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ネーミングの仕事。

ネーミングの仕事が好きだ。

ネーミング発想をしないで、コピー発想で解決するようにしている。

「おけいはん」という言葉の発明はもう20年以上前のこと。あれもコピー発想。広告になるということを前提にしたネーミングだ。
じぶん史上いちばん好きなネーミングは菊太屋さんの「カレーのライス」。カレー用のお米ということでカレーとお米(ライス)の間に「の」を入れただけで、カレーライスを想起させることができた。省力化した抜けの良さは見たひとに“やられた感”を抱かせる。だから、成功したときは痛快だ。このネーミングはADC、TCCなど主要年鑑すべてに掲載され年鑑グランドスラムを達成した。
「NU」のようなファッション感度の高いネーミングでは、コンセプトはあっても見るひとに感じさせないように考える。同じ施設名でも「EKIMO」はコンセプチャルだ。これは、いちから開発に参加したのではなく、ネーミングが決まらず混乱の極みだったプロジェクトに呼ばれたので、まず、ど真ん中を考えようというところから話を整理する必要があった。だから、ど真ん中でおし進めた。迷ったら、ど真ん中に帰れ。これは、発想の原則だ。

菊太屋さんの「須藤さんと木村さん」はブレンド米のネーミングだ。ブレンド米は通常、あまり品質の良くないお米を混ぜ合わせて味や価格のバランスを整える手法。そのブレンド米のイメージを変えようと、生産者を特定したブランド米同士を混ぜ合わせるコンセプトだったので、ふたりの生産者の名前をだすことで、ブレンド米であること、トレサビリティーのハッキリした信頼できるお米のブレンドであることを標榜した。このネーミングでTCC年鑑に載ったのは、嬉しかった。
敬老の日に贈るお米は一升という容量と一生を掛けてある。ユーモラスでこころが通じるネーミングになった。

WALLやMOBIは建築のコンセプトや企業テーマから発想している。大きな組織の中では往々にして、そういう決め方になる。ネーミングとして面白いものではないないかもしれないが佐古田英一さん、藤本将さんという凄腕ADのおかげで良いものになった。
米屋のおにぎり屋は本業のお米屋さんのイメージと、ブランド拡張の概念から生まれたおにぎり屋さんのイメージが相乗効果を起こすように考えた。
バレンタインとホワイトデーのお米は、一目惚れという品種のお米を使うという商品開発から関わった。そこまで川上に立たないと面白いネーミングにならない場合もある。そのときには、そういう提案をすることも大切になる。

商品の名前は比較的短命だけど、施設の名前はいつまでも残る。それも、コピーライター冥利であると思う。
純粋にマスメディアのキャッチフレーズを書くことが減っている世の中だけど、ネーミングはコピーライターにとって、まだまだチャレンジしがいのある分野ではないかなあ。

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