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地方移住015 Jリーグクラブが地方の街で育む「やさしい心」
趣味といえばそれまでなのですが、シーズン中、仕事がない週末の大半は全国どこかのスタジアムに出かけてJリーグを観戦しています。
★週末はJリーグの日々
福岡市に住んでいるので「推し」のアビスパ福岡のホーム「ベスト電器スタジアム」(福岡市博多区・福岡空港駅から徒歩20分)が大半なのですが、北九州市がホームのギラヴァンツ北九州、福岡都市圏の佐賀県鳥栖市にあるサガン鳥栖のホームスタジアムにも毎年応援に出かけます。
私は小学生の頃は野球帽をかぶったソフトボール少年でしたが、「ドーハの悲劇」やJリーグが発足した1993年ごろから、野球を見に行く回数よりサッカーを見に行く回数が増えた「創設以来のJリーグのサポーター」。今は「地方にはJリーグのようなプロスポーツクラブが必要だ」が持論です。
地元クラブが敵地で戦う時には相手のホームにのりこみますし、頑張っている地方のクラブや、首都圏にありながらも地域の皆さんに愛されているクラブも応援していて、その試合を見るために旅して、チケットを買ってスタンドからサッカーを楽しみ、当地のおいしいものを食べて帰っています。
今年のオフシーズンは、閉幕から1週間もしないうちに来季の試合日程が発表され、慌ただしさを感じたり、嬉しかったりですが、コメンテーターとして出演しているKBCラジオでも幾度となくJリーグを伝えています。
ただ私自身は体育の授業以外にサッカーをしたことがないので、私の出演時間には、システムや技術的なことは登場しません。来季後に控えた「シーズン移行」やクラブの経営問題、見に行った試合とその街の人や空気などを話しています。
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◆FC今治を継続取材する理由
四国の愛媛県今治市がホームタウンで、元日本代表監督の岡田武史さんが
オーナーを務めるFC今治は私が現在最注目のクラブのひとつで、
・FC今治の成功は、人口減が進む地方都市復活のモデルになる。
・Jリーグが30年近く前に掲げた「百年構想」が次のステージに進む、
と勝手に考え、数年前から取材を続けています。
今回のブログは、この試合に至るまでの自分とJリーグの物語を書いたのちに紹介したいのですが、FC今治だけでなく、Jリーグがある街に住む人たちに関して、ほっこりする体験をしたので、先に紹介させていただくことにします。
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◆「アサデス。ラジオ」で伝えるJリーグ
KBCラジオは福岡市に本社を置く九州朝日放送(KBC)が福岡県・佐賀県で放送している民放ラジオで「アサデス。ラジオ」は月~金曜の毎朝6時30分から正午まで生放送しています。
「ニュースここ大事 ニュースふかぼり」は、毎日午前7時35分ごろから約10分間、曜日がわりのレギュラーコメンテーターが取材・構成する特集的なコーナーで、この日は毎週金曜にコメンテーターを務めている筆者が「2024年のJリーグと地方」をふりかえりました。
以下のブログではオンエアの一部をカットしています。フルバージョンは、「KBCラジオ ポッドキャストステーション」にアップされていますのでそちらをお聴きいただければと思います。
オンエアは2024年12月12日(木)。この日のスタジオはKBCアナウンサーの近藤鉄太郎さんと木曜レギュラーのタレント・原直子さん。お二人とも福岡大学卒でコラムに登場する藤田直之選手の同窓です。以下、オンエアです。
近藤鉄太郎アナ)「アサデス。ラジオ」。ここからはコメンテーターのニュースふかぼり。早川さんけさは?
