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「ハムラビ法典」には、医療過誤による罰則や治療にかかる医療費の規定がある

世界の四大文明で一番古いのは、メソポタミア文明です。

チグリス川とユーフラテス川に囲まれた地域で、現代のイラク、トルコ、シリア、イランあたりになります。

肥沃な土地で収穫された小麦で、多くの人口を支え、現在に続く10進法、12時間法などが採用されました。

古代メソポタミアでは、病気は罪の結果、神から与えられた罰であり、神の怒りにより悪魔が取り憑いておこるもの、と考えられていました。

病気の治療は、「アシフ」と言われる神官と、
「アス」と呼ばれる医師によるチームで行われていました。

アシフは占星術をもとに神の怒りの原因を尋ね、神をなだめて、悪魔よけの呪文を唱える儀式を行いました。

そして、身分の低いアスが実際の治療を行いました。

薬は、動物の糞など悪臭があって胸がむかつくようなものを配合した汚物薬をビールと一緒に一気飲みさせました。

これは、アルコール・ハラスメントでは?
現代人の感覚からは、罰ゲームかアルハラの極みでしょう。

アスは、戦争の際には軍医となって戦場に赴きました。

兵士の傷を洗浄し、包帯を巻いたり、湿布をしてマッサージを施しました。

ルーブル美術館のハムラビ法典の石柱

メソポタミア文明で有名なのは、ハムラビ王がつくった法典です。

なんと「ハムラビ法典」には、医師の医療過誤による罰則や、治療にかかる医療費の規定があります。

現在でいえば、刑法と診療報酬です。

医師の手術で患者が亡くなった場合は、執刀した医師の片腕を切ることとされていました。

医療費は外科の治療だけが規定されており、
内科の料金は決まっていませんでした。 

内科は自由診療でした。
汚物薬は「時価」だったのでしょうか。

パリにあるルーブル美術館には、くさび形文字で記されたハムラビ法典の石柱が展示されています。 

衛生の女神ハイジアの胸像もあります。

レオナルド・ダビンチのモナリザもいいですが、こうした公衆衛生的な作品を観察するのもパリの魅力です。

なにより、写真が自由に撮れます。

しかし、美術館職員のストライキで休館になることもしばしばです。

開いていたら超ラッキーと思った方がいいかも。

4大文明の中で、エジプト文明が医学は一番進んでおりました。

古代エジプト王朝で最も栄えた中王国時代には、既に医学校があり、医師は眼、歯、頭部、腹部などの専門で分かれていました。

また、軍には軍医がおりました。

エジプトの医師は高度な知識と技術を持っており、他国では重宝がられたそうです。

古代エジプトには、「紙」の語源となった「パピルス」に様々な記録が残されております。

米国ニューヨーク医学会が所蔵するスミス・パピルスには、戦傷者の傷の診断法や治療法が書かれています。

これは、世界最古の軍陣医学書と言われています。

書いたのは、イムホテプという実在の医師です。

イムホテプは、古代エジプト王朝のジェセル王のナンバー2まで出世した政治家でもあります。

さらに、ピラミッドの設計もした建築家でもありました。

イムホテプは、死んだ後に神格化されて「医学の神」となりました。

この名声は古代ギリシャに伝わり、
ギリシャ神話の医学の神アスクレピオスに変化したといわれています。

おそるべしイムホテプ!

イムホテプは、
アラビアやヨーロッパでは常識です。

エジプトにはイムホテプ博物館があり、
パリのルーブル美術館には座像があるそうです。

しまった見逃した!

日本では、私を含めて医療従事者にもほとんど知られておりません。しくしく。

しかし、大丈夫です!

我が国では、エジプトの医学神「イム」が蘇って現代日本の高校で大活躍するというファンタジー漫画「Im  イム」があります。

漫画家森下真さんは、
よくぞ日本の医学界も知らないイムホテプを
主人公にしたものだと感心しました。

これにOKを出した
担当者と編集長もすごいと思います。

こうして考えると、
日本の漫画文化は、
世界最強ではないかと思います。

どんな世界の歴史でもネタにして、
漫画にできるのが強みです。

青池保子さんの「エロイカより愛をこめて」は、東西冷戦時代の
NATOのクラウス少佐
ソ連KGB工作員の小熊のミーシャ
NATO情報部のZ(ツェット)
などの魅力的なキャラが登場して、
国際的インテリジェンス活動が
描かれておりました。

しかも少女漫画です。

さいとう・たかをさんの「ゴルゴ13」には、
猿を運んでいた巨大フェリーの中で
感染症が蔓延して、
感染して回復した人の血液を採取して、
車のタイヤを使った遠心分離機で血清を得て、
それを投与して患者を治療する、
というストーリーがありました。

ダイヤモンド・プリンセス号での
新型コロナウイルス感染症の集団感染が 世界初の巨大客船での事例だったそうですが、
漫画はそれを先取りしていました。

漫画を読めば、
まだ見ぬ未来も、過去も、
全て学べます。


いつの日か、
保健所を舞台にした
公衆衛生の漫画が誕生することを
願っております。

埜納タオさんの「保健師がきた」が
出版されたので、
年内にも「保健所が来た」が来るかも?

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