見出し画像

クロアキナは、トイレの神様である

石やレンガで造られたアーチ式の天井を持つ排水用の暗渠をラテン語で「クロアカ」と呼びます。
水や浄化の女神「クロアキナ」に由来します。

土木技術に秀でた古代ローマ人は、世界で初めて厳密に下水道と呼ばれるものを建設しました。
ローマの北東部からテレベ川に通じるクロアカ・マキシマが有名です。
「大きな排水路」という意味です。

このクロアカ・マキシマは、ローマ帝国の初期の大規模下水道システムも一つですが、驚くべきことに現在も稼働しています。

テレベ川が流れるローマは湿地帯が多く、こうした湿地にある余分な水を集めて、地下の排水溝からテレベ川に流し込む必要がありました。

紀元前六〇〇年頃に建設されました。
古代ローマ時代の下水道は、陶管や石とモルタルなどで造られ、公共の建物にもつながっていました。

共同住宅には便所がありませんでしたが、その代わりに公共広場に共同のトイレがあり、これらは下水道につながっていました。

トイレは水洗式で、大理石の石版に穴が開いており、その下に水が流れていました。
糞尿は、流水に乗ってテレベ川に排出されました。

トイレは、間仕切りも男女の別もなかったようで、談笑しながらトイレを使っていたそうです。

下水道は、ローマ帝国の市民生活には欠かすことのできない施設でした。
しかし、ローマ帝国の滅亡とともに、このような思想も消え去ってしまいます。

古代ローマでは、下水は無処理でテレベ川に流していましたが、現代は終末処理施設で下水処理をして放流しています。

クロアキナは今では下水道の女神となっています。

これで思い出すのは、植村花菜さんの名曲「トイレの神様」です。
紅白にも出場しました。

10分くらいの長い曲で、初めてきいたときは、思わず泣いてしまいました。

トイレにはそれはそれはキレイな女神さまがいるんやでという歌詞は、大好きだったおばあちゃんのセリフです。

しかし困ったことに、公衆衛生人は、女神クロアキナを想ってつくったのだと推測し、公衆衛生の歌だと勝手に認定してしまうものなのです。

ナカモリアキナは、別のジャンルですから。
残念!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?