早川)福岡・佐賀・中四国のクラブを中心に今季のJリーグを振り返ります。原さん、まずは順位のおさらいを。
原直子さん)J1のアビスパ福岡は勝ち点50で12位。来シーズンもJ1で戦います。サガン鳥栖は勝ち点35で最下位に終わりました。ジュビロ磐田、コンサドーレ札幌とともに来シーズンはJ2で戦います。
J3で戦ったギラヴァンツ北九州は勝ち点56で7位に終わりました。
◆ギラヴァンツ北九州
近藤)まずギラヴァンツ北九州ですが、惜しくもJ2昇格プレーオフ進出を逃しました。
早川)8~9月は昇格プレーオフ圏内の6位以上をキープ。一時4位まで上がったがあと一歩及ばなかった。でも去年の最下位からは大躍進。来シーズンにつながる戦いができたと思います。
原)来シーズンJ3からJ2には優勝した大宮アルディージャ、2位のFC今治、昇格プレーオフを制したカターレ富山が昇格します。
早川) カターレのホームタウン富山県は正月に起きた能登半島地震の被災地です。被災者を勇気づける11年ぶりのJ2復帰になりました。
◆サガン鳥栖と藤田直之選手
近藤アナ)次はサガン鳥栖。残念な結果となってしまいました。
早川)佐賀県は今年「国スポ」が開かれ、スポーツへの関心が高まった年でしたが、初昇格以来13年間守ってきたJ1を離れます。最終節は「駅スタ(駅前不動産スタジアム)」で現地観戦しましたが、ジュビロ磐田に3-0と快勝!強いサガン鳥栖をみせてくれました。
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近藤アナ)サガンは降格が決まって以降、あまり負けてないですよね。
早川) 最後の4試合は3勝1敗の好成績。木谷公亮監督(当時)には、Jリーグから11・12月の月間優秀監督賞が贈られています。チームは「1年でのJ1復帰」を目指すが、クラブは約1億6千万円の債務超過を抱えていてクラブのこれからにも注目が集まります。
近藤)試合後には福岡大学サッカー部出身の藤田直之選手の引退セレモニーがあったそうですね。
早川)3人の選手の引退セレモニーが行われました。トリの藤田選手のセレモニーでは、ご子息2人がお父さんに書いた手紙を読んだが、長男が「お父さんは憧れの選手でした」と読んだところで言葉につまった…。近くにいた鳥栖のサポーターも私も涙がこらえられませんでした。
◆ファジアーノ岡山が初のJ1
近藤)逆に来季のJ1にはJ2で優勝した清水エスパルス、2位の横浜FC、昇格プレーオフを勝ち上がったファジアーノ岡山が昇格します。ファジアーノは初めてのJ1ですか?
早川)クラブ創設18年目にして初のJ1昇格。プレーオフ決勝を観戦すべくチケットを取ろうと試みましたが取れませんでした。ファジアーノは、ここ数年はJ1昇格プレーオフ進出圏内の常連になっていたが悲願達成です。
岡山市は博多から新幹線に乗ればのぞみで1時間40分。スタジアムは岡山駅で新幹線を降りると歩いて20分。博多駅から2時間で着席できるくらい行きやすい。駅からの距離感は福岡空港駅からベスト電器スタジアムと同じくらいの感じです。
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◆高知県に初のJリーグクラブ誕生
近藤)ファジアーノ岡山のJ1昇格。FC今治がJ2に昇格と今季は中四国のクラブに明るい話題が多いですね。
早川)はい。今季はJ3とJFL(4部リーグ相当)の入れ替え戦でも下位の高知ユナイテッドSCが上位のYSCC横浜に勝ってJ3昇格を決め、高知県に初めてJリーグのクラブが誕生します。J1ではサンフレッチェ広島が2位になるなど今季は中四国勢が健闘しました。
◆J3第36節 ガイナーレ鳥取-FC今治
近藤)早川さんが今季観戦した中で最も印象に残ったゲームも中四国のクラブの試合?
早川)はい。11月10日(日)に鳥取市のAxisバードスタジアムで行われたJ3第36節。ガイナーレ鳥取-FC今治。アウェイの今治が勝てばJ2への昇格が決まる試合です。ガイナーレもこの時点では昇格プレーオフ出場の可能性が残っていました。
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近藤)結果は?
