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手塚治虫さんと石ノ森章太郎さんが十分な休養をとっていたら、あと二〇年間新作が出た

第一次世界大戦では、飛行機や戦車や毒ガスなどの新兵器が登場し、人類史上空前の壮絶な戦いを経験しました。

欧州の交戦国では、一年に1~2週間の休暇を、将校や兵士全員に与える必要を認めて、制度化しました。
導入した理由は、多数の戦争神経症の患者が発生したからです。

戦争神経症の症状は、不眠やうつ、幻聴などで、全身のけいれんや歩行が困難になるなど激しい症状が現れる人もいました。
戦争神経症への対策が、軍陣医学の課題となって、休暇制度が設けられたのです。

欧州における第一次世界大戦をほとんど経験しなかった日本軍は、戦線で長期間戦闘に従事した兵員に休暇を与える制度を、昭和二〇年の終戦まで採用することはありませんでした。

むしろ、日本では「海の男だ 艦隊勤務 月月火水木金金」と休み無く働くことが美徳とされました。
しかし、さすがに休暇を与えないと疲弊し、体力や気力はしだいに消耗していきます。

一九三九年に、フィンランドにソ連軍が侵攻した戦争が、冬戦争です。
圧倒的な戦力を有するソ連軍に対して、フィンランド軍は徹底的な防衛作戦を行い、地形や冬の寒さを利用してソ連に勝てなくても負けない戦いを行いました。

フィンランドは、最終的に領土は割譲され、敗戦国となりましたが、独立を守り抜きました。
戦後にソ連軍の国内への進駐はありませんでした。

この冬戦争を描いた映画「アンノウン・ソルジャー」では、徴兵されて最前線でソ連軍と戦う兵士が、休暇をもらっていったん家に帰って妻と過ごすシーンが出てきます。

フィンランドを救ったスオミ短機関銃

戦争中に休暇を与えるとは、日本では考えられないな、と思って見た記憶があります。
今でも我が国では、休まないこと、眠らないことを自慢する風潮があります。

霞ヶ関の官僚がそうですし、漫画家の世界もそうです。
「あしたのジョー」などを描いたちばてつやさんの漫画「ひめもすのたり日記」に、面白いシーンが出てきます。

手塚治虫さんと石ノ森章太郎さんという二人の神が、仕事をたくさん受けて寝る間もないという話をしていました。
そこに、妖怪の水木しげるさんが割り込みました。
「それはいかん! しっかりと寝るべきだ」

夜の厚生労働省。不夜城です。

手塚治虫さんも石ノ森章太郎さんも、圧倒的な仕事量をこなしましたが、六〇歳で亡くなっています。
今の自分が六一歳なので、本当に若くして亡くなったのだと思います。

一方の、水木しげるさんは、八三歳まで生きています。
働き過ぎは身体に毒です。

もし、漫画の神のお二人が十分な休養をとっていたら、あと二〇年は生きて、多くの作品が生み出されたのではないかと思うと、本当に残念です。
おそらく、お二人の頭の中には山のようなアイデアがぎっしりと詰まっていたと思います。

多くの編集者は、漫画家を酷使して、漫画家の寿命を奪ってきた面があるのではないでしょうか。
漫画家に休暇を与え、健康管理を行うことは、日本のソフトパワーを守るためにも大事です。

漫画家は、まさに日本の宝。
漫画家のSDGsを考えるべきときです。

宮崎に移住をさせて、ゆったりまったりと漫画を描いてもらう「宮崎てげてげ漫画家いいっちゃが作戦」を考えたらいいかも。
日向ぼけでアイデアが浮かばんごとなったらすいません。

東村アキコさんの「まるさんかくしかく」は、宮崎が舞台の宮崎ネタだけの世界です。

数々のヒット作をとばして巨匠となった東村アキコさんだからこそ、「次は宮崎を描きたい」と言っても、編集長は止められなかったのかも。

その勢いで、「宮崎てげてげでいいっちゃが作戦」を言い出せば、実現するかもしれません。
私も、東京タラレバ神社にお参りして、応援いたしまするー!

たぶん、今はないと思います

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