階・2階が商店街、3階以上が集合住宅という造り。集合住宅はたくさんの方が入居されているように見えましたが、商店街は空き店舗が多く半分ほどしか営業していない。これがにぎわいに欠けると感じた理由です。再開発の完了が20年以上遅れたことなどで、再開発が終わるまで待てなかった方、亡くなられた方…空き店舗になった理由はさまざまだと思うが、計画規模が大きすぎたという指摘も当たっていると感じました。ただ「震災復興」の名がつく再開発計画に被災地以外の県民や国民は反対しづらい。過疎地でも大都市でも震災からの復興は難しく長い時間がかかるものだなあと感じました。
また、新長田駅に近いの「ふたば学舎」(旧二葉小学校)では、「震災の語り部」が高齢化し、どうやって次世代につないでいくか、当時の先生と児童、その子どもたちが話し合っていました。大きな悲しみの上に生き残った皆さんが、どうやって自らの務めのバトンを引き継いでいくか、真剣に話されている姿に心打たれました。
◆J1ヴィッセル神戸の「神戸讃歌」
沖 )柴田さんはヴィッセル神戸とも縁がありますが
柴田)去年までヴィッセル神戸の「応援ガール」をしていましたが、このクラブは阪神淡路大震災の地震が起きた日が初練習の予定で、チームの始動日でした。
震災の後、スポンサーが撤退したり、成績が低迷したり、苦難に向き合っていた時代もあって、2005年に「神戸讃歌」という歌が誕生しました。いまだにこの歌を毎試合、歌っています。歌詞を紹介します。
「俺達のこの街にお前が生まれたあの日
どんなことがあっても忘れはしない。
共に傷つき、共に立ち上がり、
これからもずっと歩んでいこう
美しき港町 俺たちは守りたい
命ある限り神戸を愛したい」
早川)ふつうの応援歌と全然違うね
沖 )違うよね
柴田)まさかサッカーチームの応援歌とは思えないような歌詞をいまも毎試合歌っている。阪神淡路大震災を継承していこうと意志なんです。
◆全国地震動予測地図
沖)さて全国地震動予測地図。政府が公表している30年以内に震度6弱以上の地震が発生する確率。これは活断層が原因の地震の発生確率ですか?
早川)違います。私はこの予測地図をもとに何度かこの番組で全国の地震発生確率を紹介していますが、地震には阪神淡路大震災や福岡西方沖地震、熊本地震、去年の能登半島地震のような断層型地震と、東日本大震災を起こした地震や、高い確率で起きるといわれている南海トラフ巨大地震のようなプレート(海溝)型地震の発生確率を足し合わせた確率です。
◆水戸市は81%の確率
沖 ) やはり首都直下地震が予測されている首都圏の確率が高い?
早川)そうですね。政府の地震本部(地震調査研究推進本部)がインターネットで公開している2020年版を元に紹介します。
県庁所在地や市役所がある地点で比較すると、
30年以内に震度6弱以上の地震が起きる確率が一番高いのは
茨城県水戸市で81%(小数点以下を四捨五入。以下同じ)
千葉市が62%、さいたま市が60%と東京より高い。
東京は都庁がある西新宿で47%。
神戸市の繁華街三ノ宮は46%、
愛知県名古屋市も46%、
大阪府は大阪市役所がある中之島で30%、
これに対し、
福岡市の市役所がある天神は6%、
札幌市の市役所がある札幌市中央区は2%です。
福岡市や札幌市に比べると、
東京を始めとする首都圏や京阪神・東海の発生確率は高い。
◆西新宿で震度5弱以上が発生する確率
早川)ちなみに東京西新宿で30年以内に震度5弱以上の地震が起きる確率は
99.9%です。
柴田)99.9%。ほぼ100%ですか?
早川)はい。関東の南には、南海トラフとは別の相模トラフなど複数の大陸プレートの境目があります。また、福岡市を走る警固断層のような警戒すべき活断層も見つかっています。
都内には中央官庁の本庁舎が集まる霞が関など30年以内に震度5弱以上の地震が起きる確率が100%と予測されている場所もあります。この震度5弱は2011年3月に起きた東日本大震災では東京23区のほとんどで観測され(最大震度は5強)7人が亡くなっている「東京で死者を出した震度」です。
福岡市の天神は30年以内に震度5弱以上の地震が起きる確率は59%で、これも東京に比べると低い数字ですが、この確率が低いからといって安全とは限りません。ここが一番大事なところです。
柴田) どういうことですか?
早川)この地図は2020年が起点で、1年前の能登半島地震発生以前に作られたましたが、2024年の元日午後に起きた能登半島地震で、震度7が記録された石川県輪島市門前町で「震度6強以上」の地震が起きる確率は0.3%とこの予測地図では極めて低く発表されていましたがそこでたくさんの死者を出した地震が起きてしまったのです。福岡市は大都市の中では大きな地震の発生確率は低く、かつては「大地震がない街」と言われていました。それでも20年前の福岡西方沖地震では震度6弱の揺れに見舞われています。
沖 )能登半島地震も福岡西方沖地震も断層型の地震ですね。
早川) そう。プレート型地震は、これまで発生した履歴に科学的な知見を
加えて周期を割り出し発生確率が発表されています。
◆いつどこで起きるかわからない断層型地震
これに対し、断層型の地震はまだ政府も断層の全てを把握できていません。日本(世界)のどこにいつくるか分からない怖さがあります。それを私が痛感したのが、1年前に発生した断層型の能登半島地震です。政府は地震本部の「全国地震動予測地図」をあくまで目安として使って欲しいとしています。日本はどこでも大地震に襲われるリスクがあり、首都圏のみならず福岡県も断層型の大地震が起きるリスクはあるのでしっかりと備えてください。
◆「地方移住」と移住先の災害リスク
私は地方移住を促す発信をしていますが、長くその土地に住む検討をされる際にその地域の災害リスクを知ることは重要だと思います。東京から地方に移住してみたものの、移住先は「東京と大地震のリスクは変わらずショックだった」とならないようにしてもらいたいものです。
沖)ここまでコメンテーターの「ニュースふかぼり」でした。
私は、多くの自治体の移住定住促進のパンフレットやサイトをみていますが、大地震のリスクが高い自治体でも、そのリスクを明示していない自治体もあります。(もちろん役所の方は尋ねたら教えてくれる…はずですが)
今住んでいる地域をどうしても離れられない方もいらっしゃって、移住自体が「人生の選択肢のひとつ」ですが、私は移住先を検討する際に「政府の公式発表」であるこの「全国地震動予測地図」の活用をおすすめします。
◆移住先の「ハザードマップ」の確認を
津波や大雨による浸水・土砂災害のリスクもあります。移住先が市町村レベルまで絞られてきたら、ホームページで各自治体が公表している「ハザードマップ」を確認していただければと思います。
それではまた。