当事他者探Qその9

 「当事者」を「体験専門家」、「当事他者」を「経験好事者」としました。ここでまた再び「体験と経験」について考えてみます。

 前回は、「体験」と「経験」とを区別し、「体験」はある出来事に直面することとして、「経験」は体験した出来事を他者と分かちあえることとしました。さらにこの両者は真っ直ぐには繋がっておらず、「実験」をその間に挟むのではないかと思います。つまり「体験」は「実験」を経て「経験」になる。ではそれは何の「実験」なのかといえば、その一つとして「追体験」とも呼べるようなものと考えています。

 「追体験」と言ったとき、それは「未体験」の当事他者が、当事者の「体験」を「追体験」することと考えてしまいそうになります。しかし、すでにそのときには当事者にとって「体験」は、「この体験」ではなく、「あの体験」、「その体験」といった形で隔てられた「既体験」になっているように思います。「未体験」の当事他者だけでなく、「既体験」の当事者も「追体験」の過程に参加します。

 そこで重要なのは、「追体験」は成功を保証されていない「実験」だということです。むしろ失敗の方が多いかもしれません。あーでもない、こーでもないといった失敗の連続かもしれません。むしろ失敗も含めた試行錯誤の過程を、当事者と当事他者とは、やはり「partage(分有)」しているでしょう。

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