【感想】NHK 歴史探偵「天下の名香 蘭奢待」を視聴しました
2023年11月22日(水)22:00~22:45、歴史探偵「天下の名香 蘭奢待」を視聴しました。
<始まる前に>
蘭奢待は国立博物館の展示会に見に行ったことがあります。
香りは嗅げませんでしたけど。
今日は大変興味がありますね。
<NHKのあらすじ>
天下の名香といわれる蘭奢待(らんじゃたい)。
織田信長など数多の天下人が憧れた奈良・正倉院の宝だ。なぜ権力者を魅了したのか?
その香りとは?
謎多き香木の正体に迫る!
■天下の名香 蘭奢待
●スタジオで
東大寺の正倉院には奈良時代からの宝物9千点が収められています。
蘭奢待は香木です、今日はレプリカがスタジオに登場です。
漢字「蘭奢待」の中にあるお寺の名前が隠されていますが何でしょう?
佐藤所長「東大寺!」
元々東大寺と呼ばれていて、難しい名前にして東大寺を隠したと言われることがあります。
なぜ正倉院イチ名高い宝といわれたのか?
■”最高峰の香木”に迫る
国宝・正倉院 正倉 真ん中の「中倉」に長年保管されていました。
・中村力也さん(正倉院事務所)
天皇陛下のお許しがないと公開できないのですが、たまたま調査で出ているので撮影が許可されました。
●調査中の撮影室に
本物の蘭奢待は黄熟香です。
156cm、重さ11.6kg
表面の黒い部分は樹脂が溜まっている部分です。
表面を覆っているのは樹脂で熱を加えると揮発して良い香りを発します。
蘭奢待が重視されたのは、この樹脂がとても貴重なものだったからでした。
沈香といいラオス・ベトナムからもたらされたとわかっています。
黒い樹脂は偶然できるもので、確率は数百本に一本、ほとんど手にできない奇跡の産物です。
●付箋の謎
切り取られた箇所に付箋が、織田信長、足利義政の名前があります。
足利義政は8代将軍、応仁の乱を逃れ京都東山に銀閣寺を建てました。
蘭奢待の香道に深く関わる人物です。
■足利義政と香文化
●志野流(名古屋市)
・蜂谷宗苾さん(志野流家元)
志野宗信に始まり、550年近く香りの歴史を守り続けてきました。
「聞香」香りを嗅ぐことを香道では聞くと表現します。
まずは「伽羅」と呼ばれる香木、少し甘みがあります。
次は「羅国」という香木、苦味というか何か隠れています。
香道は香りを五味で表現します。
六国五味という教え
六国とは、伽羅、羅国、真那賀、真南蛮、寸門陀羅、佐曽羅
五味とは、甘い、苦い、辛い、酸っぱい、塩辛い
義政が命じたとされるのが香木の調査でした。
香木リストとされる『六十一種名香』の中でも最高峰なものが蘭奢待でした。
そこには五味のすべてが備わっていると書かれています。
江戸時代には、これを歌にして覚えました。
「匂ひうへなき蘭奢待」
●スタジオで
佐藤所長「見ることが出来ないとなると憧れとして広がっていくのは当然ですね」
濱崎加奈子さん「蘭奢待を切り取った翌月に銀閣寺を建てる計画をします」
「義政が切ったことが蘭奢待に箔をつけました」
佐藤所長には香の遊び方を体験していただきます。
■月見香を体験
遊戯性のある香道です。
・高山眞弓さん(志野流)
月を香りを聞き、3つの香りが違うかを聞き分けます。
月月月→十五夜
客客客→雨夜
ではスタート、基準となる月の香り、続けて3つの香りを嗅いでもらいます。
佐藤所長「客客月です」
正解は客月月→十六夜です
歴史の中で果たした重要な役割とは?
■権力者が求めた香り
『麒麟がくる』で、染谷将太さん演じる織田信長が蘭奢待を切り取るシーンです。
天下人を歩み始めたときでした。
なぜ織田信長は蘭奢待を切り取ったのでしょうか?
