犬と泳げば、レプトスピラに罹る
ダニが媒介する重症高熱血小板減少症候群(SFTS)やツツガムシ病と鑑別すべき疾患に、レプトスピラ症があります。
レプトスピラは、1915(大正4)年に九州大学の稲田龍吉教授が発見し、培養に成功しました。
福岡市にある九州大学医学部の構内には、稲田教授の名前に由来する「稲田通り」があります。
ノーベル賞の候補にもなり、日本医師会の二代目の会長にもなりました。
墓は、東京の青山墓地にあります。
レプトスピラは動物の腎臓に潜んでおり、長期にわたって尿とともに排泄されます。
水や土壌に数ヶ月間生き残ることが可能で、人には、粘膜や傷口、普通の皮膚からも浸入してきます。
レプトスピラを保菌しているねずみ、犬、牛、馬、豚などどの尿で汚染された河川や泥などに素足で浸ると、皮膚から感染することになります。
ちなみに、犬はレプトスピラを保菌する期間が長い動物です。数年から生涯にわたって保菌することがあります。
感染した犬と一緒にプールなどで泳ぐと感染することがあります。公共のプールで、ペットと泳ぐのを禁止しているのは合理性があります。
昔、沖縄県の八重山諸島でシーカヤックのインストラクターや、カヌーガイド、トレッキングをする観光客などで集団発生したことがあります。
イリオモテヤマネコやマングースが保菌しています。
健康的なアウトドア派にとっては、天敵です。
ビーバーも保菌しています。
黄疸、高熱、腎不全が特徴で、「感染性黄疸」と初めて報告をしたドイツ人医師アドルフ・ワイルの名前からつけられました。
目の充血が特徴となっており、早期診断の重要な指標になります。
発症してから5日以内に血清治療を行わないと、死亡することがあります。
私が小学生の頃は、学研の「科学」と「学習」という月刊誌がありました。
付録には月球儀があったり、アリの巣の観察ができる容器があったりして、毎月楽しみにしておりました。
「学習」という雑誌に、わるい病という病気の血清を山奥の病院に、ヘリコプターやパトカーをリレーして届けて患者を助けた話があったのを覚えております。
「わるい病」ではなく、「ワイル病」だと判りました。
予後の悪い病気であることは当たっています。
レプトスピラは、台風などの洪水の後に、大規模な発生を見ることがあります。
畳堤のある延岡市は水害が多い地域なので、注意すべき疾患です。
水害の後に水に浸かった地域の中で、目が充血した人が出てきたら、レプトスピラ発生を疑う必要があります。
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