月刊はつかのnote/2020年5月号
ごあいさつ
平野にある私の家のあたりまで、ようやく田の水が降りてきました。これくらいの時期になると、高校生の頃、毎日のように電車で山の方へと通学していた時を思い出します。
山から降りてくる水を徐々に上の方の地域から田に引き入れていくのです。電車から見た朝焼けに反射する田んぼを眺めながら、今どのくらいまで水が降りてきているのか確かめることは、ひそかな楽しみの一つでした。あまり楽しいことばかりとはいかなかった高校生活ですが、こうして探してみると、小さくとも宝物のような記憶のかけらが見つかるから不思議なものです。
学校のある山間の地域から、徐々に濃尾平野へと水が降りて、最後には私の家の周辺も、蛙の合唱に包まれます。
六月の異名に、水張月というものがあるそうです。田に水を張る、生活に根差した呼び方を愛おしく思います。
田に映る街の景色は、すこし揺れて、いつもより優しい表情をしている気がします。
そんな、水張月です。
〇
総観
さて、先月は今なお荒野のままなので、おそらく今後も荒野のままでしょうが、今月はちゃんとまとめます。
5月の主な出来事は、ありがたいことにcakesコンテストに応募した作品が最終選考へ進んだことです。とても嬉しく、同時に書き発信するということの怖さのようなものを感じました。
基本的に、部屋の隅でうじうじとキノコ栽培をしているような人間です。望外に読んでいただけ喜びとともに、読む方が多くなることでどう受け取られるのか、不安になる気持ちもありました。
今は少し落ち着いて、でもやっぱりそわそわしながら発表の日を待っています。
ゆるく毎日、を目標に始めたnoteですが、最近は少し休憩時間をおいてもいいかもしれないなという気持ちでいます。
これは、私の場合なのですが、少しでも『書きたい』の気持ちの中に『書かなきゃ』があると、続かないのかもしれないと、最近気が付きました。と言うのは嘘で、実は最初からわかっていたのです。『これをやりなさい』がなにより苦手な子供でしたから。
少し、箇条書きや写真の投稿が増えるかもしれません。実は5月の中頃から徐々に増やしています。
そんな感じで、6月は5月に引き続き、いつも以上の『ゆるく』で行こうと思います。お暇なときにでも、訪ねていただければ幸いです。
五月のおすすめ「はつかのnote」
〇波紋の行方。(雑記)
ひとりで、部屋の隅で言葉を捏ねていたのだ。怖いなあ。怖い。書くことって、こんなに怖いことなんだな。ずっと一人のためだけの言葉だったから、知らなかったや。
でも、内側に向けてだけだったら、もらえなかった言葉がいっぱいあるんだよ。本当に、嬉しかったんだよ。誰かが、読んでくれて。見つけてくれて。
嬉しいな、怖いな。
〇トリミングされた人生の破片を集めて、それでも愛してよ 。
トリミングされた人生の、その切り捨てらた端っこを集めて。
それでも愛してほしいと、誰もが叫んでいる。
〇初夏を吸い込む。
ICカードにお金をチャージして、電車に乗り込む。
街までは、およそ三十分。病院の予約時間までは余裕があり、いつもなら快速が止まる一番ホームへ向かう所を、一瞬の逡巡の末、普通列車の止まる五番ホームへと向かう。
少しだけ長く、電車の中で過ごしたかった。
〇完璧なあとがき(どこかへの手紙)
言葉が世界を定義するなら、美しいという感覚も、美しい言葉に支えられているのでしょう。眩いような表現を紡いで、今に残してくれたミヒャエル・エンデ、そして訳者。言葉に携わる人がいて、自分の言葉があるのだなと、表紙を撫でながらそんなことを思いました。
〇心臓にナイフを忍ばせている。
高校生の頃、青春映画のCMが流れるたびに、耳を塞いで大声を上げたくなった。カロリーメイトのCMで一生懸命頑張る受験生を見ては、どこかこことは違う場所へ行きたくなった。汗を流して部活動に精を出す清涼飲料水のCMですら、私を指さす有象無象の列に加わった。
終わりに代えて、五月まとめ報告書。
五月はこんな感じでした。
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