我が家には、「ジフテリア事件」が伝わっている
私が子どもの頃の話です。
椎葉村の親戚の子どもが、ジフテリアに罹って亡くなりました。
今では予防接種により、発症することもなくなった病気ですが、昔は恐ろしい病気でした。
喉に偽膜という膜ができて、呼吸ができなくなるのが特徴です。
亡くなってから少し後に、今度は私に「フガフガ」と呼吸困難のような症状が発生しました。
母は、ジフテリアかもしれないと、あわてて椎葉村立国保病院に連れて行きました。
冷静な医師は、私の鼻の穴にピンセットを突っ込んで、右と左の鼻の穴から、ピーナッツをひとつずつ取り出しました。
ピーナッツで塞がっていた鼻の穴が開通したことにより、私のフガフガ症状は劇的に改善しました。
母は、医師から怒られました。
これが、我が椎葉家に伝わる「ジフテリア事件」です。
笑い話ですが、実は、かなり危ないところでした。
ピーナッツが鼻の穴から気道に落ちて塞ぐと、無気肺となります。
レントゲンにはピーナッツは映りません。
原因不明の無気肺で、肺炎を起こして死ぬ可能性もありました。
3歳以下の子どもにピーナッツを与えるのは危ないのです。
子どもは、何でも鼻の穴に突っ込んでしまう習性があります。
しかも、何をやったか説明することができません。
ですから、子どもにピーナッツをやってはいけません。
ジフテリアは、我が国では予防接種によりほとんど患者発生はありませんが、公衆衛生システムが崩壊するとまた流行します。
1990年にソ連が崩壊して、ロシアになった頃に、旧ソ連の誇る公衆衛生システムが崩壊しました。
ロシアではジフテリアが大流行し、外務省が渡航中止の勧告を出したことがあります。
公衆衛生システムは、眼には見えませんが、社会を支えるインフラです。
定点となっている医療機関で、毎週感染症の患者の発生を把握するサーベイランスは大事です。
地道にコツコツと続けることが、公衆衛生の基本です。
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