葡萄は摘むのではない、"狩る"のだ。|ワイン醸造体験⑤
昨日までに、4回に続いてワイン醸造体験を書いてきました。
今日は、ぶどう狩りについて書いてワイン体験は終わろうと思います。
シャトーの朝は、早い。(ワイナリーを持つ生産者のことをシャトーと呼ぶことを今日知ったのでついつい使う)
平日は朝5時に集合して、まだ日が登っていない暗いなかぶどう狩りが始まる。
たまたま日本の祝日があったので、その祝日にぼくもぶどう狩りに参加することにした。
「ぶどう狩りしてみる?」「もちろんしたいです!」
と会話をしたものの、
「本当に?ものすごい過酷だよ。私たちはもう10年近くしていないかな」とConde夫妻が言うので躊躇したものの、思い出作りにと体験を試みた。
結果的には、腰が死んだ。
もちろん、ずっと立ちっぱなしというのもそうだが、葡萄を狩るための姿勢が一定であるので、それを9時間近く続けてヘトヘトになった。
そして、当日の朝5時にまだ暗い中集合場所にいくと、クレイジーな野盗のような彼らは、車の荷台に乗って出発を待ち構えていた。違反なのかどうかはわからない。私道だから良いのか?(笑)
写真に映るブドウ狩りメンバーは、日雇いだ。
日雇いの給料と成果報酬のミックス版。しかし、1ケース葡萄を溜めても50円しかもらえない。恐らく1時間に多くて4ケースで、9時間働くと36ケース。1日で1,800円ほどしか成果報酬はもらえない。なかなかに渋いと思うが、職がない彼らにとっては、ありがたいことなのだろう。
それでも、彼らはやはり職があるだけGoodなのだ。持ち前の明るで常にしゃべりながら楽しく働いていた。
特に彼らにとって、初めて一緒に働く日本人。
新種の生き物を見つけたかのように、ぼくに話しかけてくる。でも本当に申し訳ないのだが、鈍りすぎていて何を言ってるかわからない。(笑)
でも仲良くなれたので、いい写真が撮れた。彼らは、写真に取られることが大好きだ。
マスカットや巨峰などは、棚栽培と呼ばれる葡萄の房を上から吊るす形で育てる。しかしワイン用の葡萄は、品種や地域と気候によって異なるが、ここでは、トレリス栽培(棚仕立て栽培)という方法で葡萄を栽培している。
これにより葡萄の蔓(つる)が支柱やワイヤーに沿って水平に広がるように育つ。利点としては、通気性によりカビや病気のリスクが防止されたり、均等に日光が当たるようになる。つまり、いい葡萄が育つ。
続いて、実際のブドウ狩りの様子だ。
ぼくは、素人なので、ハサミを持ち枝を切りながら栽培していく。ぼくの場合は、葡萄斬りという感覚。
しかしプロである彼らは、素手で強盗が家を物色するかのように、クマが山で餌を探すかのように、ゴソゴソゴソゴソと葡萄をまさに狩っていく。
そのスピード感の違いに、1人で大笑いしてしまった。そのため、ぼくが1時間で1ケースくらいのペースに関わらず彼らは、それを1/4のスピードで終わらせてしまう。(笑)
コツなどない。手のゴツさを武器に、次々に枝を捻り上げて切っていく。凄まじかった。
こうして、これらを9時間以上続ける。
しかもそれを平日毎日3ヶ月以上かけて、葡萄を収穫していく。
雨の日は、行われないので、その次の日は1日で倍の収穫を行う必要がある。そのため、ぼくの本業である醸造組は、その分1日の稼働時間が長くなる。その日に取った葡萄はその日のうちに破砕をしなくてはいけないからだ。
この日は、気温が30度くらいあった。カラッとした暑さなので、日射病などはまだ大丈夫だったが、水道が少なく水の補給は大変であった。
また、葡萄の汁により手はベタつく。枝で手が切れそうになる。なかなか過酷な仕事を体験した。
でもおかげで、また少しワインが好きになったのだ。
農業は過酷だ。それは当然葡萄狩りだけではなく、あらゆる食材が我々の口に届くまでには多くの過酷を超えている。
このような体験は、食事のありがたさを見に沁みて感じる。
当たり前のことだが、飲食には深い感謝をしよう。
このようにして、2週間に渡り、ぼくは葡萄の収穫と破砕、発酵、澱引きの手伝いをさせていただいた。
澱引きとは、発酵後にタンクや樽の底に溜まった酵母などの澱と上澄みのワインを分ける作業である。
こんな貴重な体験をさせていただいた、Conde夫妻には本当に感謝でいっぱいだ。
一緒に働いた仲間もぼくの質問に丁寧に答えてくれたり、作業方法を教えてくれたり楽しい時間を過ごさせてくれて感謝している。
だからぼくは、このStark Condeのワインがもっともっと日本で認知をとり売れる手伝いができたらいいなと思う。
日本でも買えるのでぜひ買ってみてください。