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経済の悪化は、公衆衛生の危機をもたらす
我が国は島国なので、基本的に新たな感染症は外国から入ってきます。
江戸幕府が開国したら、コレラが真っ先に入ってきました。
国内で大流行して、江戸にまで到着して多くの人が亡くなったことから、攘夷の嵐が吹き荒れ、最終的に幕府が倒れました。
感染症を制御できないと、世の東西を問わず政権は維持できなくなります。
森山良子さんの「また会う日まで」の歌詞にある「空を飛ぶ鳥のように自由に生きる」のはいいことです。
しかし、「鳥」を公衆衛生学的に捕らえると、大陸間弾道ミサイルのようなもの。
渡り鳥は、各種のウイルスを搭載して、我が国にやって来ます。
一昨年度は、大陸からの渡り鳥が運んできた鳥インフルエンザのために日本国中が大変な目にあいました。
日本全国でニワトリの殺処分が行われ、卵の値段が高騰しました。日本史上初です。
一種のバイオテロ攻撃のようなものです。
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そんな中で、宮崎県の鳥インフルエンザ発生時の即応体制は日本一です。
まるで米国の海兵隊(マリン)のようです。
ちなみに元海兵隊員は、乞食から大統領までいるそうですが、全員がライフルを撃てます。
宮崎県では、県職員全員が鳥インフルエンザの殺処分ができます。
これは危機管理体制の一つとして、他県や農水省にも参考になると思います。
いつまでも自衛隊に頼るわけにはいきません。
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米国では二〇〇二年にウエストナイル熱(西ナイル熱)が初登場しました。
このウイルスを運ぶのは、蚊です。
蚊に刺された後に、頭痛、発熱、筋肉痛を起こし、脳卒中のような重篤な脳症を起こします。
高齢者の突然の脱力は、よく脳卒中に間違えらます。
名前のとおりアフリカの病気でしたが、全米に蔓延し、今ではアジア大陸にも広がっています。
ウエストナイル熱ウイルスは、鳥が感染源となっています。
鳥は夜、木の枝にとまって眠ります。
そのときに蚊によって吸血されます。
鳥には羽毛がありますが、足が弱点です。
足には羽毛がなくむきだしなので、蚊はここを狙ってきます。
ウエストナイル熱ウイルスを保有する鳥が日本に渡ってきたら、その鳥を吸血した蚊にウイルスが移行し、人を吸うことによって感染します。
とりわけ、シベリアから飛んでくる渡り鳥が危ないと言われています。
カラスは、ウエストナイル熱ウイルスに弱く、感染すると死にます。
もし朝の散歩中に、カラスが多数死んでいたら、宇宙人の襲撃ではなく、ウエストナイル熱ウイルス日本初上陸のサインです。
保健所に「延岡市島浦ノカラス全滅ス」という連絡が入れば、すぐさま県庁に通報するとともに、医療機関の脳卒中の発生情報の収集を行う必要があります。
米国のカリフォルニア州の高級住宅が建つベーカーズフィールドで、突然カラスが多数死んで、その後、人に脳卒中のような病気が多数発生しました。
州の衛生当局が調査をした結果、ウエストナイル熱だと判明しました。
なぜこの地で、蚊が急に増えたのか理由がわかりませんでした。
その後の調査で、高級住宅街のプールが蚊の繁殖場所だと判明しました。
米国経済が急激に悪化し、差し押さえられた多数の邸宅では、プールが放置され、蚊の絶好の繁殖場所になっていたのです。
盲点でした。
経済の悪化は、蚊の繁殖をもたします。
日本の豪邸にプールはほぼないと断言できますが、錦鯉が泳いでいた池はあるので、要注意です。
公衆衛生は、危機管理の視点を持ち、経済の動向にも注目していく必要があります。
油断大敵。「我関セズ」は大変危険です。
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