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2022年3月の選歌

流行歌(はやりうた)街に溢れて誰も彼も口ずさみたり昭和の頃は
 藤代敏江

薹(とう)立ちの畑の水菜は花付けし黄色い小花に元気を貰う 
 伊藤美枝子

チラチラと流し目送る姫ちゃんは散歩に行こうと我を誘いて 
 注:姫ちゃんはトイブードル
伊藤美枝子

悲しみの極限にあるも涙出ずふと目に留まる痕跡に泣く    
山下ふみ子

寝床より義母起こしたらしばらくは消えぬ指跡梅花のごとし 
六甲もこ

なめらかな肌横たえる流木につと魅せられし朝歩きの浜
 楽満眞美

流鏑馬(やぶさめ)の陣笠ゆれる秋祭り蹄の音にどよめく馬場よ
 関本なつ

気まぐれに流れ揺蕩(たゆた)う春の海はるか彼方の戦も知らずに 
 六甲もこ

タンポポの土手に遊びし友がきは風旅(ふうろ)の果てのいづこにぞ咲く
筒井みさ子

幾千の蜂の羽ばたき聞こえくる ブラシの木の花満開の朝
 筒井みさ子

のんびりと流れに逆らいマガモたち水中の足は全速力らし    
森田郁代

退院せし娘と交わす何気ない会話が胸の奥まで沁みる      
鵜川登旨

菜心(チョイサム)の黄色い花摘み茶碗蒸しを飾れば春のお膳となりぬ
 岡まなみ


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