早川)FC今治が5-0で快勝しJ2昇格を決めました。FC今治の強さとともに、ゴール裏を埋めた四国の今治から山陰の鳥取まで瀬戸内海と中国山地を超えてかけつけた今治サポーターが発する熱量に驚きました。
タイトル写真はその一場面ですが、私は今治サポーターが陣取るゴール裏のスタンドから今治を応援しながら観戦しました。スタンドには試合開始から最後まで絶え間なくチャントを送り観戦席をリードする集団がいる一方、
最近ファンになったばかりのような若者やご夫婦が、自分なりのスタイルでサッカーを楽しみながら応援。「ここぞ」という場面ではスタンドが一体になる。その熱量はこれまでJ2やJ3では体験したことがない迫力でした。
◆岡田武史オーナーと今治市
母体となったクラブ創設からは半世紀近い時が経ちましたが、10年前に元日本代表監督の岡田武史さんがオーナーになってからのFC今治の市民への浸透や愛され方は驚異の水準にあると言わざるをえません。
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近藤)岡田武史さんは今治で何をやろうとされているのですか?
早川)FC今治の運営会社「今治・夢スポーツ」の企業理念は「次世代のため、物の豊かさより心の豊かさを大切にする社会創りに貢献する」で、サッカーやスポーツという言葉が登場しません。トップチームをJ1で優勝争いするレベルにすると共に、サッカーの枠を超えた人材育成=教育を通して今治という地域を活性化させようとしている。
原直子)そこが早川さんの取材テーマ「地方移住」と重なるんですね?
早川)重なります。愛媛県今治市は高齢化が進んでいることなどから、人口は減り続けていますが、東京や大阪等からの移住者が3年間で3倍になり、2023年は1180人が移住していて「移住者が増えている街」です。
岡田さんたちの取り組みを知って、大手都銀をやめて給料が1/4になるのに「今治・夢スポーツ」に転職した若者がいるそうでFC今治は明らかに「移住者増」に貢献しています(引用元を探しています)。
◆今治サポーターが聞いた「おめでとう」
それから、これは試合後、私が鳥取駅から岡山駅まで移動した特急「スーパーいなば」に乗り合わせた今治から応援に来られていたご家族からきいた話です。ご家族は鳥取駅までのシャトルバスにたまたま乗り合わせたガイナーレ鳥取のサポーターから「おめでとうございます」と声をかけられたそう。近藤)あら、うれしいですねぇ。
早川)近藤君、ホームで0-5で大敗し目前で胴上げされたクラブのサポーたーにそんな声かけられます?
近藤)いやー ふつうの感情ではなかなか…
早川)その今治サポーターのご家族と私も初対面でしたが「鳥取の皆さんは優しいですよ」と嬉しそうに話されていました。岡田武史さんが今治に根づかせようとしている「心の豊かさ」は、今治だけでなく鳥取の人たちにも育まれていました。
私が接したようなエピソードはJリーグがあるどこの街にも散らばっていると思います。思いやりや優しさが地域と地域をつないでいます。私はプロスポーツクラブが地域に存在する意義を改めて認識しましたし、ガイナーレ鳥取とそのサポーターの皆さんも応援したくなりました。
近藤)ここまで早川さんのニュースふかぼりでした。
◆移住先に「スタジアム」はあるか
地方移住を成功させるには「何のために移住するのか」という「目的」が
何より重要です。
ただ、移住先の文化やエンターテインメントはどうか、その舞台となる施設があるかも大切な判断材料だと思います。
「推し」がライブをやってくれるライブハウス、クラシックにも対応できるコンサートホール、シネマコンプレックス、こだわりの常設展や意欲的な企画展を持続している美術館や博物館などと同様、地域をひとつにさせる力があるスポーツのスタジアムやアリーナも重要だと思います。
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◆福岡市はスポーツ・文化施設がそろう
福岡市には地方都市がにあって欲しい「文化・スポーツ施設」が。既にそろっていて、現在建設中の施設もあります。それは福岡市の大きなアドバンテージで、私が福岡県に移住を勧める大きな理由のひとつですが、どの地方都市もそうあって欲しいものです。少なくとも40を超す地方のJリーグクラブのホームタウンはそのポテンシャルがあり、伸びていく力を秘めていると思います。
それではまた。
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