雑草詩句短歌
壮絶なる炎暑の中で
アスファルトに囲まれた廃屋の廃棄された畑のみがゆったりと呼吸している
選んで植えられたネギや葉鶏頭と風の運んだ雑草たちが仲良く頭を風の中で揺すっている
菊科の野草の葉は緑色の雪の結晶のように
私の心臓に涼しい流体を送り込み血流を湖面のように輝かせる燈明な幻をもたらす
真上に広がる椰子の葉が微風にかさかさと音たて
何ものかの意識から肉体の飢えと銃創と熱病の疼きが薄らぎ
彼は唐突に故郷にいる
家族は田んぼで稲刈りの最中で誰も彼に気づかない
しかし私には彼の過酷な運命と時代がわかる
太平洋の時空を超えて臨死の飢餓の兵と
炎暑の中に立ち尽くす私を結ぶ野草が
一つの同調する運命の協奏を始める合図
死の中にいる者が生者を救い
生にある者が死者を再起させる
新たなる生へと
(画像は"魂の樹"、ヤコブ・ベーメ著作集、ウィリアム・ロー作。平凡社、イメージの博物誌より。)
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