●東大寺
・北村雅昭さん(郷土史家)
「信長が蘭奢待を切った場所を調べれば見えてきます」
東大寺から西へ1km、切り取った場所の多聞城でした。
小学校の屋上に上ると、東大寺の大仏殿、左には正倉院の屋根が見えます。
畿内の制圧を進めていた信長にとって、大和は重要な地域でした。
しかし、従わない武士も多く不安定な状態でした。
・金子拓さん(東京大学)
「朝廷の許可が必要、新たに朝廷・天皇との関係が見えてくる。信長が朝廷を支えていくんだということで蘭奢待は重要な役割を果たしました」
その後、徳川家康は、大の香木好きで蘭奢待を手にいれたときはこの上ない悦びを示したと。
幕府を開いた年に正倉院の大規模な修復工事を命じました。
蘭奢待を収めるためだけに作られた「唐櫃」
唐櫃を作ったのは五代将軍・綱吉で元禄時代に寄進したものです。
家斉の時代には、箱に鍵が付けられました。
・中村さん
「天下人が権力の象徴として大事にしていきました」
●三井寺(滋賀県)
蘭奢待の断片が残されています。
ほんの少しだけ、明治時代の初期のものです。
明治政府の官僚、町田久成、三井寺の住職となった人物です。
明治天皇に命じられ、切り取ったのです。
氏族が反乱を起こすなど政情が不安定で、行幸で民衆の心をつかもうとしていました。
天皇家とゆかりの深い奈良への行幸は重要でした。
自らの手で裂き、炊いたと言われます。
●スタジオで
佐藤所長「あの織田信長がという驚きました」
蘭奢待の役割はまだあります。
織田信長は、二切れ切り取り、もう一つは天皇家に献上、正親町天皇→毛利輝元→家康に渡っています。
濱崎加奈子さん「宮廷には匂い袋を作って贈り物にするという文化がありました」
「切り分けられるということで、茶器などと一線を画すもので、中でも蘭奢待は特別でした」
佐藤所長「天皇と同じものをもっているということができるんですね」
■一体どんな香り?
●正倉院事務所
果たして香りはするのでしょうか?
気になるのは焚いた時の香りです。
『正倉院紀要 第22号(2000年)』
全浅香、黄熟香の科学調査という論文です。
科学的に微量分析を行いました。
・本多貴之さん
クロモン類という化合物に注目すると伽羅に属するものと絞り込めます。
本多さん「同じ伽羅でも個性があるので、どういう香りか印象を加えるので難しい」
●香木店へ
・畑正高さん(香木店松栄堂)
『古香微説』天明3年(1783年)には、「此五味出るを一返として九度まで・・・」
五味が順番に出るそれが九度返されると記されています。
「あんにん」杏仁豆腐の甘い香りがするとあります。
●香料メーカーへ
・菅原俊二さん
「奇気」が杏仁の香りだと書いてあります。
「初音」という香木に着目、蘭奢待に近い香りの再現に挑戦します。
機械の白い部分ににおいが溜まります
香りの成分が分解され、その数は数百種類あります。
検出成分を組み合わせ奇気に近いものを探します。
何点か杏仁ぽい香りのものがありました。
アニスアルデヒド、アセトアニソール、クマリンという3つの成分で揮発性が高いものです。
「初めのききあんにんなり」という文献の記述どおりです。
●蘭奢待体験者に聞く
愛知県名古屋市の蜂谷さんです。
志野流
2022年5月増上寺で蘭奢待の一部を炊き献上しました。
蜂谷さん「重厚感、威圧感がすごかったです」
「切り取った3人義政、信長、明治店と同じ香りを味わっている。80歳くらいになったら言葉が出てくるかもしれません」
●スタジオで
佐藤所長「言葉にできないものに、宝物のような価値がある」
「宝物は秘すこと隠すことに意味ををもつ、香りという見えないものに対する価値の日本文化の特質」
濱崎加奈子さん「蘭奢待は頂点にたつもの」
ーーーおわりーーー
次回は「白村江の戦い」11月29日(水)放送です。
■感想
蘭奢待の名前の由来がわかって面白かったです。
東大寺という漢字が隠されていたとは驚きです。
昔の人が、こういう暗号のような表現をしていたことにも驚きました。
『日本書紀』、『万葉集』や『古事記』にもありそうですね。
そして、三人の切り取った人の名前が付箋で記されているのも面白い。
これは展示会で拝見したので印象に残っています。
信長はなんとなくやりそうなのでその通りの印象です。
足利義政もなんとなく文化にこだわりを持つのでやりそう。
そして意外なのが明治天皇。
当時は権力の復権という意味では、上記2人と同じ様な人物だったということなのかなあと。
ちょっと明治天皇を見る目が変わりました。武将と変わらんじゃんと。