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新生児聴覚スクリーニング検査には1ー3-6ルールがある

宮崎県立延岡しろやま支援学校に行きました。
聴覚障がい乳幼児の早期教育に関する公開研修会に参加しました。

聴覚障がいのある幼児や小学生、中学生の授業を視察するとともに、耳栓をつけた難聴疑似体験の実習や補聴器の装用の体験をしました。
大変勉強になりました。

もともと延岡西高校の校舎で、平成二四年に延岡わかあゆ支援学校、延岡ととろ支援学校、延岡たいよう支援学校の三つの支援学校が統合されて、延岡しろやま支援学校となっています。

今回視察したのは、聴力障がい教育部門で通称「ととろ部門」と通称される部門です。幼稚部、小学部、中学部が設置されています。
西都市、児湯郡以北をカバーしています。

新生児聴覚スクリーニング検査が導入されてから、耳の聞こえの状況を早期に発見することができるようになりました。

1一3―6ルールが確立されており、生後一か月までに聴覚のスクリーニングを終え、生後三か月までに精密聴覚検査の実施、六か月までに療育等の支援を開始するという目標が掲げられています。

障がいの状態に応じて、個別の療育が行われているのを見るのは初めてのことでした。

私は、厚生省の母子保健課にいたときに、新生児聴覚検査の事業の最初の予算要求を担当しました。

新生児の脳波を調べることにより耳の聞こえが判る簡易な検査法が実用化され、これで新生児の聴覚のスクリーニングをしようということになったのです。

日本ではほとんどが医療機関で分娩が行われ、一週間ほど母親と新生児が入院しているので、入院中にやってもらおうと企画しました。

打ち合わせは、産婦人科と小児科の医師が中心で、耳鼻科は聴覚検査や難聴児の療育を専門に実施している先生にお願いしました。

大蔵省の主査からは、モデル事業ならいいということでわりと簡単に予算を付けてくれました。
来年度からの実施に備え、実施要領やマニュアルなどを策定しました。

ところがある日、日本耳鼻咽喉科学会から母子保健課に連絡があったのです。
「本日のメディファックス(医療関係の情報紙)に、来年度から新生児聴覚スクリーニングのモデル事業を実施する、とあるが、我々は聞いていない。説明に来い」とのことでした。

日本医師会には事前に説明しており、了解をもらっていたのですが、耳鼻科学会はノーマークでした。

そこで、課長と担当補佐である私の二人で、学会の事務局に行きました。
そこには学会の長老らしき人物が七,八人ほど集まっておりました。

「我々に何の相談もなく、こういった事業を始めるとは……」
ネチネチと苦情を言い始めたのです。

しばらく黙って聞いていた課長が、ぶち切れました。
「学会として新生児聴覚スクリーニングをやめろといいたいのですか?」

課長の目は、アニメ「巨人の星」の星飛雄馬のように燃えています。
長老たちは、課長の剣幕にたじろぎました。

「い、いや、やめろとは言っていない。た、ただ詳しく説明してほしいのだ……」
「君が説明したまえ!」
課長は私に指示した後は、一言も口をききませんでした。

母子保健課長のただならぬ怒りは学会の長老に伝わったようで、詰問するような質問は皆無となり、学会として協力するのでもっと早く相談してほしかった、という感じになりました。

帰りの車の中で、課長は「そもそも新生児の聴覚スクリーニング検査は、耳鼻科学会から母子保健課に事業をやってくれと相談があってしかるべき案件だ」と言っておりました。
「耳の専門家の団体に、なぜ、こっちから説明しなければならんのか!」

いつも優しい課長が怒ったのは、このときだけでした。
新生児聴覚スクリーニング検査を、今では宮崎県内では、ほとんど全ての新生児が受けていることは感無量です。

歴史の一コマとして、ハベレオ通信に記録しておきます。

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