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災害救助法は、日本の軍隊を廃止させたGHQが作ったドロナワ法である

台風や線状降水帯による大雨は、災害を起こします。
日向市から椎葉村に向かう国道327号線では、3年前の台風14号での崖崩れのあった場所で、現在も復旧工事が継続して行われています。

迂回路は狭い道なので、対向車とすれ違うたびにヒヤヒヤします。

歴史的に我が国では、災害が起こると、その反省から新しく法律や制度ができます。

災害救助法という法律があります。

この法律は、戦後間もない1947(昭和22)年にできています。
実は、そのきっかけがあったのです。

戦前は、軍と警察が大規模災害が発生したときの救助活動を行っておりました。

日本に進駐したGHQの指令により、昭和20年11月30日で、陸軍と海軍は組織全体が廃止され、日本は軍隊のない国となりました。

こうした全国的な救助組織のない日本に、自然は容赦しませんでした。

1946(昭和21)年12月21日に、南海地震が発生しました。
マグニチュード8.0の大きな地震で、死者・行方不明者が1443人も出ました。

地震と津波により、四国、瀬戸内海沿岸を含む14の府県に大きな被害が出ました。

慌てたのはGHQです。
ワシントンからの指令で軍隊を解体しましたが、大規模災害時の救助のことは全く考えておりませんでした。

そのために米軍が保管していた食料や医療、医薬品を、救助のために放出しました。

この地震では、著しい人命が失われ、特に津波によって物的損害が広範囲に発生しました。

GHQは、この苦い経験から、全国規模の災害救助組織を設立する必要性を認識するようになったのです。

GHQは、さっそく日本政府に対して、次のようなことを実現させるための立法措置を命じました。

・全国的な災害に対処するためには、常時活動し得る組織の設置が必要であること。

・災害が発生したときに、国のあらゆる地域に設置されている倉庫の食料、衣料、医薬品などの貯蔵品を利用することができること。

・全国的災害救助を財政的に支えるためにあらかじめその必要経費が政府によって予算化されていること。


こうした急ごしらえで、災害救助法が誕生しました。ドロナワのようなものです。

基本的には、
①災害救助は地方自治体が行う
②その基準は国が示す
③民間組織は基本的に参加しない

というシンプルな建て付けになっています。

災害救助法は、社会保障の一環と整理され、厚生省が所管しました。

国民の生存権を保障するために、平時の生活保護法、有事の災害救助法という役割分担があったのです。

救助の種類は、国が示しております。
①避難所・応急仮設住宅
②食品・飲料水
③被服・寝具などの生活必需品
④医療・助産
⑤被災者の救出
⑥住宅の応急修理
⑦生業の資金など
⑧学用品
⑨埋葬
⑩その他

一方、災害対策基本法は、愛知県を中心に1959(昭和34)年9月26日から27日にかけて甚大な被害が生じた伊勢湾台風の経験や反省から1961(昭和36)年に成立した法律です。

伊勢湾台風では、5098人の死者・行方不明者が出ました。

災害対策基本法は、災害対策全般を体系化し、行政における防災計画を推進するための法律です。

国土ならびに国民の生命・身体・財産を災害から保護するために制定されました。

つまり、災害に対処するためには、ドロナワの災害救助法だけでは通用しないことを学習したのです。

災害の段階に応じ、予防、応急、復旧・復興での対応や、災害の類型に応じて、地震・津波災害、火山災害、地滑り・崖崩れ・土石流災害、豪雪災害、原子力災害などに応じた対処を体系的に規定しています。

さらに、1973(昭和48)年には、災害により死亡した者の遺族に対して災害弔慰金を支給する災害弔慰金法、1998(平成10)年には、自然災害によりその生活基盤に著しい被害を受けた者に対し、都道府県が相互扶助の観点から拠出した基金を活用して被災者生活再建支援金を支給する被災者生活再建支援法が、議員立法で成立します。

こうした遺族や被災者に現金を支給する制度は、政府提案ではなく、議員立法でつくられているところが興味深いところです。

看護師の国家試験の問題に次のような問題がありました。

災害対策基本法に定められている内容で正しいのはどれか。
1 物資の備蓄
2 避難所の設置
3 災害障害見舞金の支給
4 救護班による医療の提供


災害の後に法律ができたという歴史を知っていれば簡単ですが、丸暗記派にとってみれば難問です。

今日のハベレオを読んでいれば解けます。
看護師を目指す皆さま、ハベレオ通信は役に立ちます。

ただ、蛾の画像が気持ち悪くて見る気がしないと、複数の女性から感想をいただきました。

「蛾の画像を変更されたい」とご意見もありましたが、法案の国会提出前の各省協議のように、「応じられない」と回答しました。

理由は、プロフィールをご覧いただければ幸いです。

さて正解は、1です。
2と4は、救助の話なので、ドロナワの災害救助法です。
3は、被害者に現金を配る話なので、災害弔慰金法です。
1の物資の備蓄や供給は、まさに災害対策の基本中の基本。文字通りの災害対策基本法です。

大阪市立大学の菅野拓先生の「災害対応ガバナンス」は、大変勉強になります。

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